先進的PFAS分解技術の機会を探る
2024年11月18日
特定のPFASが健康や環境に悪影響を及ぼす証拠が次々と報告されており、世界中の飲料水源にPFAS(ペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物)が含まれていることが懸念されています。また、PFASには残留性と生物蓄積性の特性があるので、時間が解決することを期待してPFAS問題を無視することはできません。このため、PFAS汚染問題への対応は、汚染河川水からPFASを除去する水処理技術を用いた積極的介入しかありません。IDTechExの調査レポート「PFAS処理 2025-2035年:技術、規制、有力企業、用途」では、PFAS汚染河川水の処理技術を幅広く取り上げています。

汚染水のPFAS処理技術分析。出典: IDTechEx
粒状活性炭(GAC)やイオン交換樹脂(IER)の吸着ろ過などの既存水処理技術の利用で、地下水や地表水からPFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)など多くの場合に規制されているPFASを効果的に除去することが可能です。これらの技術は環境中のPFAS除去には効果的ですが、回収したPFAS分解はできないため、回収したPFASの環境からの恒久的除去を保証するものではありません。多くの人が、除去されたPFASが環境中に逆戻りしてしまうPFAS除去の終わりのない悪循環発生を懸念しています。例えば、使用済みの吸着媒体(GAC、IERなど)を地中に埋めると、回収したPFASが地中に浸出し、一旦除去したPFASが環境中に逆戻りしてしまう恐れがあります。こうした理由から、回収したPFASの環境中への逆戻りを防止するPFAS分解技術という別カテゴリーPFAS処理技術のニーズが生まれています。
PFAS分解技術の現状
米国環境保護庁(EPA)は、PFAS分解を「PFASの分子構造である炭素-フッ素結合を完全に切断し、炭素とフッ素を二酸化炭素、フッ化水素、水に鉱物化すること」と定義しています。いずれのPFAS分解技術も、すべての炭素-フッ素結合を完全に切断することが必須です。そうしなければ、分解過程でより移動性の高い短鎖PFASが形成、放出される可能性があるからです。
現行のPFAS分解技術は焼却処理であり、塩素系溶剤、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ダイオキシンを含む廃棄物、臭素系難燃剤など、他の汚染物質や有害物質の分解にも利用されてきました。PFAS分解に用いられるようになったのは、他の汚染物質と比べると最近のことです。
しかし、米EPAなどの主要当局は、PFAS廃棄物処理戦略として焼却処理の全面的承認に消極的な姿勢を見せています。米EPAは、「PFAS廃棄処理暫定ガイダンス - 第2版(Interim Guidance on the Destruction and Disposal of PFAS - Version 2)」の中で、焼却処理におけるPFAS分解の不確実性、つまりその有効性と不完全燃焼生成物(PIC)の発生に関する研究とデータ不足を強調しています。焼却エネルギー集約的性質や有害排出物発生の可能性に対して懸念を表明している団体もあります。こうした懸念は、米国の国防総省(DOD) が省内において2022年にPFAS含有泡消火剤焼却の一時禁止を発令するきっかけとなりました。
先進的PFAS分解技術の状況
PFAS廃棄物処理の現行戦略への懸念により、現状を激変させる可能性のある新たなPFAS分解技術に機会が生まれてきており、大学や独立系スタートアップ企業で数多くの分解技術開発が進められています。以下に最先端の先進的PFAS分解技術を6つ紹介します。
- 電気化学的酸化(EO): EOでは、陽極と陰極から構成される電解槽を利用し、2種類の反応(直接陽極酸化、間接酸化)を通じて反応種(ヒドロキシルラジカル、電子など)を発生させます。これらの反応種により、PFASの炭素-フッ素結合が切断されます。
- 超臨界水酸化(SCWO): PFAS汚染水を反応炉に送り込み、その中で水の臨界点(374°C、22MPa)を超えるまで廃液を加熱・圧縮します。この超臨界状態になると、酸素が溶解しやすくなり、酸化反応によってPFAS内の炭素-フッ素結合が切断されます。
- アルカリ水熱処理(HALT): HALTはSCWOに似ていますが、触媒(水酸化ナトリウムなど)を使用することで反応を起こすため、SCWOよりも低温(例:亜臨界相で約350°C)でプロセスを実行できます。
- 光化学プロセス: この分野にはいくつもの分類方法があります。いずれの光化学的分解プロセスでも、特定の化合物を活性化してPFAS内の炭素-フッ素結合を切断するのに紫外線を使用します。光触媒(非再生試薬ではなく)を利用する場合、そのプロセスは光触媒分解プロセス(または光触媒反応)に分類できます。この分野は、PFASの分解方法に応じて、促進酸化処理(AOP)と促進還元処理(ARP)という2つのカテゴリーに大きく分類できます。
- プラズマ処理: プラズマ処理では、熱プラズマまたは非熱プラズマを利用してPFAS内の炭素-フッ素結合を切断します。
- 超音波分解: 超音波化学酸化としても知られており、超音波やメガソニック超音波によって水中にキャビテーションが発生することを利用します。キャビテーションによって生じた気泡がPFAS表面に付着し、気泡が破裂すると非常に高い温度と圧力が発生してPFASの炭素-フッ素結合が破壊されます。
先進的PFAS分解技術の今後を左右する要因
PFASの焼却や埋め立てを巡る懸念が新しいPFAS分解技術登場を後押ししてきましたが、潜在的成長を左右する要因は他にあります。例えば、商業成熟度の高い技術に共通しているのは商用展開用途がみな限定的であることです。この新しい技術が商用展開されるとしても同じことが起きるでしょう。完全実用化の事例やデータが比較的不足していることから、潜在的エンドユーザーがこれら新技術導入に向けて動きにくくなっている可能性があります。
また、これら先進技術のほとんどは、液相PFAS(汚染河川水の含有物など)なら分解できますが、固相のもの(使用済み吸着媒体の付着物など)は分解できません。液相と固相のいずれのPFAS汚染廃棄物でも分解できるのは、SCWOとHALTの2つの技術に限られます。これは非常に重要です。なぜなら、多くの技術が実際にはPFASを吸着媒体から除去し、分解技術で処理できる液相媒体に移すのに別の処理工程が必要であるにも関わらず、使用済み吸着媒体などのPFASを含有する固形廃棄物にとって焼却の代替手段となると謳っているからです。
最後に、先進的PFAS分解技術の今後の行方を左右する唯一最大の要因は規制です。米規制当局が焼却の全面的支持に消極的であることから、先進的PFAS分解技術が焼却に取って代わる機会が生まれていますが、焼却が恒久的に禁止されないことが、先進的PFAS分解技術の成長を阻む障害となっています。米国の規制当局や国防総省が方針を覆し、PFAS廃棄物処理戦略として焼却を支持した場合、先進的PFAS分解技術が支持を得るのはさらに困難になる可能性もあります。また、PFAS処理の主要市場である欧州では、焼却に反対する動きが今のところありません。PFAS焼却を巡る規制変更は、この分野の今後の行方を見守る上で重要になるはずです。焼却以外の規制(産業プロセスや廃水中のPFASの許容基準値など)の変更も、PFAS分解技術を大きく左右する可能性があります。
2025年から2035年までのPFAS処理市場予測
IDTechExでは、PFAS分解に関する詳細情報を調査レポート「PFAS処理 2025-2035年:技術、規制、有力企業、用途」で提供しています。本レポートでは、新旧の各種PFAS処理技術を評価し、PFAS処理を必要とする応用分野の技術ごとの可能性を分析しています。併せて参入企業状況も紹介しており、各処理分野・技術における活動状況が把握できます。また、都市飲料水向けPFAS処理に関する10年間市場予測も掲載しています。持続可能性の中で急速に発展を遂げている当分野を理解したいとお考えの方に、IDTechExの包括的な解説と分析を通して、絶えず変化するPFAS処理市場の全容理解に役立つ情報を提供しています。
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