成長するEVバッテリー熱管理市場の機会

Dr James Edmondson
成長するEVバッテリー熱管理市場の機会
IDTechExは成長するEVバッテリー熱管理市場での部品の機会を分析しています。
 
電気自動車(EV)のドライブトレインは、可動部が少ないため、内燃機関より単純であるとよく言われますが、熱管理はEVの方がはるかに複雑で、車両効率や航続距離の観点からも極めて重要です。EVの熱管理は、内燃機関車市場では見られなかった熱管理部品・材料に新たな機会を数多くもたらします。本記事では、IDTechExの調査レポート「電気自動車の熱管理 2026-2036年:材料、市場、技術」 に基づき、EVでの熱管理用材料・部品を詳細に分析し、各分野の主要なトレンドやプレーヤーについて解説します。
 
 
EVバッテリーパックは、熱管理用の材料・部品に複数の機会を提供。出典:IDTechEx
 
一体化が進む冷却板と冷却液流路
 
EV市場で用いられている冷却方式は、水グリコール冷却剤による間接液冷方式が大半を占めています。この方式では、冷却液流路や冷却板をバッテリーセルに接触させて熱を伝えたり、熱を逃がしたりする必要があり、多くの場合は大型冷却板をモジュールの下に配置し、バッテリーセルの底面と接触させます。
 
最近の大きなトレンドの1つは、冷却板をバッテリー自体のトレイに組み込む方式です。そうすることで部品点数の削減と製造工程の簡素化が可能になります。他に、バッテリーセルの温度を均一に保つ方法の1つとして、側壁冷却があります。これは冷却液流路(通常はアルミニウム製)をセル側面に沿って配置するという方式で、複雑な構造になりやすいものの、熱伝導率を高められます。
 
また、ポリマー製冷却液流路やフレキシブルな冷却液流路の開発も進められています。それらの流路はセルの間やセルの下に配置され、流体が中を流れると膨張してセルの形状にフィットするため、熱伝導材料が不要になります。こうした技術はまだ広くは普及していないものの、部品点数の削減を可能にするイノベーションをもたらします。
 
熱ギャップを埋める熱伝導材料
 
間接的なセル冷却を円滑にするため、セルと冷却液流路や冷却板との間には、一般的に熱伝導材料(TIM)の層が用いられています。モジュール筐体と冷却板の間も同様であり、TIMが面と面の間の小さな空隙をすべて埋め、熱抵抗を減らす働きをします。TIMは一般的に、熱伝導性フィラーを配合した電気絶縁性ポリマーを材料にしています。
 
TIMは、バッテリーの重量とコストを大きく増加させる場合があるため、熱管理の要件を満たせるのであれば、TIMの使用量は抑えた方が有益です。これを踏まえ、バッテリーパック1台当たりのTIM使用量は、全般的な設計改良を通じて減少傾向にあり、特にセル・ツー・パックのバッテリー採用増加が大きく寄与しています。部品点数が減ることで接触面が減り、その結果TIMを使用する必要がなくなっているからです。しかし、セル・ツー・パックのバッテリーでは、構造用接着剤の役目も兼ねるTIMが使用される傾向にあり、使用量減少に伴い性能ニーズも変化しています。IDTechExは、EVバッテリー用TIMをギャップパッド、ギャップフィラー、熱伝導性接着剤の3つのカテゴリーに分けていますが、トレードオフと市場成長率はそれぞれ異なります。全体的には、EVバッテリー用TIMの2025年から2036年までの年平均成長率は7.7%になると「電気自動車の熱管理 2026-2036年:材料、市場、技術」で予測しています。
 
冷却水用ホースの性能要求は低い
 
ICE車の冷却水用ホースには、通常の使用条件下で100°Cを超える耐熱性能が求められます。EVバッテリーの場合は最大約50°Cとされており、ホースの破裂圧力も低めに設定されています。したがって、一般的なICE用冷却水ホースは、BEV用途に対してはオーバースペックになっている可能性があります。
 
このことから、コスト削減を目的に、一般的なEPDMホース以外に、より多種多様なポリマーを用いるソリューションに機会が開かれようとしています。PA(ポリアミド)、TPV(熱可塑性加硫物)、PP(ポリプロピレン)などのポリマーがEVの冷却配管に採用され始めており、バイオ由来成分を含むポリマーの使用を推し進めている企業もあります。
 
EVの熱システムでは統合化が進み、短い冷却水ホースが用いられるようになっていますが、それでも多くの場合、EVにはICE車の2倍近くの本数のホースが必要とされます。さらにEV市場全体の成長に伴い、EV用冷却水ホースは大きな成長機会となっています。
 
多機能の防火対策
 
EVの熱暴走と防火性は極めて重要であり、規制の厳格化により目標もさらに高く設定される動きがあります。2026年7月に施行予定の中国国家標準GB38031-2025では、セル単体で熱暴走が開始してから2時間は熱暴走の伝播が発生してはならないという要件が定められています。防火材料は、セル間、モジュールの上、蓋の下など、バッテリーパック内のさまざまな場所に配置できますが、どう配置するかは採用する保護戦略や基本的なバッテリー設計によって決まります。
 
このように想定される材料要件は幅広いため、セラミックブランケットからマイカ層、エアロゲルなど、利用できる材料は多岐にわたります。自動車メーカー各社がバッテリーシステムのコスト削減を模索する中、電気絶縁性、圧縮性能、断熱性など、他の機能も兼ね備える防火材料があれば、全体的な材料コストや組立効率という点で大きな利点になりえます。
 
同じ用途、同じ成長市場においても、IDTechExが取り扱う各材料カテゴリは異なる成長率を示しており、IDTechExの調査レポート「EVバッテリー用防火材料 2025-2035年:市場、トレンド、予測」では、2025年から2035年にかけての合計成長率は、年平均(CAGR)15%になると予測しています。
 
統合熱管理モジュール
 
BEVの熱管理システムでは、対象とする複数部品とその相互作用について考慮しなければなりません。乗員室、バッテリー、モーター、各種電子部品は、どれも冷却や加熱、あるいはそれらの間の熱移動を必要とするため、ポンプ、バルブ、熱交換器、コンプレッサー、チラーなどの多数の熱関連部品が車両中に散在することになります。
 
最近の大きなトレンドの1つは、これら部品の中から複数のものを組み合わせて、1台の統合熱管理モジュール(iTMM)を作るというものです。これで自動車メーカーは多数の部品を購入する必要がなくなり、モジュールを1台購入するだけで性能や機能性を維持できるようになります。ティア1企業から供給されるiTMM以外にも、自社のユースケースに合わせてiTMMを最適化することを目的にこの分野に取り組む自動車メーカーが増えてきており、VWやヒョンデなどがすでにiTMMの自社開発に成功したと発表しています。
 
市場トレンドの把握には
 
EV市場の多様な材料や部品には、それぞれに関連するトレンドが存在し、EV市場全体の動向、規制、地域格差の影響を受けます。IDTechExのレポート「電気自動車の熱管理 2026-2036年:材料、市場、技術」では、これらの部品・材料をトレンド、主要プレーヤー、今後の展望とともに取り上げています。また、IDTechExのサブスクリプションサービスでは、市場、テクノロジー、企業情報含む、先進テクノロジーに関する調査内容にアクセスできるほか、IDTechExの専門アナリストと直接やり取りすることができます。
 
さらに詳しくは、「電気自動車の熱管理 2026-2036年:材料、市場、技術」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。 IDTechExの熱管理に関連するレポートは、 こちらでご覧いただけます。

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