二相式液冷-ハイエンドGPUの未来
2025年10月14日
GPUのTDPが1500Wを超える中、二相式D2C冷却の導入が本格化
2025年現在も、単相式D2C(ダイレクト・ツー・チップ)液冷がハイエンドGPU向け熱管理ソリューションの主流であることに変わりはありませんが、TDP(熱設計電力)が増大の一途をたどる中、業界では単相式冷却で対応できる限界を迎えようとしています。二相式D2C冷却は、2027年頃に大規模導入の段階に入ると予想されています。
IDTechExは、チップメーカー、冷却板サプライヤー、システムインテグレーターなど、データセンターのバリューチェーン全域にわたって広範なインタビューを実施しました。正確な時期については意見が分かれるものの、単相式D2CではTDP1500W付近で対応が困難となり始め、最高でも2000Wが上限であるというのが幅広く一致した見解です。
IDTechExによるGPUのTDP推移の分析によると、近い将来、二相式D2C冷却が必要になると示唆されています。こうした傾向やNVIDIAなどの大手チップ開発企業の動きから読み取れる情報に基づき、将来的にGPUは単相式冷却の限界を大きく超えるとIDTechExは予測しています。詳細な予測と分析は、IDTechExの調査レポート「データセンターの熱管理 2026-2036年:技術、市場、機会」でご覧いただけます。

データセンター向けGPUのTDP:過去データと2025年の予測。出典:「データセンターの熱管理 2026-2036年:技術、市場、機会」
D2C冷却の課題:単相式 vs 二相式
二相式液冷への移行は、技術的・商業的観点で、機会と課題の両方をもたらします。
単相式D2C(ダイレクト・ツー・チップ)冷却方式は現在の主流であり、冷却水(通常は水とグリコールの混合液)を使用し、相変化なしに対流によって熱を吸収します。この方式は効果的ではあるものの、次のような技術的課題があります。
- 漏れのリスク:デリケートなIT機器にとって脅威となる。
- 高流量が必要:コンポーネントに機械的ストレスが発生。1000Wのチップを冷却するには約1.5L/分の冷却水流量が必要。
- 浸食や腐食のリスク:大口径クイックディスコネクトも必要なため、システム全体のコストが増加。
- 配管が複雑:特に高密度化したデータセンター環境ではメンテナンスが複雑化。
- CAPEX(設備投資)が高い:一般的に冷却板システム(クイックディスコネクト、マニホールド、ホースを含む)1台当たり200~400ドルが必要。古い施設に導入する場合は特に高額になる。
単相式冷却は、シンプルで成熟した技術ではあるものの、GPUのTDP増大に伴い限界が生じてきます。
一方、二相式D2C冷却では、冷却水の相変化を利用して放熱効率を向上させるため、ワット当たりの冷却コストが低減できる上、低流量(1000Wのチップを冷却する場合は約0.3L/分)であるため機械的ストレスの緩和が図れます。
ただし、二相式システムにも次のような課題があります。
- 環境への懸念:フッ素系冷却剤が漏れ出てエアロゾル化し、安全性や地球温暖化係数(GWP)の問題を引き起こす恐れがある。
- 初期コストが高い:冷却板に高額なCAPEXが必要な上、冷却水のリサイクルと廃棄にも別途費用が生じる。
二相式冷却は効率面で明らかな利点があるものの、環境やコストへの影響を考えると単純な選択ではありません。それでも綿密なシステム設計さえできれば、これらの課題の多くは軽減可能です。IDTechExのレポート「データセンターの熱管理 2026-2036年:技術、市場、機会」では、単相式技術と二相式技術のそれぞれのCAPEXを数値化し、1台当たりのコストを詳細に算出しています。
結論
単相式D2C冷却の方が、よりシンプルで確立された技術ではあるものの、GPUのTDP増大に伴い、技術面とメンテナンス面で増え続ける課題に直面しています。二相式冷却は単相式よりも効率面では優れていますが、環境面やコスト面では高いハードルが立ちはだかります。このように決して単純ではないものの、特に液浸冷却ソリューションと比較して既存のデータセンターへの導入が容易である点から、IDTechExでは二相式冷却板に大きな可能性を見込んでいます。
IDTechExのレポート「データセンターの熱管理 2026-2036年:技術、市場、機会」では、単相・二相式液浸冷却の技術的・商業的障壁について詳細に分析するとともに、広範な一次・二次調査に基づき、今後の冷却技術に関する包括的なロードマップとタイムラインを提供しています。
さらに詳しくは、「データセンターの熱管理 2026-2036年:技術、市場、機会」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。 IDTechExの熱管理に関連するレポートは、こちらでご覧いただけます。
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