CCUS:2036年までに年間700メガトンのCO₂を回収へ

CCUS:2036年までに年間700メガトンのCO₂を回収へ
CCUS技術は、脱工業化を伴わない世界的な脱炭素化を実現
 
二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術は、煙道ガスや大気から二酸化炭素を取り除く技術です。回収されたCO2は、恒久的に貯留されるか、付加価値製品として収益を生み出す(CO2有効利用)ことが可能です。IDTechExは、CO2回収量は2036年までに世界全体で年間7億トン近くに達すると予測してきました。各国政府は、脱工業化を伴わない脱炭素化を実現するため、カーボンプライシング、税額控除、補助金を通じてCCUSを後押しする政策環境の整備を続けています。民間セクターでもCCUSへの取り組みが次々と広がっています。例えば、石油・ガス企業がCO2輸送・貯留サービスを事業として新たに始めたり、ハイパースケールデータセンターが直接空気回収(DAC)やBECCS(バイオマス発電と二酸化炭素回収・貯留を組み合わせた技術)から得られる炭素クレジットの市場を創出しています。
 
CCUSの傾向は地域ごとに異なるが、2036年までに大幅な成長が予測されている。出典:IDTechEx
 
IDTechExの新しい調査レポート「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)市場 2026-2036年:技術、市場予測、有力企業」によると、CCUS市場は2025年に入っても加速度的に成長を続けており、ノーザン・ライツの輸送・貯留やストラトスのDACなど、注目すべきFOAK(世界初)プロジェクトが開始しています。2025年現在、新たに建設される施設の処理能力を合わせると50メガトンに達するなど、数々のCCUSプロジェクトが拡大を続ける中、CCUSのビジネスモデルや経済的側面、回収関連の主要技術と先進技術について深く考察することがこれまで以上に重要になっています。
 
CCUSのビジネスモデル
 
一般的に、大規模CCUSプロジェクトを新たに稼働させるには、税額控除や政府の補助金が依然として必要です。重要な例として、アメリカの45Q税額控除(トランプ政権のOne Big Beautiful Billを受け、CO2 有効利用に対して最近増額された)や、イギリス政府が産業用CCUSクラスターに対する200億ポンドの拠出を発表したことなどが挙げられます。CCUSの長期継続を可能にするには、最終的にはコンプライアンス市場のメカニズム(炭素税や排出量取引制度など)が重要になると考えられています。2025年時点で世界のCO2 排出量の30%近くが何らかの形のカーボンプライシング対象となっており、2026年にEUでCBAM(炭素国境調整メカニズム)が適用開始されることで、炭素市場に新たな動きが見られるでしょう。
 
また、新たなパートチェーン型であるCCUSハブ&クラスター・ネットワークによってスケールメリットがもたらされ、CCUS開発のボトルネック解消に向かうと見られています。この新しいCCUSのビジネスモデルでは、CO2 輸送・貯留インフラを共有化することで、数あるCCUSプロジェクトの効率化が図れることになります。
 
点源炭素回収のイノベーション
 
点源炭素回収に用いられるアミン水溶液技術は成熟度が高く、この分野の大手プレーヤーは三菱重工、シェル、SLB Capturiなどです。アミン水溶液による回収コストを抑えるためのイノベーション技術は、非相溶性溶液や非水系溶液などがあり、BOP(バランスオブプラント)では、吸収塔・放散塔での物質移動改善技術の開発に進展が見られます。
 
炭素回収分野のスタートアップ企業は、アミン水溶液以外にも、溶融ホウ酸塩、促進輸送膜、溶融炭酸塩型燃料電池、吸着剤の一種であるMOF(金属有機構造体)、深冷分離法など、幅広い技術を追求しています。これらの技術は、エネルギー需要と炭素回収コストの低減を最終的な目的としています。
 
地域によって異なるCCUS開発
 
45Q税額控除による支援とCO2-EOR(石油増進回収)の確かな実績により、CCUS分野ではアメリカが世界をリードしています。ヨーロッパ、中国、カナダ、イギリスなどの地域も、CCUSを世界規模で加速度的に進化させる上で不可欠な役割を担っていくことでしょう。例えばEUでは、最近のネットゼロ産業法の施行によって、2030年までにEU全域での恒久的CO2貯留能力を年間5000万トン以上に整備することを掲げています。
 
包括的分析と市場予測
 
「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)市場 2026-2036年:技術、市場予測、有力企業」では、先進的なCCUS業界やカーボン市場に関する包括的な展望を提供し、今後10年間でCCUS業界を形作る技術的、経済的、規制的、環境的側面について詳細に分析しています。二酸化炭素回収・有効利用・貯留の各技術について評価し、各分野での最新の技術革新、主要企業、機会、課題について解説しています。また、CCUSの二酸化炭素回収能力(CO2 利用方法別、回収方法別(点源回収・直接空気回収)、産業セクター別、地域別)の今後10年間(~2036年)の詳細予測のほか、独自の分析やインタビューに基づく60社の企業概要を掲載し、350社以上の企業を取り上げています。
 
さらに詳しくは、「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)市場 2026-2036年:技術、市場予測、有力企業」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。 IDTechExの脱炭素化に関連するレポートは、こちら でご覧いただけます。

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