In-Mold Electronics: design, material and process innovation

インモールドエレクトロニクス:デザイン、材料、プロセス開発

インモールドエレクトロニクスは3次元形状そのものが電気回路やその機能を実現する要素となっている構造エレクトロニクスの大量生産を実現する可能性を秘めています。また、重量や大きさを節約したこれまでにないエレガントなデザインも可能になるでしょう。

Dr Khasha Ghaffarzadeh
インモールドエレクトロニクス:デザイン、材料、プロセス開発
インモールドエレクトロニクスは3次元形状そのものが電気回路やその機能を実現する要素となっている構造エレクトロニクスの大量生産を実現する可能性を秘めています。また、重量や大きさを節約したこれまでにないエレガントなデザインも可能になるでしょう。
 
インモールドエレクトロニクスは新しいプロセスや技術というわけではありません。実際、さまざまな意味においてそれは既に確立されているIMD(インモールドデコレーション)の進化形であり、モールディング(やその他の3次元成型技術)をグラフィックプリンティングと融合したものです。しかしながらIMDからIMEへの移行は単純なものではなく、特に商業化には課題があります。実際、さまざまな努力や見切り発進にもかかわらず、IMEが確実な事業として立ち上がるまでに時間がかかったのはこれが理由です。
 
しかし状況は変化してきています。実際、IMEプロダクトが少量ながら市場に出てきており、より数の多い生産用途に使用されるようになる日も遠くはありません。IDTechExの調査レポート 「インモールドエレクトロニクス 2019年-2029年 : テクノロジー、市場予測、プレイヤー」では、この市場は2024年までに2億5000万ドルを超えると見込んでいます。このレポートではIMEに加え成形回路部品(MID)やエアロゾルデポジションなど幾つか競合する技術の材料、プロセス、製品・試作品、用途、市場に関する詳しい評価とともに、アプリケーション別の10年間の市場予測とこの新たに出現しつつあるバリューチェーンの主要企業に関する概要についても取り上げます。
 
この記事は上述の調査レポートからIMEの商品化を支える重要なイノベーショントレンドを概観するものです。ここでは材料、プロセスのほか設計に関するトレンドについても考察することで、この有望な技術に関するより優れた知見を読者に提供します。
 
IMEの商品化を可能にするにはすべてが変化しなくてはなりません。伸縮や3次元形状の形成が可能など新しい要件をクリアできる材料の開発が必須です。2次元形状への印刷、3次元形状の形成、高剛性部品の移載を組み合わせて実現できる新しいプロセスを開発しなくてはなりません。また材料、プロセスの特性、さらには市場ニーズに基づいた新しい設計手順や製品コンセプトも開発する必要があります。このようにさまざまなレベルで大きく変化する必要があったことが市場投入のスケジュールが遅れる原因となってきました。
材料のトレンド
IMEの機能性材料は新しい要件を満たさなくてはなりません。2次元に印刷されたシートが3次元形状を形成する際に大きく伸びるという1回限りの事象に耐える必要があるのです。これは単なるグラフィック印刷とは違い、機能性インクでは達成することがはるかに困難です。例えば導電性インクは伸びることで伝導経路が分断されてしまう恐れがあります。
 
必要とされる伸縮の程度が決まっているわけではなく、一般的により伸びやすい方が理想的です。おおざっぱにいって伸縮率20%は最低レベルで多くの用途で60%以上の伸縮率が望まれています。材料の伸縮率が高くなるとプロセス開発が容易になり、設計の自由度も上がるため供給業者は既に材料の伸縮率による差別化を模索し始めています。
 
機能性材料には厳しい実使用条件下での信頼性も求められます。これは自動車やその類似用途で特に重要です。ところが驚くことに開発が始まったころにはこの点は無視されることがしばしばあり、実際有名なIME製品の故障やリコールは信頼性の無さが原因でした。使用している材料の性質が高湿、高温下の試験で大きく変化することがよくあり、製品の設計ではこれを考慮しなくてはなりません。
 
またIMEは材料1層だけでできているわけではなく、通常の画像印刷用のインクや導電性インク、誘電体、透明導電性インク、カーボン保護膜などを積層印刷することで必要な特性を発揮します。
 
これまでで最もよく研究されている機能性材料は導電性インクです。(導電性インクについてはこちらwww.IDTechEx.com/inksを参照ください) 今日、世界中にIME用の導電性インクを提供する複数のサプライヤがあります。金属(ほとんどの場合、銀です)が充填された導電性インクは、積層される材料の中で最も高価であり、しかも導電性が延伸などで最も敏感に変化することを考えるとこれはある意味当然のことです。
 
他にもこのプロセスで重要な材料があります。特に低温で印刷可能で伸縮性を示す導電性の粘着剤も最近、製品の数が増えています。一般的にいってすべての機能性材料は互換性も持ち合わせていなくてはなりません。これは特に形成プロセスにおいて重要で最終的な特性に影響を与えます。実際、材料を堆積する順番が問題になることもあります。これは開発により解決しなくてはならない課題ですが同時にIME材料一式をセットで開発販売するチャンスでもあります。
 
基板にも開発、供給の機会が存在します。これまでは成型性の良さからほとんどがポリカーボネート基板を利用してきましたが、多くの企業が特殊なPETなどの代替材料の開発を進めています。これは注意してみていく必要があります。モールド材料も重要になるでしょう。特にモールディング条件を緩和できるモールド用の新材料が開発されれば、プロセスで使用される他の材料に求められる性能が軽減されます。
 
材料の要件、課題、および動向についての詳細は当社のレポート 「インモールドエレクトロニクス 2019年-2029年 : テクノロジー、市場予測、プレイヤー」をご覧ください。最新の動向と開発状況をまとめています。
プロセスのトレンド、課題
プロセスは重要です。またそれは単純な話ではありません。複数の機能を持った材料や通常の画像印刷用材料をPCなど2次元の成型可能な基板の上に印刷、乾燥/硬化する工程がプロセスには含まれます。加熱した上で熱や真空モールディングによって2次元形状のシートを3次元形状に変えるプロセスもあります。その後高温で外部被覆も行わなくてはなりません。多くの場合、量産のためにプロセスを簡素化したいという誘惑にかられますが、これまでの経験ではこれを行うのはかなりの危険が伴います。
 
高剛性部品の吸着・搬送も難易度の高い工程です。成型後に高剛性部品を吸着・移載するためには3次元空間での移載が可能な装置が必要になります。また吸着・移載装置だけではなく接着剤の供給にも専用ツールが必要となり、ほぼ間違いなくプロセスの処理速度が遅くなります。この高剛性部品の吸着・移載を成形前の2次元形状のシートに行うこともできます。しかしながらこれには専用の接着剤に加え、製品やプロセスを注意深く設計して、すべての成形ステップを終了した後にも高剛性部品が把持された状態を保てることが必要です。
 
プロセス開発は通常複雑であり、材料やすべてのプロセスステップの深い知見が必要です。歩留まりは常に付きまとう特別な課題です。これは電気部品が内部に埋め込まれているか、構造的と一体になっているため欠陥を修復することができないからです。そのため欠陥があると成形したデバイス全体が不良品となってしまい、コスト的に大きな損失となってしまうのです。通常、学習曲線の傾きは大きくなります。そこで、開発時間を短くし技術的な参入障壁を低くするためには、ノウハウや専門知識を集積するセンターのような存在が必要になります。このことはリスクを取る体力やキャッシュフローに余裕のない従来型のメンブレンスイッチやその他の機能性プリンターのメーカーの多くが業界が成熟してコストが低下するまでIME事業を推進するための投資を手控えざるを得なかった背景でもあります。IMEの技術的な成熟度とおそらくはモジュール化が進んでいく中で、こうした進化はますます避けられないものとなりそのペースも加速していくでしょう。
 
IMEプロセスやMID、アエロゾルなど幾つかの競合プロセスに関してさらに詳しくは当社のレポート 「インモールドエレクトロニクス 2019年-2029年 : テクノロジー、市場予測、プレイヤー」をご覧ください。技術的な詳細、開発状況やフェーズ、目標としている市場、各アプローチの優位性、主なプレイヤーなどに関する情報が掲載されています。
設計のトレンド、課題
材料やプロセスの特性に関する深い知見が必要なためIME製品は設計も単純ではありません。部品の配置や機能ライブラリの完備したソフトウェアパッケージは確立しておらず、設計プロセスをスムーズに進めることはまだできません。これは例えば標準のPCBなどで見られる設計プロセスとは好対照です。市場の要求も明確に確立されてはおらず、絞り込まれてもいません。これは長年の開発期間にもかかわらず、業界がいまだに試作品の開発や認定プロセスの評価を行う試験フェーズにとどまっているからです。製品や試作品は今でも特注であり、標準設計にはなっていません。
 
これらのすべてが製品開発のプロセスを複雑化させ、市場投入までの時間を長期化させ、ユーザーやメーカーにとっての参入障壁となっているのです。しかし業界も対応を始めており、数社がまさにこのニーズを満たそうとポジショニングを取り始めており、こうした動きが商品化のスピードアップに貢献しつつあります。
 
この記事で取り上げたようにさまざまな要因が迅速な商品化を阻害してきました。IMEは見かけは簡単そうですが実際には複雑で、材料やプロセス、設計、製品コンセプトの大幅な変更が必要になります。ただし業界も習熟度を高め、製品提供に関して大きな進歩を遂げてきています。少量生産品は既に市場に出ており商用生産用途品も最終認定まであと少しです。実際、当社ではこの市場が今後10年以内に10億ドルを超えると予測しています。
 
この新しい分野の技術や商業化をさらに詳しくは知るためには当社のレポート 「インモールドエレクトロニクス 2019年-2029年 : テクノロジー、市場予測、プレイヤー」をご覧ください。
Top image: Pixabay
 
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