脱炭素化とエネルギー安全保障: ガス分離膜の成長
2025年6月3日
Eve Pope
ガス分離は多くの産業で必要とされています。シンプルなポリマー材料(酢酸セルロースやポリイミドなど)を用いたガス分離膜の成熟した用途が、数十年前から商用化されてきました。各国政府や各業界が2050年までのネットゼロ目標達成を目指す中、新たに脱炭素化向けの用途が登場し、性能向上を目指した新たな膜材料の開発が進んでいます。
IDTechExは、調査レポート「ガス分離膜 2026-2036年:材料、市場、有力企業、予測」の中で、新しい脱炭素化用途のガス分離膜市場は年平均成長率17%で2036年まで成長していくと予測しています。

IDTechExは、新たな膜市場(バイオガス改良、燃焼後回収、ブルー水素)が2036年までに収益面で最大の成長を遂げると予測。出典:IDTechEx
ガス分離膜には、圧力スイング吸着(PSA)法など他の技術と比較して、エネルギー効率が高い点や設計がコンパクトな点など明確な利点があります。エネルギー安全保障や脱炭素化関連の用途としては、バイオメタンや再生可能天然ガス(RNG)を生産するためのバイオガス改良、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)、天然ガス処理、成熟した用途(アンモニア製造、精製・石油化学、メタノール製造)や新用途(ブルー水素・燃焼前炭素回収、水素分離、アンモニア分解)、水素分離、ヘリウムの分離・回収などがあります。これらの市場には、すでに成熟が進んでいるものもありますが、新しい膜材料にまだ機会が残されている可能性があります。
膜は今やバイオガス改良の中心的技術に
シンプルで運用コストが低く、エネルギー効率も優れていることから、膜は急速にバイオガス改良の中心的技術となりました。バイオガスの主な成分はメタンと二酸化炭素です。天然ガスの基準まで浄化し、改質したバイオガスは、バイオメタン(またはRNG:再生可能天然ガス)と呼ばれ、天然ガスの代替として使用できます。
現在RNG分野をリードしている地域は、ヨーロッパと北米です。バイオメタン分野では、エボニックのSEPURAN® Greenなど、バイオガス改良にポリイミドを用いるソリューションが主流ですが、バイオガス市場の世界中への拡大が進むとともに、新たな膜材料や代替バイオガス改良技術が市場シェアを獲得する可能性があります。
燃焼後炭素回収向けガス分離膜の拡大
引き続きアミン溶媒技術は、点源炭素回収分野での主流技術となる見込みですが、新しいガス分離膜にも機会が存在しています。設置面積の小さい膜式回収装置の方が、運転時に有害化学物質が出ないため、場合によっては最適な技術選択肢となるかもしれません。膜プロセスを深冷分離法、PSA法や溶媒と組み合わせて経済性を最大化する「ハイブリッドプロセス」への関心も高まっています。
既存の高分子膜は、天然ガス処理分野以外の二酸化炭素回収では性能を十分に発揮できていないため、CCUS分野のスタートアップ企業は、一般的に先進ポリマー材料の商用化を目指しています。燃焼後回収向けのガス分離膜については、まだ年間メガトン規模には至っていないものの増加しており、年間数万トンの CO2 を回収できる各プロジェクトが2025~2026年に開始する予定です。IDTechExの調査レポート「ガス分離膜 2026-2036年:材料、市場、有力企業、予測」は、燃焼後炭素回収におけるガス分離膜のプロジェクト、プレーヤー、材料、ベンチマーク評価、経済分析などの市場調査を掲載しています。
既存および新たな水素用途が膜に新たな機会をもたらす
アンモニアやメタノールの製造などの成熟した水素用途において、膜はすでに定着しています。たいていの場合、PSA法などの技術とともにガス分離膜をハイブリッドシステムに導入することで、経済性を最大化することができます。新たな用途向けには、高い水素純度といった利点を実現するパラジウム膜などの新しい膜材料の研究が進んでいます。
性能向上を可能にする新しいガス分離膜材料
市場を揺るがしているのは新しい用途だけではありません。製造が容易で生産コストも安価な既存の非対称性高分子膜は、新しいガス分離膜材料によって分離性能が向上する可能性があります。スタートアップ企業各社は、先進ポリマー材料、金属、セラミック、炭素系膜、新しい複合構造(薄膜複合膜や混合マトリックス膜など)の商用化を模索しています。

新しい膜材料の開発には、先進ポリマー材料や新たな複合構造があるが、その開発はポリマー材料以外の金属やセラミックにまで及ぶ可能性がある。出典:IDTechEx~
展望
エネルギー安全保障上の懸念や脱炭素化への取り組みを背景に、新旧両方のガス分離膜材料の市場機会が世界的に拡大しています。特に有望な用途としては、バイオガス改良、燃焼後炭素回収、ブルー水素製造などがあります。IDTechExの調査レポート「ガス分離膜 2026-2036年:材料、市場、有力企業、予測」では、ガス分離膜市場の見通しについて、包括的な情報とともに市場を形作る技術面・経済面の詳細な分析をご覧いただけます。
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