ノーベル賞を受賞したMOFの将来展望
2025年10月9日
Dr Shababa Selim
金属有機構造体(MOF)は1990年代に初めて開発された物質です。それから30年後の2025年、この高機能性材料が評価され、ノーベル化学賞を受賞しました。MOFの注目すべき特徴の1つは、設計の柔軟性と広範な化学的機能です。この特徴により、用途に応じて性質を自由に操作し多種多様な構造を作製したり、形状や孔の大きさを操作することができます。MOFは、構造の汎用性と操作の自由度により、二酸化炭素回収、バッテリー、バイオガスのスイートニングなどのガス分離法、触媒作用、医療・薬物送達、センシングなど、数多くの用途で幅広い関心を集めてきました。本格的な商用化に向けて進展する中、依然として課題が残されていますが、IDTechExはMOF市場が2035年までに9億ドルを超える規模に達すると予測しています。
多様な用途に向けたMOF開発の進展。出典:IDTechExノーベル賞への道のり
1990年代半ばに、初めて安定性の高い構造のMOFが作られました。それ以来、10万種類を超える構造のMOFが発表されており、その数は現在も増え続けています。MOFは、操作性の高い周期構造を持ち、比表面積が非常に高い(MOF1グラム当たり最大7,000m2 )ことで知られています。他の固体吸着剤と比較すると、MOFは細孔径分布の調整が容易で吸着量も大きく、選択性とサイクル安定性にも優れています。加えて、他の吸着剤よりも低いエネルギー損失で再生可能なため、持続可能性の観点からも利点があり、運用コストも抑えられます。ノーベル賞の受賞はMOFの将来性と可能性を認めるものですが、MOFがその期待と実用化とのギャップを埋めることができるかどうかは疑問が残ります。
この材料の商用化への道のりは、決して楽なものではありませんでした。研究段階から実用段階への移行は、MOFの合成に使用される一部の材料・前駆物質のコストの高さや入手性の低さなど、いくつかの課題に直面してきました。また、研究段階のMOFの多くはソルボサーマル法を用いてミリグラム規模で合成されたものですが、産業規模での生産にはスケーラブルな生産方法を用いる必要があります。ここ10年ほどの間に、MOFの商用化に向けた数多くの取り組みが失敗に終わっており、一部ではMOFは市場投入が難しい材料であるとの見方も出てきています。例えば、2013年にBASFが天然ガス自動車(NGV)用天然ガスの貯蔵用途として輸送業界向けMOFの商用化に注力していましたが、MOFの製造コストが高いこと、ガソリン車市場が期待ほど発展しなかったことから、当時はガソリン車向けにMOFを商用化することができませんでした。
ところが、MOFの生産規模拡大に取り組む企業のエコシステムは、ここ3~5年で著しく拡大しています。そこには、スヴァンテ、ヌアダ、プロメシアン・パーティクルズ、BASF、ユニシーブをはじめとする多くの企業が名を連ねています。今では、二酸化炭素回収や効率的なガス分離、大気水収穫といったグローバルな課題に取り組むことを目的として、コスト効率の高いスケーラブルなMOF技術の提供へと焦点が移りつつあります。
MOFと関連技術の開発・拡大に取り組むプレーヤーによる世界的エコシステムの拡大。出典:「金属有機構造体(MOF) 2025-2035年:市場、技術、予測」 IDTechEx今後の展望
MOFは、有益な性質と材料特性により、二酸化炭素回収、ウォーター・ハーベスティング、水素貯蔵、化学的精製、ガス分離をはじめとする幅広い用途で関心を集めています。中でも特に有望視されているのは、低エネルギー消費、運用コスト低減に貢献する可能性のある分野です。
とりわけ二酸化炭素回収は、MOFのCO2選択性、サイクル安定性の高さ、再生時のエネルギー消費量の低さから、MOFの重要な用途として急浮上してきており、スヴァンテやヌアダなどが関連技術の開発活動を本格化させています。それは、MOFを用いることで、現行のアミンスクラビング法と比較して運用コストの大幅な削減が見込めるからです。
MOFは潜在的な可能性がある一方で、課題も抱えています。低コストな量産化技術と高い耐久性を持つ産業用グレード製品の生産技術をいかにして統合するかが大きな課題です。初期段階の試験やパイロット段階のデータでは有望な結果が出ているものの、産業規模での実証試験はまだ実施されていません。また、主なターゲット市場では現行技術が未だ根強く残っており、MOFが市場シェアを獲得するには競争力を高める必要があります。今後10年間でいくつかの商用製品が登場すると予想される中、MOF関連技術はその性能を大規模に実証することが求められるでしょう。それを実現するには、スケーラブルな方法を用いて製造能力を継続的に拡大していくことも必要です。
MOF関連技術が商用化に近づく中、IDTechExの調査レポート「金属有機構造体(MOF) 2025-2035年:市場、技術、予測」 では、主要トレンドの独立した分析を提供し、MOFの応用分野として、二酸化炭素回収、ウォーター・ハーベスティング、化学的分離・精製、水素貯蔵、エネルギー貯蔵(例:電池)、半導体、センサーなどを取り上げています。一次調査の知見に基づき、ベンチマークの提示、業界の主要プレーヤー分析、用途別の年間需要量と市場規模の予測を掲載しています。
さらに詳しくは、IDTechExのレポート「金属有機構造体(MOF) 2025-2035年:市場、技術、予測」 でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。 IDTechExのその他レポートは、こちら でご覧いただけます。
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