データセンターにおける今後のバッテリーの進化と技術的影響
2026年2月27日
Conrad Nichols
データセンターでは、データ損失防止と重要負荷への対応を目的に、UPS(無停電電源装置)の一部としてバッテリーが使用されています。しかし、AIデータセンターの普及に伴い、電力負荷の変動を管理する必要性も高まってきています。現在リチウムイオン電池は、世界的にBESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)で主流ですが、この用途での劣化や安全上のリスクが確認されており、長期的なソリューションとしては最適でないかもしれません。技術的な考慮事項が多岐にわたり、より安定したソリューションを提供する別のバッテリー貯蔵技術が登場する可能性もあります。また、ディーゼル発電機への依存度を低減し、電力網の安定性を支えるため、エネルギー貯蔵技術の中で放電時間の長いものが長期的に採用されるかもしれません。本記事では、データセンター向けバッテリー技術の最新動向を解説します。
AIデータセンターの急増に伴い、新たなインフラを支えるためにオンサイトで使用されるBESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)への需要が高まっています。系統用市場ではリチウムイオンBESS技術が優位にあり、サプライチェーンが確立しているため、この技術は初期段階で導入しやすい有力な候補となっています。しかし、リチウムイオン電池の劣化や安全性への懸念から、データセンター用途では代替バッテリー貯蔵技術が台頭する可能性が高まっています。
また、オンサイトのディーゼル発電機への依存度を低減し、電力会社が系統電力の需給バランスをより確実に調整できるようにするため、AIデータセンターでは、より放電時間の長いBESS技術の需要も生まれるかもしれません。データセンター向けのBESS需要は、C&I(商業と産業)用途向けBESS市場全体に大きく影響を与える見込みで、IDTechExの市場調査レポート「データセンター・C&I向けバッテリー貯蔵 2026-2036年:市場、予測、有力企業、技術」では、世界のC&I用BESS市場は 、2036年までに210億ドル規模に達すると予測しています。
データセンターでのバッテリー用途
データセンター内のバッテリーシステムは、停電時にも継続して電力を供給するために重要負荷(MW)を賄う必要があり、重要負荷はデータセンター全体の電力需要よりも小さくなることが一般的です。重要負荷とは、データ損失やサービス中断を防ぐために稼働を維持しなければならない重要なIT機器を指し、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器などが挙げられます。一般的にバッテリーは、UPS(無停電電源装置)システムの一部として接続され、停電を防ぐ必要のある場合、つまり、連続稼働の維持や、データ損失回避(例:データセンターでのデータ破損防止)のために使用されます。
データセンターのバッテリーは、系統電力のピークカットにも利用可能です。そのため、データセンター事業者は電気コストを最適化でき、C&I分野のエンドユーザーもビハインド・ザ・メーターの仕組みとして一般的に採用しています。
さらに重要な新しい用途として、AI負荷の変動を管理するためのバッテリー利用が挙げられます。MW規模の負荷変動は管理が難しい場合があるため、高めの一定の系統電力で稼働できるようにデータセンターが余分の計算を行うこともあります。しかし、これは電力の無駄につながる可能性があるため、バッテリー技術を利用することで、必要に応じてデータセンターの負荷に追加の電力を短時間で瞬発的に供給し、ベースラインを低く抑えた一定の系統電力でデータセンターを稼働できるようになるかもしれません。こうしたMW規模の変動は、1分間に複数回発生する可能性があります。同様に、データセンターの負荷が急に低下した場合には、電力網の余剰電力を利用してバッテリーを充電することも可能です。
リチウムイオン電池の欠点と代替バッテリー技術の利点
一般的にデータセンター内のUPS用途には、低コストであることから制御弁式鉛蓄電池(VRLA電池)やリチウムイオン電池(LIB)技術が採用されてきました。しかし、負荷変動が激しいためLIBが急速に劣化する可能性があり、LIBがわずか6か月でデータセンターから撤去されたという事例も報告されています。一方、電力網に設置されたBESSでは、より低いCレートで1日1回しか充放電サイクルが行われない場合もあり、バッテリー寿命が長くなる傾向があります。劣化速度が上がるほど安全上のリスクも高まります。また、データセンターでのリチウムイオン電池火災も無視できなくなってきています。そのため、データセンター事業者は、実際に保険料の増額や保険適用の拒否に直面する可能性もあります。

データーセンターでのバッテリー貯蔵技術の進化。出典:IDTechEx
こうした問題に対応するために、代替バッテリー貯蔵技術が登場する可能性もあります。例えば、レドックスフロー電池(RFB)は、電解液が不燃性で、劣化も最小限に抑えられ、サイクル寿命は2万回を超えるとされています。より安価な非バナジウム系バッテリーケミストリーの技術成熟度が、商業的普及の拡大を実現する上で依然として重要な考慮事項となっていますが、この技術はデータセンター用途で、そうした大きな強みを発揮することが期待されています。有力企業であるエクセル・バッテリーズとFlexBaseは、それぞれアメリカとヨーロッパでRFBを採用した商業規模のデータセンタープロジェクト開発を進めています。
ディーゼル発電機への依存度を低減し、停電後の系統電力需要の急激な落ち込みを防ぐため、より放電時間の長いRFB技術を採用することも考えられます。一旦停電が発生すると、オンサイトのディーゼル発電機からの一時的な電力供給を電力会社からの供給に戻すことを、データセンター事業者が躊躇する場合があります。より大容量で放電時間の長いBESSをオンサイトに導入することで、電力会社にとってより予測の立てやすい形で負荷需要を管理できます。これは、データセンター事業者が供給を電力網に戻す判断をするまでの間、系統電力でBESSを充電できる時間を延長することが可能になるからです。これにより電力会社は、電力網の不安定化を招きかねない需要の大幅な落ち込みへの対応ではなく、電力の需給バランスをより確実に調整できるようになります。
ナトリウムイオン技術についても、高Cレートと高出力密度という能力を兼ね備えている可能性があるため、変動の大きいデータセンター内のAI負荷を管理する技術の有力な選択肢と見てよいでしょう。ティアマット・エナジーはエンデバーと戦略的パートナーシップを結んでおり、まずヨーロッパを対象として、エンデバーのデータセンター向けにナトリウムイオンBESS技術(公称Cレートは60)の開発を進めています。
データセンター向けバッテリーの見通し
短期的には、引き続きリチウムイオンBESS技術がデータセンターで採用される見込みです。特に系統用市場で広く入手可能なことから、より低コストなLFP系ソリューションが採用される可能性があります。空間的に制約のあるデータセンターでは、LIBバッテリーケミストリーとしてエネルギー密度が高いNMC技術が採用されるかもしれませんが、最近のリチウムイオン電池火災や、商用環境でのAIデータセンターからの早期撤去は、この用途での当該技術の弱点も浮き彫りになっています。
劣化の少なさ、不燃性、出力密度、Cレートなどの主要性能指標の改善により、フロー電池やナトリウムイオンBESSなどの代替バッテリー貯蔵技術が、この用途に独自の利点をもたらす可能性もあります。これらの技術の中で放電時間がより長いものは、データセンターでのディーゼル発電機への依存度を低減するだけでなく、電力会社がより予測しやすい形で電力需給バランスを調整することを支援する上でも有益なものとなります。
データセンター向けのバッテリー貯蔵技術、プロジェクト、トレンド、費用便益分析、開発状況など、商業・産業向けの多くの用途に関する詳細情報や、技術コストや主要プレーヤーへのインタビューは、「データセンター・C&I向けバッテリー貯蔵 2026-2036年:市場、予測、有力企業、技術」でご確認ください。
本レポートでは、C&I向けBESS技術のベンチマーク評価、部品別コスト内訳、米国製LFPリチウムイオンセルの製造コストと中国からの輸入コストの比較に関する主な定量分析 (既存関税、税額控除、OBBBA の影響を考慮)などの主要な分析もご覧いただけます。
さらに詳しくはIDTechExのレポート「データセンター・C&I向けバッテリー貯蔵 2026-2036年:市場、予測、有力企業、技術」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの最新調査レポートは、こちら でご覧いただけます。
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