次世代SWIRセンサーによる人間の視覚の向上
2023年10月10日
何千年もの間、人は周囲の状況を判断するために視覚に頼り、今も頼っています。目に見えるものを評価し、それに基づいて先入観に基づいた仮説を立て、それを毎日実行しているのです。とはいえ、目は欺くことができるもので、砂糖の瓶が食卓の塩の瓶と見間違えることもあります。現実には、味覚も両者の大きな違いのひとつです。幸いなことに、日常生活をナビゲートするために、すべての感覚が存在しています。
視覚は、約380~700nm(青から赤までのさまざまな色合い)という非常に狭い範囲の波長に限定されます。これより波長が短くなると紫外域に近づき、超えると赤外域へと向かいます。人間は生来、目に見えるものを判断する傾向があります。しかし、電磁スペクトルは人間が視覚できる範囲よりもかなり広く、目には見えないようなものでも、別の周波数から見るとすぐに視認できるようになるのです。
IDTechExの最新調査レポート 『最先端イメージセンサー技術 2024-2034年: アプリケーション、市場』は、さまざまなイメージング技術と、電磁スペクトルにおけるさまざまな領域への視覚強化能力を取り上げています。
ヘルスケア、バイオメトリクス、自動運転、農業、化学センシング、食品検査など、これらの画像技術から恩恵を受ける分野がいくつかあります。IDTechExでは、この市場は今後10年間で大きく成長し、2034年には7億3900万米ドルに達すると予測しています。

Image sensing technologies market value prediction by IDTechEx. Source: IDTechEx
しかし、こうしたセンサーのコストは高止まりしており、これはどちらかといえば控え目な数字です。例えば、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)短波赤外(SWIR)センサーは、単価が約2万ドルします。このコストは時間とともに下がると予想されますが、家電分野での使用を考えると、コストを大幅に下げ、10~100ドルにすることが求められます。しかし、このような赤外線(IR)感度の拡張を低コストで実現できるQD-on-CMOS(CMOS上に量子ドットを実装)のような技術もあります。家電分野で導入された場合、市場価値は、前述の控え目な価値と比べて25倍になる可能性があります。
SWIRセンサーは、その名が示すように、中赤外領域近くまで近赤外領域(750~2000nm)の物体の視覚化を実現します。いくつかの業界はこの技術の恩恵を受けていますが、これらのセンサー、中でもInGaAsセンサーは並外れて高コスト(スケーラビリティを必要とする用途では特に)です。その中で、コストの低下によってSWIR技術の採用が急速に進むであろう2つの分野が自動運転と工業検査です。
その結果、シリコンやゲルマニウムの機能を拡張したアプローチや、OPD-on-CMOS(CMOS上に有機フォトダイオードを実装)やQD-on-CMOSといったハイブリッド型のアプローチをはじめとするInGaAsに代わる選択肢が注目を集めています。これらのアプローチはどれも波長感度が異なり、可能性を秘めてはいるものの、現在のInGaAs技術にはまだ及びません。InGaAs技術は成熟が進んでおり、SWIRの波長域で優れた性能を発揮しています。一方でQD-on-CMOSは、性能の面でも、さらに重要な点としてはコストの面(製造が安価など)でも、この技術を上回ることが期待されています。
自動運転から農業、工業製品検査まで、多くの業界が大きな期待を寄せ、技術の進展を待ち望んでいます。より手頃な価格のSWIRイメージングの使用は、これら技術の影響を加速させるのに役立ちます。自動運転や先進運転支援システム(ADAS)では、目に見えにくい条件下での対象物の認識に不可欠です。可視光を感知するカメラとは異なり、SWIRカメラは、霧、もや、粉塵、暗闇の状況下で非常に有効であり、さまざまな周囲状況において物体を認識するのに役立ちます。ADASシステムにおいては、車両の周囲をより高い画質で描写する複数の画像センサーが将来的に必要となります。よって、これらの装置を自動車メーカー(OEM)にとって費用対効果の高いものにするには、そのコストを大幅に下げる必要があります。
農業もこの技術の恩恵を徐々に享受しつつあるもう1つの業界であり、SWIRセンサーの成熟とコスト低下に伴い、さらなる進歩を遂げるでしょう。赤外線センサーを使用して細部を確認することで、作物が収穫に適した状態であるか、土壌が作物の栽培に適しているかを判断できます。
工業製品検査では、製品内の混入した物体や誤配置を検出することが可能です。工場におけるプラスチック選別機などにも利用できます。プラスチック材料はそれぞれ化学組成が異なり、スペクトル内の幅広い赤外波長に対する反応もさまざま(吸収や反射など)です。その反応を利用して、プラスチックを選別することが可能です。
とはいえ、前述のとおり、最も優勢なSWIR技術はInGaAsであり、多くの用途にとって非常に高コストです。性能は優れており、幅広い波長において感度が向上してきているものの、シリコンとのハイブリッド化による低い歩留まりと限られたピクセル解像度が、より大きな市場規模に到達する可能性を妨げています。
しかし、既存のシリコン読み出し集積回路(ROIC)と統合でき、幅広い赤外波長に対して高い感度を発揮するQD-on-CMOSの登場は、この技術がさらに多くの産業へと展開する道筋となる可能性があります。
先進イメージセンサー市場と自動運転の将来についての詳細は、IDTechExの調査レポート『最先端イメージセンサー技術 2024-2034年: アプリケーション、市場』および『自動運転車、ロボタクシーおよびセンサー 2024-2044年』で、ご確認ください。
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