2026年全固体電池:ハイプから適用へ

2026年全固体電池:ハイプから適用へ
次世代型バッテリー戦略の核心要素として、全固体電池(SSB)の開発が浮上
 
全固体電池(SSB)業界は、先進技術の進展と多様な用途での需要の高まりによって変革を遂げています。安全性とエネルギー密度に飛躍的な進歩をもたらすSSBは、2036年までに市場規模が100億ドルに達すると予測されています。IDTechExの調査レポート「全固体電池 2026-2036年:技術、予測、有力企業」では、このダイナミックな業界を包括的に分析し、最先端技術、市場動向、製造上の課題、そして全固体電池を取り巻くグローバルなエコシステムの相互作用を探っています。
 
高まり続ける固体電池への注目度
 
2025年、SSBはラボでのパイロット段階から公道での実証段階にまで逡巡なく移行してきました。メルセデス・ベンツは軽微な改造を施したファクトリアル製リチウム金属セルをEQSに搭載し、シュトゥットガルトからマルメまでの1205kmを1回の充電による走行に成功し、現実世界での実用性と2020年代後半の量産への道筋を明確に示しました。クアンタムスケープとフォルクスワーゲン傘下のパワーコは、IAAモビリティにおいてドゥカティ製オートバイの動力源となる固体セルを披露するとともに、製造規模の加速的拡大を図るべく、高い製造効率を誇る自社のセパレータ製造プロセス「コブラ」を製造ラインに統合したことを紹介しました。BMWはソリッド・パワー製硫化物系全固体電池パックを搭載したi7の路上走行試験を開始しています。これは高速道路走行が可能なプロトタイプに自動車メーカーが独自でバッテリーの搭載に成功したという明確なマイルストーンとなっています。
 
SKオンがASSBの商用化タイムラインを2029年に前倒しにしたり、ファラシス・エナジーが0.2GWhのパイロット生産ラインで2025年末までに小ロットのEV用全固体電池を供給すると発表したりと、アジア勢も好ペースを維持しています。CATLも20Ahの固体セルの試作・検証を開始しており、少量生産を経て2020年代後半に増産へ移行することを目指しています。
 
欧州では、プロロジウムによるダンケルクのギガファクトリー建設計画に対する環境許可と建設許可が下りたことで、生産施設のロードマップが固まりつつあります。それと同時に、欧州での量産計画とグローバル規模での協業のロードマップが浮かび上がってきました。
 
日本のエコシステムも進化しています。パナソニックは産業用ボタン形全固体電池の開発を発表し日産は2029年初めのEV発売に向けて横浜のパイロット生産ラインの建設の進捗状況を公開しています。
 
米国、欧州、アジア各地における公道走行試験、パイロット品供給、工場建設の認可は、研究開発から初期展開の段階への移行が進んでいることを示しています。2025年内には初回出荷が見込まれており、2020年代後半を目標に車両への搭載が拡大していくと見られています。
 
全固体電池とその価値提案とは
 
SSBは可燃性有機液体電解質を固体電解質(SSE)に置き換えることで、安全性と極限環境下の耐性の向上が実現します。SSEはシリコン負極、リチウム金属負極、負極が不要な「アノードフリー設計 」、高電位正極との組み合わせも可能で、それによってエネルギー密度の向上につながる可能性があります。このような特長を備えたSSBは、セル内で直列と並列の両方の接続に対応できるため、柔軟性の高い電池パック設計が可能になります。また、革新的な電池パック設計により組立効率も向上し、システムレベルでのさらなる高エネルギー密度化やコスト削減にもつながります。
 
 
全固体電池が提供する価値提案。出典:IDTechEx
 
SSBが持つ独自の価値ゆえに、学術研究者や電池開発者、自動車メーカー、投資家、上流の材料・部品サプライヤーは、今では積極的にSSBを追い求めるようになりました。それに加え、リチウムイオン電池の製造に関しても明らかな変化が起きています。今まで長きにわたり、リチウムイオン電池の製造拠点は東アジア(特に日本、中国、韓国)に集約されてきましたが、米国や欧州諸国が需要先の市場により近い場所でより多くの付加価値を獲得しようと競い合い、そのために製造拠点の現地化を図っているのです。
 
同時に、地政学的問題や貿易戦争の先行き不透明感がかつてないほど高まっていることで、現地化とサプライチェーンの回復力が取締役会レベルの優先事項へと引き上げられつつあるため、SSBプログラムは国内のエコシステムをつなぎ止め、国境を越えた混乱に巻き込まれないようにするための戦略的手段となっています。このように変化する情勢の中で、新たな材料・部品を急ピッチで模索したり、製造工程や工場設計を再評価するなどの動きが顕著になっています。こうした動きにより、バッテリーサプライチェーンの再編が進む可能性があります。
 
技術とビジネスの両面で次世代型バッテリー戦略の核心要素として浮上してきているSSB開発は、今や地域の強い関心や政府による多大な支援を特徴とする真にグローバルな取り組みへと発展しており、それに伴って市場機会も新しい材料から部品、システム、製造方法、製造の専門技術にまで広がりを見せています。
 
SSB商用化の進展状況
 
ポリマー系SSB搭載車両は現時点ですでに路上走行が実現しています。欧州ではブルーソリューションズのリチウム金属ポリマーパックが搭載されたブルーバス製の12メートルのシティバス、ブルーカーのカーシェアリング用車両、ダイムラーのeシターロなどがその例ですが、いずれも耐久性の高いポリマー系SSBの導入事例として現場でも実証されています。
 
中国では、半固体電池・ハイブリッド固体電池・擬似固体電池がパイロット段階から特定製品に限られた商用化へと進んでいます。その中心はバッテリースワップネットワークで運用開始されたニーオの150kWh半固体電池や、SAICのMG4シリーズなどの乗用車への搭載です。一方ではフォランドが発表した半固体電池搭載トラックなど、商用車でも初期段階での動きが見られます。この動きは、厳密には「全固体」ではない半固体電池が決して悪い選択肢ではないことを示しています。なぜなら、半固体電池の使用は安全性と(場合によっては)エネルギー密度、温度耐性の向上に直結する上、現行の専門的な製造技術の多くを活用できるからです。また、エンドユーザー側から見れば、重要なのはバッテリーの種類よりも性能と価格なのです。
 
中国のこのスピード感は、現地メーカーがサプライチェーンの現地化、工程改良、規模拡大を通じてコスト低減に努めていることを示すものであり、新技術が商業的価値を維持する上で重要なことでもあります。一方、セラミックパッケージ型全固体電池(ASSB)分野も今なお開発探求の対象分野として不動の位置を占めています。硫化物系から酸化物系までにわたり、試作セルやA/Bサンプルプログラム、パイロットラインでのマイルストーン達成を発表するプレーヤーが増えていることが、その勢いを現しています。
 
商用化されているSSBや市場投入間近のSSBの多くはハイブリッド型半固体電池です。つまり、少量の液体やゲルを含む場合があるため、厳密に言えばASSBではありません。エンドユーザー側から見れば、バッテリーが必要な機能を満たせる限りどのような技術を採用するかは重要ではありませんが、半固体技術はすでに商用化されているポリマー系SSBと将来の硫化物系ASSBとの間をつなぐ現実的な橋渡しとしての役割を果たす可能性があります。材料、インターフェース、製造方法を取り巻く技術の成熟化が進んでいることから、ASSBへの移行はより円滑に進むと見られます。またその過程において、半固体電池の導入が市場の信頼構築、コスト低減、規模拡大に伴うデリスキングに寄与することになるでしょう。
 
ターゲット市場
 
車載用は依然として全固体電池にとって最大の潜在市場です。バリューチェーン全域にわたる開発ロードマップ、戦略的パートナーシップ、出資契約は、大半がこの分野で占められています。その一方で、導入の取り組みは、IIoTや医療機器の他にドローン、eVTOL、ロボティクスなど、温度許容度と安全性を優先する小容量用途へと拡大してきています。
 
チップ型全固体電池や全固体マイクロ電池は、IIoT・医療機器向けの商用化や生産段階への移行が進んでいます。それらは耐火性に優れ、動作温度範囲も広いことから、極限環境で使用されるセンサー、ウェアラブルデバイス、組み込みモジュールに適しています。ロボティクス業界ではロボットに固体電池を組み込む動きが見られます。これと並行して、いくつかの市場では安全性やパックレベルの統合、エネルギー密度の可能性を理由に、eVTOLや電動航空機向けに全固体電池の構造評価が行われています。
 
一歩下がって見ると、これによって現実的な2本の道筋ができ上がっていることがわかります。1本は今なお大型SSBにとって最大の長期目標である車載用途、もう1本は短期導入が集中している小型かつ高付加価値のニッチ分野です。こうした分野では極限環境での耐性や広い動作温度、コンパクトなパッケージングという特性の恩恵を受けやすいことが、大型EVパック分野よりも成果を上げやすい分野になり得ることの要因です。
 
最近の重点分野
 
バッテリー技術がラボレベルの開発から商業規模の生産へと移行したことで、焦点はセル単体の開発からシステムレベルの統合へと移りました。これには、セル単体の性能の最適化だけでなく、バッテリーパックやシステムへのシームレスな統合を可能にすることも含まれます。バッテリーマネジメントシステム(BMS)の設計と機能、機械的最適化を可能にする構造設計といったシステムレベルの考慮事項は、今や全体的な安全性、効率性、信頼性を高める上で不可欠なものとなっています。メーカー各社は、システムレベルの最適化を優先することで、電気自動車や系統用蓄電池などの大規模用途で求められる複雑な要件に対応できるソリューションの提供を目指しています。
 
もう1つの重点分野は、生産拡大に伴うコスト削減とスケーラビリティの課題への取り組みです。製造工程の効率化や、コスト削減と性能維持を両立させるスケーラブルな設計の開発などの取り組みが進められています。
 
また、バッテリーの寿命と安全性に直接影響することから、セルの圧力管理への注目も高まっています。こうした進歩は、先進バッテリー技術の普及を実現すると同時に、技術的・経済的障壁の克服に向けたこの業界のコミットメントの現れです。
 
IDTechExの調査レポート「全固体電池 2026-2036年:技術、予測、有力企業」では、2026年から2036年までの固体電池市場に関する詳細分析、技術ベンチマーク評価、市場状況、主要企業の動向、機会と課題に関する情報を掲載しています。
 
さらに詳しくはIDTechExのレポート「全固体電池 2026-2036年:技術、予測、有力企業」 でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExのエナジーストレージに関連するレポートは、こちら でご覧いただけます。

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