量子コンピューティングにおけるフォトニクスのビジネスチャンス

Table showing the blueprint for quantum computing - Qubits, Initialization, Readout, Manipulation
量子コンピューターは様々な方法で作ることができます。競合する各方式が 品質・スケーラビリティ・コスト面など、他の方式と比べ様々な強みがあると主張していることはよく知られていますが、いずれの方式でも、新世代のオプティクス・フォトニクス技術が不可欠であることが明らかになっています。フォトニクスのエコシステムにおいて、新旧問わず多くのプレーヤーに注目すべきサプライチェーンの機会が訪れており、IDTechExの調査レポート「量子コンピューティング市場 2025-2045年:技術、トレンド、有力企業、予測」では、量子コンピューティングハードウェア市場は2045年までに100億ドルを超える規模になると予測しており、将来の市場シェア獲得のチャンスが生まれていています。
 
量子コンピューティングハードウェア方式の主な種類は、超伝導・イオントラップ・中性原子・フォトニック・シリコンスピン・ダイヤモンド・トポロジカルです。個別の設計は大きく異なる場合があるものの、各方式の基本的な要素はほとんど変わりません。また、オプティクスとフォトニクスが多数の中核機能において様々なハードウェア的手法を担っており、読み出し・冷却と制御・モジュール接続・データセンター統合なども含まれています。
 
量子コンピューター基本的要素:量子ビット・初期化・読み出し・操作。出典: IDTechEx
 
読み出しシステムの光子検出器とイメージング
 
量子コンピューターで解決した問題の解を読み出す方法の多くは、光子検出器やイメージングを使用しています。
 
皮肉にも、フォトニック量子コンピューティング自体では、高感度の単一光子検出が求められることが多く、実現には超伝導ナノワイヤが利用されます。そのため、超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)をフォトニック集積回路(PIC)に組み込む取り組みが進められています。実際、フォトニック量子コンピューティングのリーディング企業であるサイクオンタムは、製造可能な金属をベースとしたより高温のSNSPDに関する研究を同社のロードマップに盛り込んでいると公表しています。それが実現すれば、最終的にはフォトニック量子コンピューティングの読み出しを目的とするより精度の高い単一光子検出器の機会が広がり、この小分野が現在直面している冷却力やスペースに関する妥協が少なくなります。このようなイノベーションは、フォールトトレラントな大規模フォトニック量子コンピューティングという小分野の価値提案を実現する上で不可欠となるでしょう。この分野においては、「ホット量子ビット(高温動作量子ビット)」が超伝導の競合品よりもインフラの複雑さを抑えようとしているからです。
 
一方、読み出しに既存のイメージング法や顕微鏡法を使用できるという簡便さは、ダイヤモンド・中性原子・イオントラップのプラットフォームのような方式の一番の強みです。例えば、浜松ホトニクスは光電子増倍管(PMT)と電子増倍型CCD(EM-CCD)の各種製品を、それぞれイオントラップと中性原子の分野向けに既製品として市販しています。一方、クオンタム・ブリリアンスやXeedQなどのプレーヤーが追求しているダイヤモンドプラットフォームでは、さらにシンプルなCMOS(相補型金属酸化膜半導体)カメラが利用できるかもしれません。これらの方式が読み出しに既存のイメージング法を利用できることも、スケーラビリティにおいて競合品に対する優位性を示す上で不可欠になる可能性があります。一部の他の方式については、読み出しに伴う「配線の課題」が量子ビット数に応じて拡大するのに対し、量子ビットアレイ全体を一度に画像化する方がはるかに効率的であるからです。
 
レーザー制御・冷却
 
レーザーも極低温に代わる量子ビットの冷却手段になることをご存知でしょうか? レーザーのイメージといえば、熱・点火・切断・通信などを連想させる高出力ビームを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、量子コンピューティングの世界では、原子を非常に低いエネルギー状態にできることがよく知られています。
 
レーザー冷却の手法は量子コンピューティングの手法や企業の好みによって異なりますが、最終的には反対方向に均等に照射する複数のレーザーを使用して原子やイオンを捕捉または光ピンセットで固定することになります。この手法の主な利点は既存のコンポーネントを使用して実現でき、室温で動作可能な点です。レーザー冷却全体としては、スーパーコンピューティングの量子コンピューティングに必要なクライオスタットよりも電力効率・コスト効率・資源効率がはるかに優れていると考えられています。
 
量子コンピューターにおけるレーザーは、冷却と同様に量子ビットを制御・操作する上での拠り所でもあります。ただし、システムの忠実度(エラーの少なさ)とスケーラビリティに関しては、電気的制御やデジタル制御の方が効率的である可能性が業界内に見受けられます。その一例が英国を拠点とする企業で、イオントラップシステム内で利用するための電子ベースの量子ビット制御法を他に先駆けて開発したオックスフォード・アイオニクスです。SEEQCのようなデジタル読み出しを提唱している他社とともに、この戦略が裏付けるのは、フォトニクスやオプティクスの使用には利点がある一方で、既存の半導体ファウンドリ内で製造可能なパッケージに量子コンピューターコンポーネントを可能な限り多く搭載したいという声も残っているということかもしれません。
 
モジュール接続とデータセンター統合
 
量子コンピューター開発企業がスケーラビリティを追求し続ける中、つなぎ合わせることが可能で再現性のあるモジュールシステムを求める声が高まっています。この手法を推進する要因は多面的です。従来のコンピューティングでスケーラビリティを実現してきた方法をある程度反映しており、エラー訂正における最先端の手法に一致している証拠も示されています。
 
モジュール方式の課題は、システム間接続の正常な構築が簡単にはいかない点です。量子もつれは、単一チップ上の隣接する量子ビット内で維持するだけでも困難であり、複数のシステム(ラックであれ、クライオスタットであろうと)間に分散された量子ビット間では言うまでもありません。
 
しかし、ここでもフォトニクスが答えを出そうとしています。ニュー・クオンタムは、フォトニクスを利用して量子もつれを複数のプロセッサに分散する量子ネットワークユニット(QNU)を開発しました。また、同社は最近、量子・光子インターフェース(QPI)という、最終的に物質と光の間、量子ビットと光子の間にインターフェースを構築する技術も発表しています。このQPUのプロトタイプ版は、Infleqtionの原子トラップ真空システムにすでに搭載され、試験が行われています。
 
市場予測
 
全体としては、企業間や量子ビット方式間の競争(量子競争に勝つための取り組み)以外に、オプティクスやフォトニクスの全体にわたって潜在的な機会が存在します。その中には、現在追求されているほぼすべての手法に存在する読み出し・冷却・制御・接続のニーズも含まれています。
 
とはいえ、個々の企業の量子コンピューター設計にとどまらず、量子コンピューターがデータセンター・従来型コンピューター・通信ネットワークの既存のネットワークに組み込むことが根本的に必要です。データに関しては、すでに光子が世界中で媒体として選ばれており、量子コンピューターが商業的成功を収めるには、何らかの形でフォトニクスが必要になるのは避けられません。
 
IDTechExの調査レポート「量子コンピューティング市場 2025-2045年:技術、トレンド、有力企業、予測」では、世界の未解決課題を解決する画期的アプローチを有望されるハードウェアを取り上げています。量子コンピューティング市場は、創薬・バッテリーケミストリー開発・多変量ロジスティック解析・自動運転・正確な資産評価などを指数関数的に加速化させるものと期待されています。本調査レポートでは、企業やカンファレンス参加者へのインタビューを含め、一次・二次情報に基づく広範囲にわたる調査結果を示し、競合する量子コンピューティング技術(超電導・シリコンスピン・フォトニック・イオントラップ・中性原子・トポロジカル・ダイヤモンド結晶欠陥・アニーリング)を深掘りしています。また、量子コンピューティング業界の進展状況を、従来型コンピューティング業界の進化と比較して評価するために、独自のQCRL(Quantum Commercial Readiness Level:量子技術の商業的成熟度)スコアも掲載しています。量子コンピューター利用に関する獲得可能な最大市場規模(TAM)は、今後ハードウェアの売り上げに転換され、高度な機能やクラウドアクセス型ビジネスモデルの促進につながります。量子コンピューティングの市場規模は2045年までに年平均成長率30% となり、100億ドルを超えると予測されています。

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