熱伝導材料における放熱フィラーの利点と欠点
2025年11月13日
熱伝導材料(TIM)は、放熱フィラーとマトリックス材料からできています。放熱フィラーは熱伝導性の高い物質であり、マトリックス材料は機械的特性を高めるために使用されることが一般的です。放熱フィラーはTIMのコストの大部分を占めるため、TIMサプライヤーが独自に選定することが多くなっています。放熱フィラーの材料、形状、充填率の選択は、TIMの熱特性だけでなく、コスト、絶縁耐力、圧縮性、粘度といった他のパラメータにも大きく影響する可能性があります。IDTechExの最新調査レポート「熱伝導材料 2026-2036年:技術、市場、予測」では、各種熱伝導性フィラー、長所と短所、今後の市場動向を包括的に分析しています。
どのフィラーを選択するかはTIMの要件次第であり、最終的には対象用途によって決まります。例えばEVバッテリーパックでは、セル・ツー・パック設計によりTIMの熱伝導率を下げる(約2W/mK))流れに移行しています。これまでは、フィラーとしてアルミナ(Al2O3)が使用されてきましたが、より熱伝導率の低いものへの移行に伴い、水酸化アルミニウム(ATH)の人気が高まるとみられています。
また、ATHは分解時に水分を発生させることで難燃性を発揮し、さらなる防火効果をもたらし、一般的に低コストになります。球状アルミナをATHに置き換えれば、フィラーのコストを20%以上(推定値、フィラーのグレード、品質、量、顧客との関係などの要因によって変動)低下させることが可能です。Al2O3からAl(OH)3に切り替えた場合、TIMの密度を約30%(充填率によって変動)低下させる可能性があるとIDTechExは推定しています。放熱フィラーの詳しいコスト分析については、「熱伝導材料 2026-2036年:技術、市場、予測」で取り上げています。
一方、先進的TIMを必要とする用途(データセンター、ADAS、パワーエレクトロニクスなど)では、Al2O3や、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)をはじめとする高性能材料への需要が高い水準で推移することになるとIDTechExは予測しています。ただし、性能を向上させるにはコストの増加が避けられません。例えば、窒化ホウ素(BN)フィラーが球状アルミナフィラーの約10倍の価格になる場合もあります。そのため、非常に高い熱伝導率を必要とする場合を除き、BNフィラーは熱伝導率とコストのバランスを取るための二次フィラーとして使用されることが一般的です。

アルミナ、ATH、AlNフィラーの比較。出典:「熱伝導材料 2026-2036年:技術、市場、予測」 IDTechEx
フィラーの粒径と形態もTIMの性能に大きく影響します。フィラーの粒径と形態はフィラー間の相互作用領域に影響するため、TIMの熱伝導率が大きく左右される可能性があります。高分子複合材料(ポリマーコンポジット)に含まれるフィラーの粒径が大きくなると、比表面積(SSA)が減り、粒径が小さい場合と比べて熱伝導率が向上します。しかし、フィラーの粒径を大きくすると欠陥密度が高くなる可能性があり、熱伝達の妨げや熱伝導率の低下につながる恐れがあります。
大粒径フィラーの場合、SSAが小さいことでフィラーとポリマーの界面が減少するため、界面熱抵抗(ITR)が低下し、熱伝導率が向上します。一方、小粒径フィラーについては、界面積が大きいことでITRが増大するため、ポリマーコンポジットにはあまり適していません。加えて、融点など他の物理的特性も極めて重要です。金属ナノ粒子は融点が低く、ポリマー硬化中に焼結と熱伝導ネットワークの形成を促進します。そのため、一般的には熱伝導率と性能の向上を目的としてさまざまな粒径のフィラーを混合します。
フィラーの形状と加工の複雑さもコストに影響します。例えば球状アルミナの価格は、数量などの要因次第で、粉砕アルミナフィラーよりも20%以上高くなる場合があります。フィラー粒子間に空洞や空間があると、熱境界抵抗(TBR)が生じて熱伝導経路が遮断する恐れがあります。小粒径フィラーを取り入れることで、このような空間を埋め、より大きな粒子間にさらなる経路を形成することができるため、TBR/ITRが低下し、熱伝導性が向上します。
まとめると、放熱フィラーの選定には多くの考慮事項が伴います。IDTechExの最新調査レポート「熱伝導材料 2026-2036年:技術、市場、予測」では、コスト、熱伝導率、密度、絶縁耐力などの要素を定量化することで、一般的な放熱フィラーの長所と短所を包括的に分析しています。また、形態、業界、用途別にTIMを包括的にレビューし、長所と短所を徹底的に評価するとともに、市場動向やビジネス機会についてもご覧いただけます。
さらに詳しくは、IDTechExのレポート「熱伝導材料 2026-2036年:技術、市場、予測」 でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの熱管理に関連するレポートは、こちらでご覧いただけます。
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