重要な進展により息を吹き返すインスリンポンプ業界

重要な進展により息を吹き返すインスリンポンプ業界

Cropped view of a diabetic child applying an insulin pump dressing in his abdomen with the doctor in the clinic
インスリンポンプには、他のインスリン投与方法と比べて顕著な利点がいくつかあります。インスリンポンプの使用により、インスリン注射の回数を減らし、さらには他の方法とは比較にならないほど精密に投与量を制御することも可能です。使用者があらかじめ決められた投与スケジュールを設定できるようにすると、インスリンを投与し忘れた場合に高血糖状態になるのを防いだり、親が子の血糖値を管理するのに役立ちます。では、他のインスリン投与方法と比べ、インスリンポンプの使用がそれほど普及していないのはなぜでしょうか?
 
一番の理由は費用です。インスリンポンプは非常に高額で1台数千ドルもします。インスリン投与量の正確な制御には、ある程度のクラスのセンサーが求められるからです。しかもこの費用には必要な使い捨て器具は含まれていません。従来のインスリン注入ポンプには、定期的に交換の必要なカテーテルやバッテリー、接着剤などの消耗品が必要で、それらの費用も別途かかります。より手頃な価格のインスリン投与方法を前にして、インスリンポンプはその価格を正当化するのに苦労しています。このため、インスリンポンプの普及数量は芳しくありません。ある調査では、2021年の英国の成人糖尿病患者におけるポンプの普及率はわずか6.2%であるという結果が出ています。
 
しかしながら、この業界では2つの重要な進展があり、これによりすべてが変わることになるかもしれません。1つはより手頃な価格のパッチ式ポンプの登場。もう1つは完全閉ループ人工膵臓システムによる糖尿病管理の完全自動化への緩やかな動きが見られることです。これらを背景に、これまで停滞していたインスリンポンプ業界への関心が高まっています。IDTechExの調査レポート『糖尿病管理技術 2022-2032年: 市場、有力企業、見通し』では、インスリンポンプ市場とより広範囲の関連する糖尿病管理デバイス業界について詳しく解説しています。

パッチ式ポンプ: より求めやすく、より便利に

従来のインスリンポンプは、1台あたり2000~8000ドル、さらに年間1000~2000ドルの消耗品が必要でした。ポンプの寿命が4~8年と長いため、年間の価格は下がりますが、この高い初期費用が顧客にとって大きな障壁となっていることに変わりはありません。血糖上昇の抑制効果があるにもかかわらず、高額な費用のために特定の患者グループ以外では保険適用の対象になりにくくなっています。普及を進めるには、患者のQOLを大きく向上させるポンプや、単価を大きく抑えたポンプの開発が必要になるでしょう。
 
この後者のアプローチを取っているのがパッチ式ポンプです。必要なすべての機能が使い捨てユニット本体に組み込まれているのです。パッチ式ポンプは通常、使い捨ての本体だけで作動し、そこに接続した送信装置を使って操作できます。従来のインスリンポンプよりもはるかに手頃で、ポンプ1台当たりの価格は20~50ドルです。ただし、耐用期間は通常1~5日であり、注入ポンプよりも非常に短くなっています。
 
パッチポンプ業界はここ数年で急成長しており、今後10年間は成長が続くと予想されています。特に、単価の低さは消費者にとって魅力的な特性であると考えられ、償還のサポートがなくても、1ポッドあたりは十分に手が届く価格になっています。
 
タイプ別インスリンポンプ売上。 Source: IDTechEx - 『糖尿病管理技術 2022-2032年: 市場、有力企業、見通し』
 
パッチ式ポンプの方が単価は低いものの、従来の注入ポンプと比較した場合に、必ずしも患者の費用負担が減るわけではありません。パッチ式ポンプは定期的に交換する必要があるため、ポンプの型式や使用法によっては、実際の年間コストが高くなる場合があります。それにもかかわらず、消費者はパッチ式ポンプという選択肢に大きな関心を示し続けています。

糖尿病管理の自動化:完全閉ループシステム

長きにわたり糖尿病管理業界が目標としてきたことは、糖尿病管理プロセスの完全自動化です。おそらく、この目標を実現するための最も有望な手段は、閉ループシステムを開発することでした。
 
閉ループシステムでは、インスリン投与装置が血糖測定装置と組み合わされています。これにより、患者が介入しなくても、血糖値の測定とインスリン投与の自動通知が行われます。インスリンポンプは、このようなシステムに最適なインスリン投与システムです。というのも、すでに(少量であれば)インスリンを(事前設定スケジュールに従って)自動的に投与できるようになっており、後はインスリンの自動投与を実行するための適切なアルゴリズムを開発するだけの状態にあるからです。
 
最近になって連続血糖測定(CGM)が注目されるようになったことで、閉ループは脚光を浴びるようになりました。CGMは、閉ループのインスリン投与に不可欠な血糖測定装置として利用できます。血糖データの収集とモバイルデータへの送信を頻繁になおかつリモートで行うことなどは、従来の検査用紙方式では実現できなかったことです。CGMは年々進歩し続けており、今では精度が検査用紙に迫りつつあります。閉ループシステムの開発への関心がきっかけとなってインスリンポンプメーカーとCGMメーカーとの協業が増えています。CGM大手のデクスコムは、インスレットやタンデム・ダイアベティス・ケアといったインスリンポンプメーカー各社と協業を進めています。現在は、780Gシステムを擁するメドトロニックが先頭を走っています。この「先進ハイブリッド閉ループ」システムにより、メドトロニックのポンプは、接続された自社のCGMからデータを受信し、インスリンの投与量を自動調整できるようになっています。しかしながら、インスリンの投与量には制限があり、投与量を増やすには人の手による入力操作が必要です。人による承認が必要なため、これは「完全」閉ループシステムではなく「ハイブリッド」に分類されます。
 
完全閉ループシステムの商用化は、インスリンポンプ業界にとって大きな追い風になると予想されています。これらのシステムがもたらしうる利便性や安心感の向上に加えて、病状経過の改善にも効果があれば、さらに保険適用の対象になりやすくなりそうです。とはいえ、完全閉ループまで辿り着くのは容易なことではありません。システムのどんな誤りでも死につながる恐れがあるため、完全閉ループの実現は、厳しい規制のために少なからず遅れています。いずれにせよ、ここ数年の間にインスリンポンプ業界が実現したハイブリッド閉ループの自動化は、将来につながる有望な成果であり、楽観的な見通しの理由となるものです。
 
これらの進展は、今後数年間にわたるインスリンポンプ業界の大きな変化を約束するものであり、糖尿病管理デバイス市場の相互関連性の強さを踏まえると、業界全体にわたり、各種市場に相当な「波及」効果をもたらすことになるでしょう。IDTechExの調査レポート『糖尿病管理技術 2022-2032年: 市場、有力企業、見通し』では、インスリンポンプ業界の展望と、より広いエコシステムへの影響について詳細に論じ、10年間の市場予測をまとめています。ぜひ、ご活用ください。
 
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