レドックスフロー電池 - 広く普及するエネルギー貯蔵技術?
2023年9月29日
Conrad Nichols
過去10年間、レドックスフロー電池(RFB)の導入は散発的で、定置型エネルギー貯蔵用途で増え続けるリチウムイオン電池の導入に比べれば少数でした。しかし、変動性再生可能エネルギー(VRE)の電力網への普及が世界的に進むにつれ、より不確実で変動しやすい電力供給を管理する必要性が高まっています。IDTechExの最新レポート『レドックスフロー電池市場 2024-2034年』で、RFB市場の市場規模が2034年には28億米ドルになると予測しています。RFB市場が今後10年間でどのように成長するかを決定する要因はいくつかあります。
RFBの今後の市場と利点
レドックスフロー電池は、大規模なグリッドスケール用途の定置型エネルギー貯蔵に適しています。より大量のVRE(変動性再生可能エネルギー)電源が電力網に浸透するにつれ、こういったエネルギー源が利用できない期間も長くなる可能性があります。そのため、長期間にわたってエネルギーを送り届けるには、RFBなど、エネルギー貯蔵期間を長くすることが可能なエネルギー貯蔵技術が必要になります。
RFBメーカー各社は、自社システムのサイクル寿命が長いと謳っています。中には2万サイクルを超えるケースもあり、これはリチウムイオン電池よりもはるかに長いサイクルです。つまり、RFBの方がその寿命を通じてより多くのエネルギーを送り届けることができ、それにより、リチウムイオン電池よりも均等化蓄電コスト(LCOS)が低減します。この点はRFBをエネルギー貯蔵技術として使用する場合、リチウムイオンと比較して有利になります。
バナジウムRFB(VRFB)など、一部のRFB技術では、出力とエネルギー容量を切り離すことができます。エネルギー容量を上げるには、電解液の量を増やすだけでなく、電解液貯蔵タンクのサイズも大きくする必要があります。セルスタックの変更は、RFBの出力を上げたい場合のみ必要です。

Decoupled scaling of RFB power output and energy capacity. Source: IDTechEx.
つまり、貯蔵期間が長くなっても、これらのシステムへの設備投資は、タンクのサイズかスタックの数のいずか一方に応じて増加することになります。リチウムイオン電池の場合は、貯蔵期間が長くなると、ユニットシステムのコストも比例して増加します。というのも、すべてのコンポーネントをそれぞれ調整する必要があるからです。このため、RFBをリチウムイオンと比較した場合、貯蔵期間を延ばしてもLCOSが大幅に低減します。このように、RFBには、将来競合しうる長期エネルギー貯蔵技術になる可能性が高いのです。IDTechExの調査レポート『レドックスフロー電池市場 2024-2034年』では、、リチウムイオンとバナジウムRFBを比較しながらLCOSを算出し、説明・精査しています。
現在の市場
このような利点があるにもかかわらず、VRFBのkWh当たりの設備投資は現状、リチウムイオン電池よりも高くなっており、コストの削減はバナジウム電解液のコストによって制約を受けています。また、現在のところLDES(長期エネルギー貯蔵)技術に対する需要はそれほど大きくないため、RFBは現在の定置型エネルギー貯蔵市場において電力網補助サービスやユーティリティサービスでリチウムイオンと競合することになります。これらの用途は貯蔵期間が一般的に4時間以内となり、それらにおいては、リチウムイオンの方が技術としてすでに広く導入され、理解も進んでおり、商業的採算性も上です。したがって、RFBの今後数年間の成長は、パイロットプロジェクトや実証プロジェクトを中心とした安定したものになると見られています。
RFBメーカーは、製造工程の改良によってシステムのコスト削減を模索することになるでしょう。もしくは、代わりとなるより安価なRFBのバッテリーケミストリーを開発することになるかもしれません。また、大容量のエネルギーをより長期間にわたって貯蔵する能力の実証するため、システムの大型化を目指すでしょう。その一例として、ESS Inc.は10時間・500MWhの全鉄RFBを2027年までにドイツに設置する計画を立てています。このようなプロジェクトの成功は、RFB市場の成長に拍車をかける上で重要になるでしょう。
LDESの新たな兆候と見通し
VREの導入が進めば、長期的にLDES技術に対する需要は喚起されるでしょうが、当然ながら、こうした技術への需要が他の国よりも早く高まる国もあると予想されます。オーストラリア、韓国、米国などがその例です。これらの地域では、これまでのエネルギー安全保障と停電リスク、すでに公になっているLDESプロジェクトの入札、政府によるLDES導入目標の発表、LDES技術への出資などに関連する要因が鍵となります。
一般的に、他の地域でも、LDES技術に対する需要は2030年代初めに高まると見られ、VREの導入拡大や、それに伴う電力供給の不透明感や変動性の問題が後押しすることになるでしょう。リチウムイオンと比較してLCOSが低く、貯蔵期間を簡単かつ安価に拡張できることを踏まえると、RFBはLDES用途に適しています。その一方で、RFBの今後数年間の成長は堅調に推移すると予想され、導入は主に実証プロジェクトであり、リチウムイオンとは他の電力網補助サービスやユーティリティサービスで競合することになると予想されています。2020年代後半に、リチウムやコバルトといったリチウムイオン電池材料の供給が制約されることも、RFBをはじめとするエネルギー貯蔵技術全般に対する需要の増加を後押しする要因となるかもしれません。
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート『レドックスフロー電池市場 2024-2034年』で、ご確認ください。
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