二酸化炭素回収・有効利用により低炭素コンクリートの生産が可能に
2021年9月13日

コンクリートは地球上で2番目に多く消費されている物質であり、その上を行く物質は飲料水しかありません。コンクリートに欠かせない原料であるセメントの生産だけでも、人間の活動による全世界の二酸化炭素(CO₂)排出量の7パーセントに寄与しています。世界の建築ストックの規模は2050年までに2倍になるため、セメント業界の脱炭素化への圧力は急速に高まっています。
コンクリートの物量の中でセメントが占める割合はごく一部ですが、コンクリートの炭素排出のほぼすべてがセメントによるものです。セメントの生産はエネルギーを大量に消費するだけでなく、その固有の化学反応である煆焼においてCO₂ガスが放出されます。電力関連の排出に取り組むため化石燃料の置き換えとエネルギー効率の向上に労力が費やされてきました。煆焼反応でのCO₂放出を防ぐのは手間がかかりますが、二酸化炭素回収・有効利用(CCU)のような革新的なソリューションにより、低炭素コンクリートや、カーボンネガティブなコンクリートさえも実現可能になります。IDTechExの調査レポート「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)2021-2040年」では、CCUの技術的・商業的側面やCCUでCO₂の排出を軽減する可能性を探っています。
セメント製造時の点源炭素回収
煆焼反応中に発生するCO₂は、点源で回収してから地下に安全に貯留するか(二酸化炭素貯留)、コンクリートの製造などの各種産業用途に利用(二酸化炭素有効利用)することが可能です。これらの二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術は、気候変動との戦いにおいて重要な役割を果たす可能性が高く、国連ではCCUSにより2050年までにCO2換算で年間15~63億トンを削減できると推計しています。CCUS技術は商業化されてはいますが世界の排出量に有意義な影響を与えるには、その規模を何百倍も拡大する必要があります。CO₂の貯留には規制の枠組みを超えたビジネスモデルがないため、CO₂の有効利用によりCCUの採算性が向上する可能性があります。しかしながら回収したCO₂を原料として広く活用するには、CO₂の市場や流通基盤をそれ相応に拡大する必要があります。
コンクリート製造における二酸化炭素の有効利用
現場で回収したCO₂をコンクリート製造の原料として使用することは、循環型の効果的な方法となる可能性があります。この原理を用いる有望な解決策が二酸化炭素硬化コンクリートです。CO₂硬化では回収したCO₂を注入することで反応を促進し、コンクリートを強化します。またそのCO₂は最終製品の中に封じ込められます。
モントリオールを拠点とするクリーンテック企業のCarbiCreteは、このCO₂硬化法を使用しカーボンネガティブのプレキャストコンクリートブロックを製造しています。このネガティブエミッションは、CO₂を利用するだけでなく産業廃棄物を原料や鉄鋼スラグとして使用することで実現しており、セメントが全く不要になっています。CarbonCureは約5%というもっと控えめな二酸化炭素排出量の削減を約束していますが、同社の技術の方が広く市場に浸透しておりプレキャストコンクリートと生コンクリートの両方で利用されています。同社はまた再生骨材(RCA)を強化したり、コンクリート洗浄水を処理して再利用できるようにしたりするために回収したCO₂を使用しています。
別のカナダのスタートアップ企業であるCarbon Upcycling Technologies(CUT)は、フライアッシュなどの産業廃棄物である粉末状の副産物にCO₂を混ぜ合わせることで、コンクリート用の添加剤を製造しています。CUTが生み出したCO₂増強フライアッシュは、CO₂を封じ込めると同時にセメントの原料としての需要を10%削減することでコンクリートの強度を高めながら、二酸化炭素排出量を最大25%削減することを約束しています。
これらの技術のうちのいくつかは事業コストや原料コストの削減を促進するものですが、回収したCO₂を調達する場合は最終製品の価格そのものが上がる可能性があります。適切なインセンティブ制度や大規模導入に伴うコスト削減があれば、この「グリーンプレミアム」を削減することができ、こうした低炭素コンクリートの代替品が軌道に乗る上で必要な優位性をもたらします。
成功への道
コンクリートメーカーは排出量削減に対する圧力の高まりに直面しているものの、削減による経済的メリットはいまだ不確かです。CCU技術から利益を得るには、コンクリートメーカーはその確立された製造法の根本的な変更を推し進める必要があります。それは多額の投資であったり、炭素回収事業者やCO₂有効利用ソリューションのライセンスを供与するイノベーターといった、今まで接点のなかった企業との提携であったりするのかもしれません。先を見据えた企業は利益と持続可能性の両方に注力するため、将来も継続できる事業を展開できると考えられます。
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)2021-2040年」でご確認ください。また、IDTechExグリーンテクノロジーポートフォリオもご参照ください。
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Top image: Concrete is the most used man-made product on Earth and its key component, cement, contributes to 7% of global CO₂ emissions. Source: Shutterstock