クリティカルマテリアル回収の世界的動向:2025年以降

Dr Jack Howley
クリティカルマテリアル回収の世界的動向:2025年以降
IDTechExは、2046年までに年間 8,150キロトンのクリティカルマテリアルが廃棄物から回収されると予測。
 
関税戦争、輸出制限、防衛費増加により戦略物資供給が注目を集めていることから、「クリティカルマテリアル」は今年のメガトレンドの有力候補になるかもしれません。バッテリー材料、希土類、半導体は、電気自動車、グリーンエネルギー、AI、コンピューティングの各用途に不可欠な材料(クリティカルマテリアル、重要原材料)として浮上していますが、クリティカルマテリアルの供給は地理的に局所化が進んでおり、供給リスクも高まっているため、新たな供給源開発が各国や企業にとって重要な優先事項となっています。
 
廃棄物処理でのクリティカルマテリアル回収の可能性が今後ますます高まることから、二次資源からのクリティカルマテリアルの回収は、市場機会の拡大が期待されています。IDTechExの最新調査レポート「クリティカルマテリアルの回収 2026-2046年:技術、市場、有力企業」では、2046年までに年間 8,150キロトンのクリティカルマテリアルが廃棄物から回収されると予測しています。
 
 
クリティカルマテリアル回収の二次資源と今後20年間のクリティカルマテリアル回収量予測。出典:IDTechEx
 
高まるクリティカルマテリアルの需要
 
クリティカルマテリアルは、電動輸送、風力エネルギー、グリーン水素、太陽光発電、データセンター、AI関連分野など、さまざまな成長市場に不可欠です。リチウム、ニッケル、コバルト、グラファイトは電気自動車に使用されるリチウムイオン電池向けのクリティカルマテリアルであり、ネオジム、テルビウム、ジスプロシウムは電動モーターや風力タービン発電機の磁石に使用される重要希土類です。
 
シリコン、ガリウム、ゲルマニウム、インジウムなどの重要半導体は、ソーラーパネル、オプトエレクトロニクス、集積回路に応用されています。クリティカルマテリアル市場での需要増加に伴い、供給の分散化を求める声も高まり続けています。
 
最近の貿易規制によって多くの戦略物資の地理的な集中が明らかになり、2024年以降、世界のクリティカルマテリアルは増大する供給リスクにさらされています。2025年4月には、中国が先行して実施していた防衛用途向けのクリティカルマテリアルや重要半導体のガリウムとゲルマニウムに対する制限に続く措置として、重要希土類磁石(レア・アースマグネット)材料に対して輸出制限を実施しました。
 
各国政府や国際機関が国内経済・国家安全保障上の優先事項に沿ったクリティカル マテリアルリストの策定と拡充を進めています。2024年以降、ニュージーランド、トルコ、NATOは、初めてクリティカル マテリアルリストを作成し、イギリスもオーストラリア政府もリストを拡充しています。
 
廃棄物からのクリティカルマテリアル回収
 
二次資源や廃棄物からのクリティカルマテリアル回収は、クリティカルマテリアルの供給を多様化・安定化するための有力な選択肢です。クリティカルマテリアルを含む廃棄物は消費時に発生するため、供給難が緩和されます。また、廃棄物中のクリティカルマテリアルの濃度は、多くの一次鉱床よりも高いことが一般的で、重量当たりの価値も高くなっています。例えば、希土類磁石の再生品に含まれる重要希土類は重量比で最大33%になる場合もあるのに対し、良質な鉱床でも含有率は重量比で最大12%にとどまります。
 
廃棄物からのクリティカルマテリアル回収のもう1つの利点は、鉱業セクターで確立された抽出・回収技術をクリティカルマテリアルのリサイクルに広く応用できるという点です。乾式製錬(smelting:製錬)技術や湿式製錬(液体抽出・分離)技術は、一次鉱物と二次的な再生廃棄物の双方の処理への利用が進んでいます。
 
開発が進んでいる分野では、乾式・湿式製錬技術を二次原料の独特で複雑でもある組成に適応させることに重点が置かれています。IDTechExの調査では、イオン液体、バイオ製錬、溶媒抽出、液体クロマトグラフィー、ダイレクトリサイクルを含む15の先進および将来のクリティカルマテリアル回収技術を評価し、それぞれのSWOT分析と技術成熟度評価を行っています。
 
 
世界のクリティカルマテリアル年間生産量、リサイクル資源の価値、リサイクル率。出典:IDTechEx
 
2025年現在のクリティカルマテリアルのリサイクル率を見ると、重要な卑金属と白金族金属が最も高くなっています。イリジウム、プラチナ、パラジウム、ロジウムの各金属の価値の高さに加え、自動車、触媒、宝飾品に集中的に利用されていることもあり、世界の白金族金属の回収率は年間供給量の20%を常に超えています。
 
無機化合物、合金、複合材料に使用されることが多い重要希土類、バッテリー用クリティカルメタル、重要半導体はリサイクル率が著しく低くなっており、リサイクル率を向上させるには、廃棄物の入手性を高め、使用済み製品のリサイクルを改善することや、リサイクル事業者が採算をとれるビジネスモデルの確立が不可欠です。
 
重要希土類とバッテリー材料回収の成長機会
 
リチウムイオン電池のリサイクルは、2046年までに価値ベースでクリティカルマテリアル最大のセグメントとなる見通しであり、この期間中の年平均成長率は15.9%になるとIDTechExは予測しています。2030年代半ばまでに大量のEVが廃棄対象となることを見越して、アジア太平洋、ヨーロッパ、北米の各地でメカニカルリサイクルや湿式製錬によるリサイクルの処理能力が拡大し始めていますが、バッテリーリサイクル市場は依然として流動的です。
 
アメリカ、EU、インド、中国の新たなリサイクル規制・政策は、バッテリー用クリティカルマテリアルの回収にとっては強力な追い風となっていますが、リチウム、コバルト、ニッケル系の正極材価格の下落圧力は、短期的にリサイクル事業者の収益性に影響することになります。
 
今後10年間で、希土類磁石は重要希土類の主な二次供給源となり、この増大する原料供給に対応するため、リサイクル処理能力も拡大する見込みです。ロングループ・ショートループのリサイクル方法を用いることで、高性能ネオジム永久磁石から貴重なネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムを回収することが可能です。
 
IDTechExの調べでは、希土類磁石の生産量は2036年までにアメリカでは5.9倍、ヨーロッパでは3.1倍に増加し、削りくずや製造スクラップがクリティカルマテリアル回収を目的とした二次的な希土類の主要原料として浮上する見込みです。
 
製造スクラップは、2025年も重要希土類やバッテリー用クリティカルマテリアルのリサイクル原料の大部分を占めていますが、廃車となるEVの数が増加するとともに、この状況も今後10年で変わってくるでしょう。
 
EVは、リチウムイオン電池パックと電動モーターのそれぞれからリサイクルされるバッテリー材料と希土類の主な二次供給源となる見通しです。世界全体の車両が電動化されることで、リチウムイオン電池のリサイクルによって回収される総価値は、2034年までに自動車用触媒コンバーターからリサイクルされる白金族金属の総価値を上回る見通しであり、これは業界にとって大きな転換点となるでしょう。
 
2025年以降のクリティカルマテリアル回収
 
二次資源や廃棄物からのクリティカルマテリアル回収は、今後20年間にわたってクリティカルマテリアルの供給リスクに対応するための鍵となります。原料の入手性向上、材料に伴う供給リスクの増大、回収による価値創出の機会拡大が追い風となり、バッテリー用クリティカルマテリアルや重要希土類のリサイクル率は2046年までに向上すると見られています。
 
クリティカルマテリアルの回収と新たな循環型サプライチェーンの将来における主な課題は、再生材の価格と収益性です。クリティカルマテリアルの価格は今後も不安定な状況が続き、商品価格が低迷する時期には、リサイクル事業の拡大が阻害される可能性があります。サプライチェーンの強力なパートナーシップ、最低価格契約、処理費用は、どれも新興のクリティカルマテリアル回収市場を支える役割を果たすことになるとIDTechExは予測しています。
 
IDTechExの最新調査レポート「クリティカルマテリアルの回収 2026-2046年:技術、市場、有力企業」では、リチウムイオン電池材料のリサイクル、希土類リサイクル、重要半導体回収、白金族金属のリサイクル市場に関する包括的な技術分析、市場調査、有力企業、そして20年間にわたる詳細な市場予測を提供しています。本レポートでは、15のSWOT分析、技術成熟度とベンチマーク評価、45社以上の企業プロファイルを含むサプライチェーン分析がご覧いただけます。
 
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート「クリティカルマテリアルの回収 2026-2046年:技術、市場、有力企業」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。 IDTechExの先進材料関連レポートは、こちらでご覧いただけます。

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