プリント基板(PCB)向け先進リサイクル可能材料
2025年4月9日
Thomas Bithell
従来のプリント基板(PCB)の製造工程にはムダが多く、環境に悪影響を与え、大量のエネルギーも消費します。この問題は、新たなリサイクル可能材料や技術を導入することで軽減することができ、エレクトロニクス製造に革命をもたらす可能性があります。
IDTechExは、「持続可能なエレクトロニクス・半導体製造 2025-2035年:有力企業、市場、予測」の発行のための調査インタビューから、最近の研究と試験開発により、リサイクル可能な材料の多くが本格的な商用化に近づく一方、コストと性能がまだ障壁であると見ています。

従来型PCBの製造工程図。廃棄物と排出物の発生源が複数存在。出典:IDTechEx
新しい基板
PCB用基板材料として長らく主流を占めているのはFR4に分類されるガラスエポキシ樹脂積層板です。FR4は軽量かつ強度に優れ、そのうえ安価ではありますが、リサイクル不可であること、使用済みPCBの焼却時に有毒なハロゲン系難燃剤が大気中に放出されるなどの懸念があり、FR4に取って代わる基板材料が求められています。例えば、生物由来材料や生分解性材料、あるいはリサイクル可能な材料などが挙げられるでしょう。
有望な新材料の1つが、JivaのSoluboard®という亜麻と黄麻の天然繊維から作られた生分解性基板です。基板を90°Cのお湯に浸すと溶けるため、使用済み基板から電子部品のリサイクルや貴金属の回収が可能となります。マイクロソフトやインフィニオン、ジャガーなどの企業では、この基板が世界全体の電子廃棄物増加への対処法になると考え、試験を行っています。
ポリ乳酸もまた持続可能性が高く、フレキシブル基板に機会が見出せる材料です。ポリ乳酸は有機性産業廃棄物から生産できる生分解性化学製品です。従来のフレキシブル基板はプラスチックのポリイミドを材料としており、持続可能な方法で調達できる代替品はまだ見つかっていませんが、ポリ乳酸がその解決策となる可能性があります。現在は試作検証段階にあり、VTTなどの企業や研究機関が検証を行っています。ポリ乳酸は最大140°Cの耐熱性を持ち、ポリイミドやFR4よりも耐熱温度は低いものの、銀インク焼結などの製造工程にも対応可能です。
持続可能な「はんだ付け」
Mayerhofer Electronikは、エレクトロニクス製造工程のはんだ付けに初めて錫の再生材を使用し、その実証に成功しました。世界全体で見ると、18万トンの錫のバージン材が電子機器に使用されています。その大半は中国やインドネシア、ミャンマーの鉱山から産出されており、環境に深刻な影響を与えています。X線回折でも確認されていますが、錫の再生材の品質はバージン材と変わりありません。錫の再生材は金属くずと金属酸化物を製錬して作られます。現在のところ、錫は世界全体で約30%しかリサイクルされていないため、はんだ付け工程における循環型経済の推進力となり得る大きなポテンシャルを秘めています。
強制力のある規制法が推進要因となって金属リサイクルの拡大が進むことが期待されており、銅の再生材も電子機器に導入される可能性があります。これまでで最も厳しい規制が設けられているのがドイツです。2024年に発表された国家循環経済戦略(NKWS)では、1人当たりの原材料消費量を2045年までに半減させることを目指しています。また、全産業にわたる再生材比率の倍増、都市ごみの10%削減も目標としています。アップルは2035年までに全製品での錫の再生材使用を進めるとコミットしています。他の企業もこれに追随したり、あるいはより早い段階で錫の再生材を導入することも十分考えられます。
銅廃棄物とエッチング液の回収
PCBでは銅がムダの多い使われ方をしています。基板に銅箔を張り付けた後、穴を開け、エッチングによって不要な銅を除去して回路パターンを形成しますが、エッチングには塩化鉄(III)や塩化銅(II)などのエッチング液が大量に必要です。多くの場合、最初に基板に張り付けられた銅の約70%が除去されます。
この銅のムダを削減する方法の1つに積層造形技術の利用が挙げられます。この技術であれば必要な箇所だけに銅を塗布することが可能になるからです。ただし、製造技術の変更には投資が必要となることから、技術の導入はあまり進んでいません。製造技術を変更せずに済む方法は、エッチング液再生装置を導入しエッチングによって積層板から除去された銅とエッチング液の両方を回収するというものです。銅の再生材は電子機器メーカーにとってさらなる収益源となる可能性があります。こうしたエッチング液再生装置は販売開始からすでに10年以上経過しており、資金回収期間はおおよそ6~18カ月であることが判明しています。再生装置には、塩素ガスを酸化剤として使用する装置と、(エネルギー消費量の大きい)電気分解法による装置の2種類があり、いずれの種類もエッチング液の延命が可能です。塩化鉄(III)の場合、寿命はおおよそ3倍に延び、塩酸の消費量も約95%削減できます。
持続可能なエレクトロニクス製造に関するさらなる分析
リサイクルの増加により材料廃棄物を大幅に削減できる可能性があります。また、リサイクル可能な材料や生分解性材料は、従来使用されてきた材料よりも環境への悪影響が少ない傾向にあります。しかし、リサイクル可能材料の使用を増やすことは、エレクトロニクス製造の持続可能性を向上させる方法の一つに過ぎません。
IDTechExの調査レポート 「持続可能なエレクトロニクス・半導体製造 2025-2035年:有力企業、市場、予測」では、PCBと半導体製造のバリューチェーンにおける、持続可能なエレクトロニクス製造技術のさらなる分析を提供しています。
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