量子ドット(Q-dot) :自発光QLEDへの長い道のり

量子ドット(Q-dot) :自発光QLEDへの長い道のり

量子ドット(Q-dot) :自発光QLEDへの長い道のり
下の画像は、発光型ディスプレイにおける材料技術の可能性のある進化ロードマップを示したものです。最初に開発されたのが、蛍光OLED材料です。これらは、狭帯域発光、成熟性、安定性を提供しましたが、いわゆる三重項状態から(光を)取り出すことができないため、内部量子効率(IQE)は低下しました。その後、燐光OLED材料が登場して三重項状態から取り出すことも可能となり、IQEがほぼ100%まで向上しました。しかしながら、FWHM(半値全幅)は大きくなってしまいました。OLEDディスプレイでは、最初に赤色発光層が、その後2013年に緑色発光層が燐光に切り替わりました。しかし、青色については現在でも実現が難しい状況となっています。
 
現在、本技術はさらに進化しています。TADF(熱活性化遅延蛍光)材料の開発が進んでいます。この材料技術もすべての状態から(光を)取り出せるので、安定した青色発光体への道を開く可能性があります。ハイパーTADFは、TADFの特性と蛍光色素の特性が融合したまた別の材料です。この材料はIQEが非常に高く、FWHMも狭い反面、低(手ごろな)コスト大量生産に向けての深刻な課題が露呈しています。まだ商業化までは至っていません。
 
究極の発光材料は、恐らく量子ドット(QD)であるのかもしれません。これは、高いIQEと非常に狭いFWHMにより、極めて広い色域を持つディスプレイが実現する可能性があるからです。また、溶液で処理されているため、大型ディスプレイの低コスト製造への道を開く可能性があります。今日、ほとんどすべてのディスプレイ市場で、QLEDに到達するために必要な手段と手順が積極的に開発されています。
 
本記事は、IDTechEx市場調査レポート 『量子ドット材料と技術 2020-2030年:動向、市場、主要企業』の抜粋です。量子ドットのトレンド、課題、イノベーションの機会を取り上げ、QLEDに向けた予想技術ロードマップを明らかにしていきます。
 
IDTechExはグルーバルに主要企業の動向を調査し、性能水準と進化のトレンド、規制、組成物の変更、そして新しい市場とディスプレイ内の統合方式を切り開くための、より徹底的かつ漸進的な開発要件に目を向けながら、すべての材料トレンドを分析し取り上げています。
 
本調査レポートでは、既存・新規の用途も調査しており、現状と将来の展望についての詳細な評価をご覧いただけます。ここでは、エンハンスメントフィルム、LCD上のQDカラーフィルター、OLEDおよびマイクロLED、オンチップ、QLED、照明、NIR/SWIRセンサー、農業用フィルムなどを考察しています。本レポートには、材料・用途のレベルでの価値・消費の観点から見た市場予測も掲載しています。さらに詳しくは、『量子ドット材料と技術 2020-2030年:動向、市場、主要企業』を参照ください。
QLEDの性能のこれまでの進化
最初に、QLEDの特性の進化におけるハイレベルなトレンドを見てみましょう。下の2つのグラフをご覧ください。左の画像は、輝度の推移(Cd/sqm)を示しています。QLEDはまだ、あまり明るく動作できないことが分かります。実際、QLEDはOLEDの輝度レベルに後れを取っていますし、OLED自体も最も輝度が高いディスプレイ技術ではありません。最新の結果では、非常に有望な成果が出ていますが、これらは他より優れた結果というだけで、他のパラメータとのトレードオフの可能性がはっきりと報告されていません。
 
次は右の図を考察してみましょう。このグラフはEQEの推移を表しています。これには最新かつ最先端の結果が含まれています。Cd系の赤色・緑色のEQEが大きな進歩を遂げたことが見て取れます。しかしながら、Cd系の青色QDは依然として後れを取っています。一般的にQLED向けにCd系材料に焦点を当てることは見当違いである可能性があります。Cdの推定消費レベル(ug/mm2)が高いため、その材料がRoHS指令に違反する可能性があるからです。ただしこれは確定されたものではなく、規制の状況は常に発展しています。実際、この問題はヨーロッパにおいても、QDエンハンスメントフィルム向けでも、まだ議論されています。
 
下のグラフには、InP系材料の推移も示されています。この中で、最新鋭の研究室の結果が、性能の差をどんどん埋めてきていますが、同等となるまでには、まだ程遠い状況にあります。これらの結果を達成するため、材料・デバイスレベルで数多くの手段が講じられています。材料のレベルでは、表面の酸化を防ぎ除去まですること、急峻な界面を除去し、代わりに組成物の円滑な移行を行うこと、配位子交換でより適切な配位子を得ることなどを目的に、複雑な取り組みが実施されています。QDビジネスのすべての材料トレンド(特に、ディスプレイ、照明、センサー、タグ付け、農業用フィルム、光線療法などにおける将来の用途を切り開くための開発状況)の詳細については、『量子ドット材料と技術 2020-2030年:動向、市場、主要企業』で確認できます。
 
Left and right charts show, respectively, progress in EQE (%) and luminance (k cd/sqm) of OLEDs (filled black triangles), Cd QDs (filled black squares), and InP QDs (filled black trapezoids). The coloured dots are the latest Cd-free results. The color here refers to the color of emission. These charts are modified and updated from figures previously presented by Fraunhofer IAP. The QD picture in figure 1 is taken from Fraunhofer IAP. To learn more about quantum dots please see "Quantum Dot Materials and Technologies 2019-2029: Trends, Markets, Players".
残っている課題
次の課題は寿命にあります。次の図は、様々なレポートのLT50を示したものです。このグラフは、NanosysがSID2019で公開した図を転用・更新したものです。軽度の輝度と駆動条件の下でのLT50(初期輝度が元の値の50%まで低下すること)でさえ、かなり低いことが見て取れます。より高い値(Cd/sqm)でLT95まで行くことは、劣化メカニズムが弱まるため、さらにいっそう困難になることにご注意ください。このように、LT95の寿命をLT50の値から直線的に推定することはできません。T
 
寿命の改善は簡単に達成できることではありません。材料自体を改良する必要があります。1つの戦略は、傾斜合金コアシェル構造を大きくし、CTEのミスマッチを理由に応力を引き起こす可能性のある内部の急峻な界面を除去することです。デバイスについても改良する必要があります。特に、適切な荷電平衡を達成する必要があります。したがって、適切な電子輸送層(ETL)および正孔輸送層(HTL)を選択・開発しなければなりません。ZnOナノ粒子またはZnMgOナノ粒子は、一般的なETCの選択肢です。しかしHTLは、QDの価電子帯の深さにより、より困難なものとなっています。そのため、OLED材料を簡単に丸ごとコピーアンドペーストすることはできません。適切なHTLを実装しようと、多くの戦略が追求されています。エネルギー準位の差を傾斜させるために、2つ以上のHTLを入れているところもあれば、ETLの後に追加の層を導入し、電子注入を遅くしようとしているところもあります。一般に、適切なデバイスアーキテクチャと材料のスタックに関する問題は、QLEDディスプレイの開発において基本的なこととなっています。さらに詳しくは、『量子ドット材料と技術 2020-2030年:動向、市場、主要企業』を参照ください。
 
The figure above shows the LT50 lifetime of QLED devices at only 100 nits. The red and green Cd-based QLED have high LT50. The blue is lagging. Typically, Cd-free QLEDs have had very poor lifetime. This is now improving. The results from Nanosys/LGD show LT50 for red, green, and blue, and the Samsung one for red (extrapolated from TL50 at 1k nits). These early-stage works that it might be possible to extend lifetime of Cd-free QDs although there is still far to develop. For more information please see "Quantum Dot Materials and Technologies 2019-2029: Trends, Markets, Players".
 
当然ながら、その他の課題もあります。相変わらず、優れた青色発光体材料はまだ確立されていません。一方で、440~460nmの波長に近づこうとすると、InP粒子が小さくなりすぎてしまいます。また一方で、ZnSe-QDは440nmより短い波長の発光に適しています。Cd-QDは可能ですが、毒性の問題への不安に長年悩まされています。そのため、ZnTeSeなどの他の組成物が積極的に研究されています。
 
次は製造に関する問題全体です。最新鋭の結果のほぼすべてが、スピンコートに基づいたものです。インクジェット印刷されたQLEDとスピンコートされたQLEDの間には、大きな性能の差が存在します。また、ピクセルを定義する際に困難となるパターニングがあります。これは簡単なことではありません。一般的な意見として、QLED業界は、10年以上にわたる溶液処理OLEDの開発と、薄膜封緘層の有機層の蒸着におけるインクジェットの商業化から恩恵を受けるでしょう。
将来の展望
ディスプレイメーカー各社は、行く手に広がる長い道のりを認識しつつも、究極の恩恵に突き動かされ、断固とした、積極的でさえある行動をとっています。OLEDとQLEDを使ったハイブリッドなアプローチを実行しようとしているところもあります。1つの良い例として、青色の無地のOLEDはバックライトとして機能します。一方でインクジェット印刷された緑色と赤色のQDは、カラーコンバーターとして機能し、発光性を持つ高コントラストな広色域ディスプレイを実現します。この製造プロセスは、大画面ディスプレイへの道も与えるものであり、WOLEDの長期的な競争の展望を危険にさらす可能性があります。これや、同様のハイブリッドのアプローチでは、その道のりの中で貴重な学習を行うことができるため、QLEDの最終的な実現への道が開かれます。
 
下の図は、多くの用途にまたがる当社の市場見通しを示すものです。QLEDは最終的には市場に登場するもの、一夜にして実現することはありません。しかし、この試合の号砲はすでに鳴らされています。バリューチェーン内の全企業が、ゴールラインに向けて競争しています。この競争には、研究者、QD/ETL/HTL開発者、装置メーカー、そしてほぼすべてのディスプレイメーカーが参加しています。面白いことに、QLEDの最終的な目標への道は、多くの重要な技術的マイルストーンのそばを通っており、そのマイルストーンのそれぞれが独自の市場を生み出しています。そのため、開発成果はその道のりの中で収益化される見込みであることから、QLEDは孤立した長期目標とはなっていません。実際、すべての開発成果が長期ロードマップの一部として組み込まれています。
 
The figure above shows the market projection for QDs by application. We can see that the market is set to experience a dramatic transformation in the composition of its applications. Interestingly, the market will break out of LCD display into other types of displays and other applications. This figure includes markets for QD Enhancement Film, QD color filter (QDCF) on LCD, QDCF-OLED, QDCF-microLED, on-chip-LCD, emissive QLED, on-chip lighting, film-type lighting, agricultural film, visible QD sensor, NIR/SWIR QD sensor, photovoltaics, and so on. The red bar refers to QLED showing that it will take time to emerge. For more details including comprehensive application assessments, technology appraisals, needs and trends analyses, overview of key players and business dynamics, and segmented market forecasts please see "Quantum Dot Materials and Technologies 2019-2029: Trends, Markets, Players".
 
さらに詳しくは、『量子ドット材料と技術 2020-2030年:動向、市場、主要企業』を参照ください。 同調査レポートには、詳細な技術分析とロードマップを掲載しているほか、11の用途別に、数量・金額ベースでの市場予測を行っています。この業界の全主要企業の概要も掲載しています。また、既存の材料と新しい材料の選択肢、各材料の課題、材料イノベーション、開発機会に関する重要な評価も行っています。
 
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