全固体電池:2035年までに90億ドルの市場規模の可能性
2025年2月26日
Dr Xiaoxi He
全固体電池(SSB)業界は、先進技術や活用ニーズの高まりにより変貌を遂げようとしています。安全性とエネルギー密度に画期的な進歩をもたらすSSB市場は、2035年までに90億ドル規模に到達する可能性があります。IDTechExの調査レポート「全固体電池とポリマー電池 2025-2035年:技術、予測、有力企業」では、絶えず変化する業界を包括的に分析するとともに、最先端技術、市場動向、製造上の課題と全固体電池を取り巻くグローバルエコシステムとの相互作用についても掘り下げて解説しています。
全固体電池: 技術的飛躍
SSBは、液体電解質の代わりに固体電解質材料を用いることで熱暴走リスクを抑えて安全性を高め、負極材料としてリチウム金属やシリコンを使用することでより高いエネルギー密度を実現しています。これにより、軽量・小型化の設計が可能になります。SSB開発は硫化物系、ポリマー系、酸化物系という3種類の電解質が中心となって進んでいます。高いイオン伝導率を提供できる硫化物系は、毒性と製造上の課題に直面しています。ポリマー系はスケーラブルではあるものの、より高い耐熱性が求められている上に、安定性の問題も抱えています。酸化物系はリチウム金属負極に優れた安定性をもたらす一方で、界面抵抗が大きく、コストも高いというデメリットに苦しんでいます。どの技術にも性能、コスト、スケーラビリティの間でトレードオフがあり、IDTechExの調査レポートでは各技術の強みと制約を詳細に解説しています。

全固体電池の比較。出典: IDTechEx
市場ダイナミクス:限界を押し広げる
これまで、主にEVの急成長がバッテリーイノベーションを推進してきました。リチウムイオン電池は、1991年の商用化以来市場を席巻し続けてきましたが、発火リスクや限られた資源、環境への懸念などの制約から、全固体電池のような代替品への関心が高まってきています。
全固体電池導入の主な推進要因:
- テクノロジープッシュ: 材料科学とセル設計の進歩により、全固体電池は実現性の高い技術になりつつあります。性能と価値提案の向上により、全固体電池は、次世代バッテリー技術の1つとして関心が高まっています。
- 活用ニーズ: 輸送機関の電化や、持続可能なエネルギー貯蔵ソリューションの必要性により、非常に過酷な環境でも動作可能な安全性と高いエネルギー密度を備えたバッテリーが求められています。
- サプライチェーンの進化: 欧米などの地域では、現地生産へのシフトによりバッテリー生産の世界勢力図が塗り替えられようとしています。
全固体電池はリチウムイオン技術の有力な代替技術と見なされることが多いですが、商用化の準備が整っているかは未だ議論が続いています。コストの高さや製造上の課題があるにもかかわらず、過剰に評価されているのではないかという声もあれば、既存のバッテリー技術が受けている大きな制約を解消する鍵を握っていると考える人もいます。
グローバルエコシステムと各地の動向
全固体電池の開発は、研究機関、材料サプライヤー、バッテリーメーカー、自動車メーカー、投資家らが共同で進める世界的取り組みであり、地域の動向が業界に多大な影響を及ぼします。バッテリーイノベーションと生産能力においては、日本、韓国、中国を主とする東アジアが席巻し続けている一方で、欧米は東アジアへの依存度を下げるべく、現地生産へのシフトに多額の資金を投入しています。この状況の中、新興市場では材料やシステムに革新的なアプローチが生まれており、サプライチェーンのさらなる再編が進んでいます。こうした変化は、業界の発展を後押しする大局的な動向を反映しており、コスト効率の維持と新しい材料や部材の導入には適応性の高い製造工程が必要であるという事実を浮き彫りにしています。
挑戦とビジネスチャンス
SSBはエネルギー貯蔵に変革をもたらす進歩であり、従来のリチウムイオン電池と比較し、安全性とエネルギー密度の向上、さらには設計の簡素化も可能にします。また、電解質を可燃性液体から固体材料に置き換えることで、発火リスクを大きく抑え、さらなる高温環境での動作安全性の向上を実現しています。負極材料としてリチウム金属を使用することで、高いエネルギー密度、EVの航続距離延長、小型化設計が可能となります。さらには充電速度の向上や長寿化も期待できるため、SSBはEVや再生可能エネルギー貯蔵システムにとって最適な選択肢であると言えるのです。
ただし、商用化の普及という点では大きな障害が立ちはだかっています。それは、高コストにつながる製造工程の複雑さと(少なくとも現時点では)低いスケーラビリティです。高品質で製造性の高い部材を開発し、シームレスな導入を実現するには、精密なエンジニアリングが不可欠です。リチウムデンドライトの形成などの安全上の課題が短絡の原因となる可能性がある一方で、低温環境下の性能限界や急速充電時のサイクル寿命の低下についてはさらなる改善が必要です。独自の材料が使用されているため、リサイクルや使用済み製品の処理方法が今後の課題となっています。
こうした課題があるものの、コスト低減や性能向上に向けた研究とともに、パイロット生産ラインやギガファクトリーのプロジェクトが現在も進捗していることから、SSBは持続可能なエネルギー貯蔵・輸送の鍵となる技術として位置付けられています。
最近の重点分野
バッテリー技術の開発がラボレベルから量産化レベルにまで進んだことで、焦点は個々のセルの開発からシステムレベルの統合へと移っています。個々のセル性能の最適化、セルのバッテリーパックやシステムへのシームレスな統合もこれに含まれています。バッテリーマネジメントシステム(BMS)の設計・機能や、機械的最適化を実現する構造設計など、システムレベルでの考え方が全体的な安全性、効率性、信頼性を高める上で今や不可欠となっているのです。メーカー各社は、システムレベルの最適化を優先することで、電気自動車やグリッドストレージなどの大規模用途の複雑な需要に対応するソリューションの提供を目指しています。
ほかにも、最重要領域となるのが、生産拡大に伴って生じるコスト削減とスケーラビリティに関する課題への取り組みです。これについては、製造工程の合理化や、コスト削減と性能維持を両立できるスケーラブルな設計の開発などを目指して取り組みが進められています。
また、バッテリーの寿命と安全性に直接影響するセルの圧力管理への注目も高まっています。こうした進歩には、先進バッテリー技術の普及を実現しつつ、技術的および経済的障壁を克服しようという業界の取り組みが反映されています。
IDTechExの包括的な分析
IDTechExの調査レポートは、2025年から2035年までの固体電池市場に関する詳細な分析を掲載しています。主な内容は以下の通りです:
- 硫化物系、ポリマー系、酸化物系のシステムなどにわたる技術革新の詳細概要。
- 3つの主要技術カテゴリーにわたる10の応用分野に関する市場予測。
- 新素材や製造方法が業界を再構築する中で、サプライチェーンのダイナミクスを分析。
- 革新的アプローチや研究進歩により、企業が既存の制限をどう対処しているかを取り上げた、製造手順に関する詳細な分析。
- 「企業概要」では主要企業46社のプロフィールを掲載し、その技術・製品紹介・ロードマップ・財務戦略・材料・セル仕様・製造プロセス・サプライチェーンダイナミクス・パートナーシップ・特許・将来の事業戦略・SWOT分析などを詳細に分析。
- 世界の主要地域の進歩・活動・規制・政策を紹介し、技術革新と産業の発展への貢献について掲載。
IDTechExの調査レポート「全固体電池とポリマー電池 2025-2035年:技術、予測、有力企業」では、固体電池を取り巻く「過大評価」と、直面する実際の課題の両方を取り上げることで、その潜在的な影響についてバランスの取れた視点を提供しています。
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