二相式液冷 - ハイエンドGPUの未来
2024年11月5日
2024年現在、ハイエンドGPU熱管理市場では単相式D2C(ダイレクト・ツー・チップ)冷却が主流となっていますが、TDP(熱設計電力)増加に伴い、二相式D2C冷却の需要が高まり、2026~2027年には大量に出回ることになると予想されています。IDTechExでは、チップメーカー、冷却板サプライヤーからシステムインテグレーターまで、データセンターのバリューチェーンにいる多数のプレーヤーにインタビューしてきました。正確なタイムラインについては意見が分かれているものの、TDP1500W前後から単相式D2Cでは苦しくなってくるという点や、2000Wが単相式D2Cの限界となる可能性があるという点では見解が一致しています。GPUのTDPにおけるIDTechExの過去の動向分析を踏まえると、二相式D2Cは間もなく本格的な導入が始まります。IDTechExでは、NVIDIAなどインタビューした大手チップサプライヤーの過去の動向とロードマップに基づき、GPUのTDPにおける今後の動向も予測しています。IDTechExの調査レポート「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」ではより詳細な情報を提供しています。

データセンター向けGPUのTDP:実績データと2025年価値予測。出典: IDTechEx調査レポート「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」
D2C冷却の課題:単相式と二相式
IDTechExは、二相式液冷を採用するにあたって生じる技術・商業両面における優位性と障壁について予測しています。単相式D2C(ダイレクト・ツー・チップ)冷却は比較的シンプルで広く採用されているソリューションであり、冷却水(通常は水とグリコールの混合液)を使用することで、相変化を起こさずに対流によってチップの熱を吸収します。しかし、IT機器に対するリスクとなる冷却水漏れの可能性や、大流量によって生じる機械的ストレスなど、重大な技術的課題に直面しています。TDPが1000Wのチップを冷却するには、1分当たり約1.5Lという大流量が必要となります。このような大流量の場合、エロージョン・コロージョンが発生する可能性もあり、大径のクイックディスコネクトも必要になるため、総コストが一気に跳ね上がります。
データセンターでは往々にして配管の引き回しが複雑で、スペースに余裕のない場合は特に、メンテナンス作業の負担が増します。加えて、高額な設備投資(CAPEX)が必要となる(例えば、QD、サーバー内の液体供給マニホールド、ホースなどを含む冷却板システムの場合は200~400ドル)ことから、長期的にはエネルギー効率向上によりコスト低減につながるものの、特に古いデータセンターを改修する場合などは、冷却板による冷却方式は先行投資のかかる選択肢となってしまいます。
その一方で二相式D2C冷却では、冷却水の相変化を利用することで効率を高めるため、放熱性向上やワット当たりの冷却コスト低減が図れます。また、単相式システムよりも小流量で動作するため、機械的ストレスも軽減されます。例えば、1000Wのチップ冷却に要する二相式冷却板の流量は、TDPの場合は0.3L/分程度です。しかしながら、二相式システムは独自の課題を抱えています。フッ素系液体の使用により、漏れ出た液体がエアロゾル化して環境汚染につながる可能性があり、安全性や地球温暖化係数(GWP)を懸念する声が上がっています。また、これらのシステムは、冷却板設置に高額なCAPEXが必要なうえ、冷却水のリサイクルや廃棄処分にも別途費用がかかるため、導入費用が高額になります。効率は優れているものの、環境面や商業面での障害から、二相式冷却は煩雑な選択肢であると言えます。ただし、設計段階で深く考慮することで、いくつかの課題は軽減が図れます。また、IDTechExの調査レポート「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」では、単相式・二相式冷却技術のCAPEXについても部品1点当たりのコストとともに数値化して紹介しています。

データセンターにおける直接チップ冷却の技術的・商業的課題。出典: IDTechEx調査レポート「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」
要するに、単相式冷却はシンプルで定着しているものの、メンテナンス面や技術面でのリスクが高く、もう一方の二相式冷却は効率に優れてはいるものの環境に対する懸念があり、初期コストも高いため、利点があるとはいえ、単相式に比べて容易に導入できるソリューションではない、ということです。しかしながら、TDPの今後の動向を踏まえつつ、特に液浸冷却と比較して既存データセンターへの設置が容易であることを考慮すると、二相式冷却板には将来性があるとIDTechExは考えています。IDTechExの調査レポート「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」では、単相式・二相式液浸冷却の技術的・商業的障壁についても、一次調査と二次調査を基にした各種冷却技術のロードマップやタイムラインとともに掲載しています。
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