フォトニック集積回路市場:2035年までに540億ドル超の見込み

Sam Dale
The photonic integrated circuit market is expected to increase in size by almost 9 times in the next 10 years
フォトニック集積回路(PIC)は、電子集積回路業界で用いられる技術で製造される微小な光学システムです。スナックバーほどの大きさのパッケージで数十億ビットの情報の送受信を可能にする複雑な光学設計から、周囲の空気中のさまざまな化合物や分子を検出できる人工鼻まで、あらゆるものがPICによって可能となります。
 
AIデータセンター内の高速通信におけるPICの重要性から、機械学習モデルをこれまでになく大規模化するPIC対応トランシーバーの需要が急増しつつあります。IDTechExはAIデータセンターへの需要の急増を見込み、調査レポート「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」で、PIC市場が2035年には540億ドルという驚異的な規模に達すると予測しています。
 
これまでCMOSチップ生産に投入していた数十億ドルもの資金をPICに向けることで、ムーアの法則を上回るプロセス微細化の扉が開かれようとしています。しかし、材料の制約、集積の複雑さ、コスト管理など、PIC市場には今なお大きな課題が残っています。PICの設計と製造にかかる初期投資を相殺するには大量の需要が必要であり、生産リードタイムが数か月に及ぶ可能性もあります。IDTechExのPICに関する調査レポートでは、PIC市場の徹底調査の結果、近い将来にPIC最大の需要源となる新領域として、AI向けPICトランシーバーを紹介しています。
 
フォトニック集積回路市場は今後10年間で約9倍に拡大すると予測。出典:IDTechEx
 
将来のPIC材料は?
 
将来のPIC材料は幅広い種類があります。現在の市場では、光の伝搬にシリコンとシリカをベースにしたPICが多く使用されています。しかし、シリコンは間接遷移型半導体であるため、光源や光検出器として実用的ではありません。そのため、シリコンを光源や光検出器に使用する際は、III-V族材料と組み合わせるのが一般的です。巨大な既存の集積回路製造業界を活用したり、成熟したプロセスノードを広く利用したりすることで、シリコンが市場の主流である状況は今後も続くとされています。
 
一方で、適度なポッケルス効果と少ない材料ロスを特性とする薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)が、量子システムや将来的に高性能化が進むであろうトランシーバーなど、高性能変調器を必要とする用途における手強い競合品として浮上しています。モノリシックInP(リン化インジウム)も、光の検出と放出が可能なことから依然として大きな役割を担っています。チタン酸バリウム(BTO)や希土類金属などの革新的な材料も、量子コンピューティングをはじめとする最先端用途でのポテンシャルについて研究が進められています。
 
AIはシリコンフォトニクスとPICの需要をどう変えるのか
 
人工知能(AI)の台頭により、AIアクセラレータやデータセンターで求められる膨大なデータ転送レートに対応できる高性能トランシーバーに空前の需要が沸き起こっています。シリコンフォトニクスとPICは、1.6Tbps以上の速度でのデータ伝送が可能なことから、この変革の最先端に立っています。NVIDIAのH200搭載の最新サーバーユニットがGPU1台当たり約2.5個の800Gトランシーバーを必要とする(IDTechEx調べ)ことからも分かるように、AI分野では効率的で高帯域幅の通信環境を整備することが喫緊の課題となっており、それに伴いシリコンフォトニクスとPICがAI主導の未来に不可欠な要素と位置付けられているのです。AIアクセラレータの高性能化が進むほど、トランシーバーにも高性能化が求められるため、AIがPICトランシーバー開発の最大の推進要因となり、2026年までには伝送速度3.2Tbpsを実現するトランシーバーが登場すると見られています。
 
将来の用途は?
 
シリコンフォトニクスやPICのその他の用途は、高帯域幅のチップ間インターコネクトから先端パッケージング、CPOにまで多岐にわたっており、こうした多様な技術により次世代コンピューティングへの道が開かれようとしています。
 
フォトニックエンジンとフォトニックアクセラレータ : マッハツェンダー干渉計などのフォトニクス部品を使用し、これら部品を電子光学インターコネクト経由で制御することで、高性能プロセッサやプログラマブルPICデバイスの設計・製造が可能となり、電子アクセラレータのみを使用する場合よりも高い性能を得られるようになります。
 
PIC搭載センサー : 窒化ケイ素などのPIC材料は、ガスセンサーから「人工鼻」まで、多種多様なセンサー領域で使用されています。医療用センサー業界では、微小な光学素子のPICデバイスへの組み込みに期待が持たれており、成功すればポイントオブケア診断やウェアラブルデバイスに応用できるかもしれません。
 
PICを搭載するFMCW方式のLiDARは、ドローンや自動運転車に利用されることで自動車業界や農産業に変革をもたらすポテンシャルを秘めています。
 
量子システム : イオントラップ方式や光子方式の量子コンピューティングに投資を行っている企業は、より安定性の高いスケーラブルな量子システムをPICに期待しています。その課題は量子計算に必要な光子の精密な制御を実現することにあります。
 
AI・データ通信向けトランシーバーの需要急増が追い風となり、シリコンフォトニクス・PIC市場は力強い成長を遂げつつあります。インテルとジェイビル、コヒレント、インフィネラなどの業界の有力企業は、自社のトランシーバーにPICを積極的に採用しています。中国を拠点とするトランシーバーメーカーであるイノライトは、2023年後半に最新型トランシーバーで1.6Tbpsという伝送速度を叩き出しました。InPウエハー製造の自社工場を持つコヒレントも、1.6T以上の用途向けにさらに高性能なトランシーバーの開発を進めています。トランシーバー事業をジェイビルに譲渡したインテルシリコンフォトニクスの発表によれば、同社の2016年以降のPIC出荷量は800万個を超えたということです。これはこの技術の成熟度を表していることに他なりません。IDTechExは、PIC技術が今後も高性能トランシーバー市場を主導し、現代の技術的状況での重要なコンポーネントとしての地位をさらに強固なものにすると予測しています。
 
調査レポートの内容は?
 
IDTechExの調査レポート「シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2025-2035年:技術、市場、予測」は、シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路における最新の技術革新、主要技術動向、バリューチェーン全体の分析、主要プレイヤー分析、詳細な市場予測を掲載しています。
 
調査レポートは以下の情報を提供します:
  • PIC搭載高性能トランシーバー市場の有力企業分析
  • CPO(コ・パッケージド・オプティクス)概要とキーコンセプト
  • 量子システム用フォトニック集積回路分析
  • フォトニクス材料のベンチマークと比較(材料別産業分析)。薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)やチタン酸バリウム(BTO)などの先端材料分析
  • フォトニック集積回路の基礎知識とキーコンセプト(重要部品や基本原理など)
  • NVIDIA推奨サーバーアーキテクチャが多数のトランシーバーを要する背景に注目し、AIがPIC搭載トランシーバー需要をどう変化させているか分析
  • PIC製造技術概要
  • インターコネクト、LiDAR、バイオセンサー、ガスセンサーなど、将来のPIC用途を考察
 
本調査レポートは広範な調査と各業界専門家へのインタビューに基づいており、フォトニック集積回路の今後に関心を持つすべての方に有益な分析を提供します。直接のインタビューを基にした32社のカンパニープロファイルやSPIE Photonex 2024やSPIE Photonics West 2024などのイベントのサマリーも掲載しています。
 
市場予測:
  • フォトニック集積回路市場全体の10年間予測
  • AI、データセンター、HPC(データ通信)用PICトランシーバーの10年間出荷台数予測
  • データ通信用PICトランシーバーの10年間コスト予測(Gbps当たり)
  • データ通信用PICトランシーバー市場の10年間予測
  • AIアクセラレータの10年間出荷台数予測
  • 5G用PICトランシーバー市場の10年間予測
  • 5G用PICトランシーバーの10年間出荷台数予測
  • 量子PIC市場の10年間予測
  • PIC搭載LiDAR市場の10年間予測
  • PIC搭載センサー市場の10年間予測

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