熱伝導材料(TIM)-高性能材料への移行

熱伝導材料(TIM)-高性能材料への移行
IDTechExは、熱伝導材料(TIM)の市場規模が2036年までに70億ドルを超えると予測しています。対象となる業界は、EVバッテリー、EVパワーエレクトロニクス(TIM1・TIM2)、データセンター、先端半導体パッケージング(TIM・TIM1.5)、ADASセンサー、家電製品、5Gなど多岐にわたります。IDTechExは、2036年にはTIM市場規模が2026年の2.6倍に拡大すると見込んでいます。TIMにはギャップパッド、放熱グリス、熱伝導性接着剤、相変化材料などさまざまな形態があります。
 
これら業界でTIMの採用拡大を推進する要因は、半導体業界やデータセンター業界でのTIMが持つ高い熱伝導率への需要に始まり、EVバッテリーで使用されるTIMの単位当たりコストの低減まで、多岐にわたります。業界別、TIM1/TIM2/TIM1.5ごとの市場規模の詳細については、IDTechExの最新調査レポート「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」でご覧いただけます。
 
 
TIMの市場規模予測。出典:IDTechEx
 
TIMはエレクトロニクス業界では広く普及しており、垂直方向と水平方向の熱伝導率を高めるため、多くは熱源とヒートシンクの間に取り付けられます。したがって、TIMの評価には熱伝導率が極めて重要な要素となります。
 
熱伝導率以外では、振動環境下での回復率、耐疲労性、反りなどの機械的特性についても対象用途に応じて十分に評価する必要があります。本記事では、7つの分野にわたるTIM1、TIM1.5、TIM2や、熱伝導性フィラーの評価を掲載したIDTechExの市場調査レポート「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」の概要を紹介しています。
 
EVバッテリーとEVパワーエレクトロニクス向けTIM
 
EVバッテリーとEVパワーエレクトロニクスでは、より高いエネルギー密度、より大きい電力容量が求められており、それに電気自動車の急速な普及も相まって、EV業界でのTIM採用は急速に増加すると見られています。
 
EVバッテリーで使用されるTIMは、主にギャップパッド、ギャップフィラー、熱伝導性接着剤(TCA)の3つの形態に分けられます。汎用的な選択肢はないため、バッテリーの設計に応じていずれかを選定します。現在のところは、自動化生産に効率的に対応できることからギャップフィラーが主流となっていますが、EVバッテリーの設計はモジュール設計からセル・ツー・パック設計へと移行しつつあり、TIMの使い方はその影響を大いに受けることになります。
 
モジュール設計ではセルケースごとに個別のTIMが必要になるのに対し、セル・ツー・パックではセルを1つの大きなモジュールに組み込むためケースが不要となり、車両1台当たりのTIM使用量も減少します。セル・ツー・パックでは、TIMがセルと冷却板の間に直接配置されるため、その性能の重要性が一層増します。そこでTIMに求められるのが、効率的な熱伝導性、冷却板の熱膨張係数(CTE)との一致性、冷却剤による劣化への耐性、セルと冷却板を保持するための強力な接着性です。
 
EVパワーエレクトロニクスにおいては、従来のSi IGBTの代わりにSiC MOSFETを使用するのがメガトレンドとなっていますが、最大ジャンクション温度が約150ºCのSi IGBTとは異なり、SiC MOSFETのジャンクション温度は最大175ºC、場合によっては200ºC以上に達する場合もあり、放熱が大きな課題となります。
 
EVパワーエレクトロニクスの場合、TIMを使用する場所に応じてTIM1(ダイ接合材料)とTIM2(パワーエレクトロニクスのベースプレートとヒートシンク間に使用される材料)に分類できます。EVパワーエレクトロニクスのプレーヤーの多くは、放熱対策のために従来のはんだに代えて焼結銀ペーストなどの新材料をTIM1として利用することを模索しています。また、コストダウンを目的に焼結銅ペーストにも触手を伸ばす可能性もあります。より詳しい情報は、「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」に掲載しています。
 
データセンターと先端半導体パッケージングでのTIM
 
2年ほど前から、データセンターと先端半導体パッケージングには大きな関心が寄せられてきました。先端チップ(GPU、ASICなど)のTDP(熱設計電力)が高まり続ける中、TIMの熱伝導率に対する要求も著しく高まっています。データセンターでは顕著なトレンドとして液冷への移行が見られます。つまりD2C(ダイレクト・ツー・チップ)冷却への移行が進んでいるということです。
 
D2C方式では、液冷性能の向上とともに、TIMが熱管理における重要なボトルネックとなります。熱伝導率が非常に高く、同時にさまざまな部品の形状に対応できるような非常にしなやかで柔軟性の高い材料を発見することが大きな課題です。導電性の高い材料のほとんどは硬性で形状になじまず、応力が高まる恐れもあることから、この問題を解消するべく研究開発が進められています。データセンターのコンポーネントと冷却は2024年から2025年にかけて急拡大している分野ですが、今後数年間もその成長は続くと見られており、TIMサプライヤーに大きな機会が生まれています。
 
データセンターに加え、半導体パッケージングも急成長を遂げている分野です。先端半導体における2.5D/3Dパッケージングへの移行に伴い、パッケージ内部の熱的課題はかつてないほど増大しており、それがTIM1/TIM1.5のイノベーションへとつながっています。
 
IDTechExのレポート「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」では、インジウム箔、液体金属、銀入りゲル、グラフェンシートなど、さまざまなTIM1/TIM1.5を詳細に分析し、それぞれの特性や課題、半導体パッケージング業界の大手プレーヤーの利用状況を評価しています。
 
5G、ADAS、家電製品でのTIM
 
本レポートでは、5G、ADASセンサー、家電製品におけるTIMの包括的な評価とトレンドについても解説しています。自動運転車やロボタクシーの路上走行が始まる中、LiDAR、カメラ、レーダー、ECUなど自動車部品の消費電力も増えており、熱伝導率の高いTIMが求められています。5Gにおいても、将来的なトラフィックの増大に対応できる通信容量と接続性を支えるためには放熱性の向上が必須であることから、同様の流れが起きています。
 
家電業界は、市場が飽和状態にある中でも着実な成長を続けています。ゲーミングスマートフォンの発展に伴い、液体金属などの新材料が特定の家電製品に採用される可能性があるとIDTechExは予測しています。
 
熱伝導性フィラー
 
TIMの熱伝導率の鍵を握る要素の1つが放熱フィラーです。放熱フィラー材料の種類、粒径、分散性は、すべて最終的な熱伝導率と機械的性能を決める大きな要因となります。IDTechExのレポート「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」では、アルミナ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、ZnO、MgO、カーボンナノチューブ、グラフェンフィラーの性能と価格を比較調査しています。
 
 
各種熱伝導性フィラーに関する包括的レビュー。出典:IDTechEx
 
概要
 
「熱伝導材料(TIM) 2026-2036年:技術、市場、予測」では、形態、業界、用途別にTIMを包括的にレビューし、それぞれの長所と短所を評価するとともに、市場動向や成長機会についても取り上げています。

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