スマートラベルとウェアラブル:フレキシブルバッテリーが見いだすニッチ市場

スマートラベルとウェアラブル:フレキシブルバッテリーが見いだすニッチ市場
フレキシブルバッテリー技術の考案以来、サプライヤー各社は自社製品のための強力な用途市場を模索してきました。ここ5年でニッチ市場がようやく確立し始めてきましたが、バッテリー技術によって具体的なユースケースは異なります。フレキシブルバッテリーの初期の実用例には、オークリッジ国立研究所が開発した電解質であるLiPONを使用した小出力の薄膜型全固体電池があります。ここ10年では、亜鉛炭素電池、銀亜鉛電池、一次リチウム電池などのその他のフレキシブルバッテリーが準実用化してきました。バルク型全固体電池技術や先進的リチウムイオン技術も今や商用化の目前となり、その機会が模索されています。IDTechExの最新調査レポート『フレキシブルバッテリー市場 2025-2035年:技術、予測、有力企業』は、フレキシブル電池の用途と技術に関する詳細な分析、市場評価、10年予測を提供しています。
 
6つの主要フレキシブルバッテリーの差別化。 Source: IDTechEx
 
フレキシブルバッテリー技術は大きく分けて低容量と高容量の2つに分類できます。低用量には、亜鉛炭素電池、銀亜鉛電池、一次リチウム電池、薄膜型全固体電池といった薄膜技術やマイクロ電池技術があります。このうち、亜鉛炭素電池、銀亜鉛電池、薄膜型全固体電池には充電式と非充電式がありますが、一次リチウム電池は非充電式のみです。フレキシブルバッテリーの製造方法としては、亜鉛系電池では印刷が最も一般的な手法であるのに対し、リチウム系電池ではスパッタリングなどの別の成膜法が用いられます。これら製造方法は、バッテリーケミストリー(亜鉛炭素電池、銀亜鉛電池、一次リチウム電池)か電解質(薄膜型全固体電池)のいずれかによって決まります。どれもサイズと容量の点でスケールアップにコストがかかり、面エネルギー密度も限られているため、小出力用途に最も適しています。
 
大容量には、先進的リチウムイオン技術やバルク型固体電池技術などがあり、フレキシブルバッテリー技術としての成熟度はこちらの方が低くなっています。どちらも充電式リチウムイオン技術をベースとしたものです。ここでの先進的リチウムイオンとは、従来のリチウムイオンセルとバッテリーケミストリーが似ている、イノベーションによってフレキシビリティが向上した(セルのパッケージングや電解質など)バッテリー構造をいいます。液体電解質電池も半固体ポリマー電解質電池もこのカテゴリーに分類できます。バルク型全固体電池とは、固体電解質を使用した薄型でないバッテリーのことをいいますが、100%固体である必要はありません。固体電解質の例としてはセラミックや硫化物などが挙げられます。
フレキシブルバッテリーの利点は自明です。丸めたり、伸ばしたり、曲げたりしても機能性を損なわないバッテリーは、ユースケースが適切であれば大きな利点なります。しかしながらフレキシブルバッテリーは、コイン電池などの格段に安価な既存技術と競合しています。コイン電池は0.50ドル/Wh未満であることもありますが、フレキシブルバッテリーは最廉価品で約3ドル/Whです。技術によっては1Wh当たり数十ドルするものもあります。ほとんどのユースケースでは、フレキシブルバッテリーの価格が高すぎるため、使用するに値しません。代わりにサプライヤー各社は、極めて高いフレキシビリティを必要とするニッチ市場で、価格に比較的左右されにくく、ハイエンドで、フォームファクタが決まっている用途を見いだす必要がありました。
 
スマートラベルとウェアラブルの要件がさまざまなフレキシブルバッテリー技術の使用を広げる。 Source: IDTechEx
 
スマートラベルは低容量バッテリーにとって一番のニッチ市場となっています。印刷式であることが多い薄型バッテリーは、品質管理や物流で使用されるラベル、タグ、センサーに組み込まれています。例えば、温度センサーや化学センサーを搭載したRFIDタグは農産物のモニタリングに使用されています。RFIDタグは、適切な温度管理を実現し、これまで輸送中に損傷していた農産物の鮮度を保ち、廃棄作物を削減するという大きな利点があります。他にも、貨物の位置と状態を伝達するスマートラベルもあります。すべてのスマートラベルでフレキシブルバッテリーが使用されるわけではありませんが、この用途をターゲットとするフレキシブルバッテリーメーカーが増えてきています。これらの用途では、薄さがフレキシブルバッテリーの普及を後押しする大きな要因となります。薄いラベルには薄いバッテリーが必要です。そして、それがたまたまフレキシブルになっているのです。フレキシビリティは曲面や凹凸のあるラベルでは利点となるものの、必須要件にはならないことがほとんどです。ZinergyとCCL Design(インプリントエナジー買収後)の2社は、このニッチ市場をターゲットとするフレキシブルバッテリー参入企業です。スマートラベル・RFIDタグ用フレキシブルバッテリー市場は、2025年には1430万ドル規模になるとされており、今後10年間は23.9%の年平均成長率で成長すると予想されています。
 
一方、大容量バッテリーを供給する企業では、ウェアラブル用途に注力するところが増加しています。ウェアラブルには、ヒアラブルやスマートウォッチからXRヘッドセットやE-テキスタイルまで、さまざまな製品があります。家電製品とは異なり、身に着ける製品は装着時の快適性が必須であるため、状況に応じたフォームファクタが必要なことが多くあります。そのため、これまでウェアラブル関連企業は、小型化の手段として湾曲したバッテリーやフレキシブルなバッテリーに関心を示してきましたが、既存のフレキシブルバッテリーはウェアラブル製品のエネルギー密度と寿命の要件を満たすことができませんでした。フレキシブルバッテリーの供給がウェアラブルの需要と一致するようになったのはつい最近のことです。
 
先進的リチウムイオン電池とフレキシブルなバルク型全固体電池は開発段階から準実用化段階へと移行し始め、エネルギー密度と寿命の要件を満たしつつもフレキシブルなフォームファクタを保つことができるエネルギー貯蔵ソリューションがようやく実現しようとしています。どちらの技術サプライヤーも、ウェアラブル(特に手首に装着するウェアラブルや電子ヘッドセット)の機会を狙っています。ローエンドで量産されるヒアラブルや手首に装着するウェアラブルは、ウェアラブル市場全体で最も大きな割合を占めていますが、ここにはフレキシブルバッテリーの機会はなく、フレキシブルバッテリーの高いコストは低コストの量産製品に見合いません。しかし、ウェアラブル市場のハイエンド帯に大きな機会があることに変わりはありません。例えば、LiBEST(韓国)は、製品価格はあまり重視されず、小型設計が好まれる分野であるXRヘッドセットやハイエンドヒアラブル向けの先進的リチウムイオン電池に2024年から注力しています。フレキシブルバッテリー(皮膚パッチを含む)のウェアラブル市場は、2025年には全体で4330万ドル規模になるとされており、今後10年間は21.6%の年平均成長率で成長すると予想されています。
 
リチウムイオン電池の世界市場規模が500億米ドルを超えるのに対し、フレキシブル電池市場全体の規模は2025年に7,170万米ドルと依然として小さいでしょう。IDTechExの最新レポート『フレキシブルバッテリー市場 2025-2035年:技術、予測、有力企業』では、今後10年間のフレキシブルバッテリープレーヤーのビジネスチャンスと成長について分析しています。
 
フレキシブル電池市場全体の最新状況の把握に、ぜひ、IDTechExの最新レポート『フレキシブルバッテリー市場 2025-2035年:技術、予測、有力企業』をご活用ください。
 
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