なぜ6Gが必要なのか、課題は何か?
2023年3月3日
Dr Yu-Han Chang
6Gは、旧世代と比較して、高速(ピークトラフィックレートがTbpsレベル)、低遅延(マイクロ秒レベル)、高いネットワーク信頼度(99.99999%)など、通信機能の大幅な向上を実現することが期待されています。
6Gには多くの期待が寄せられ、下図が示すように、重要な企業や国々がすでに6G研究に着手している事実にもかかわらず、6Gが近い将来、日常生活に登場することはなさそうです。問題はテラヘルツ技術だけでなく、6G導入を牽引する用途を見いだすことにもあります。

Key differences of 6G. 出典: IDTechEx - 『6G市場 2023-2043年: 技術、トレンド、予測、有力企業』
テラヘルツ技術の課題
6Gは、100GHzを超える周波数帯を利用する予定であり、最終的にはテラヘルツに至るだろうと考えられています。このような高周波数利用により大きな利点が得られます。つまり、極めて広い帯域幅の使用が可能になり、わずかマイクロ秒レベルの遅延でテラビット毎秒 (Tbps)のピークトラフィックレートが実現するということです。しかしながら、このような高周波数帯の利用にはいくつかの制約があります。
テラヘルツ波は大気中での減衰が大きく、伝送距離が制限され、障害物に遮られやすいことが、今後の大きな課題のひとつです。物理法則を無視することはできないため、高周波通信のためのデバイスを作る上で最も重要な要素は、アンテナアレイの一部であっても、妥当な伝送距離を達成するのに十分なエネルギーを供給することです。
適切な半導体を選定して接続距離を広げることが最も重要となります。以下に記載するのは、100GHz帯以上で動作する半導体技術の選択肢です。CMOSは、150GHz未満で動作する機器(特に短距離通信が必要な機器)をカバーすることが可能です(長距離の場合は、やはりパワーアンプにSiGe(シリコンゲルマニウム)やIII-V族といったその他半導体を使用する必要があるかもしれません)。しかしながら、200GHzを超える周波数に関しては、ロジック用のCMOSと、低ノイズアンプおよびパワーアンプ用のIII-V族トランジスタを組み合わせたものが最善の選択となるでしょう。SiGe BiCMOS技術は、性能や低コスト、200~500GHzの周波数による組み込みやすさの点で、今のところ最善な妥協案となっています。InP(リン化インジウム)は究極のテラヘルツ技術である可能性があり、コストがそれほど重要ではない用途に適しているかもしれません。

Overview of semiconductor technology choice for THz RF.出典: IDTechEx - 『6G市場 2023-2043年: 技術、トレンド、予測、有力企業』
半導体技術を除き、ほかに研究開発の盛んな分野は、重大な伝送損失を防ぐために誘電率と誘電正接の低い超低損失材料を探し出すことや、RFコンポーネントとアンテナを緊密に一体化させる新たなパッケージング方法を開発すること、機器の小型化と複雑化が進むなかで電力と熱の問題に対処することの必要性などが挙げられます。IDTechExの6G調査レポート『6G市場 2023-2043年: 技術、トレンド、予測、有力企業』で、詳細を解説しています。
6G導入を牽引する可能性のある用途
新しい技術の普及には、鍵となるビジネスユースケースが不可欠です。通信事業者はミリ波帯5Gが提供する優れた性能を謳っていますが、5G商用化から数年が経過しているにもかかわらず、ミリ波市場はまだ立ち上がっていないのが現状です。5G構築の大半はサブ6GHz帯5Gが使われ続けています。その理由は? IDTechExの主要なインタビュー調査によると、ほとんどの人が挙げる理由は、ミリ波でしか実現できず、他の技術では実現できないアプリケーションが存在しないことです。6Gについても同じように、なぜ必要なのか、という疑問が出てくるでしょう。
消費者の視点に立てば、Tbpsのデータリンクで遅延がマイクロ秒レベルになったとしても定額料金が上がるのであれば、そのモバイル機器に搭載されるアプリが現在とほぼ同じであればおそらく魅力を感じないでしょう。5Gと6Gによるメタバース実現を巡る過熱ぶりについてはいろいろと耳にしますが、普及を牽引する可能性のある実際のユースケースはまだ不十分です。ただ忘れてならないのは、6Gがセンシング、イメージング、正確な測位など独自の機能を備えたものになるということです。これらの特性により、その他のビジネスユースケースが開拓され、モバイル通信以外の分野でも6Gが使用できるようになるため、さまざまな業界で高度なデジタル化と自動化がさらに進む可能性があります。例えば、6Gネットワークを使用してモバイルロボットの正確な知覚とセンチメートルレベルの位置決めを実現し、モバイルロボットを遠隔操作して様々な物体をピックアップして運ぶ能力を実証することができます。同時にこの伝送リンクは、モバイルロボットとその操作者の間でリアルタイムの高解像度映像を高速無線伝送するため、共感覚を組み込むことが可能となります。また、周波数帯が275Ghzを超えるところまで広がるなか、取り挙げる価値のある興味深いユースケースには、テラヘルツ接続を無線リンクとして使用してデータセンターの光ファイバーを置き換えることや、再構成可能なルートを実現すること、サーバー/ルーターラックの小型化やコストの大幅な削減を実現すること、デバイス内に1つまたは複数の2地点間高速通信リンクを作成し、ルーティングの高速化を実現することなどがあります。
まとめとして、IDTechExが考える6Gの有力なビジネスケースは、今のところB2Bのユースケースが中心です。しかし、これは消費者向け通信市場では6Gが重要な位置を占めていないと示唆している訳ではなく、むしろ消費者市場での普及を牽引するには、説得力のあるユースケースの実証が必要であると考えています。
6Gに関する状況を詳しく理解するために、IDTechExの調査レポート『6G市場 2023-2043年: 技術、トレンド、予測、有力企業』をご活用ください。
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