PEM燃料電池におけるグラファイト製バイポーラプレートと金属製バイポーラプレートの比較

PEM燃料電池におけるグラファイト製バイポーラプレートと金属製バイポーラプレートの比較
バイポーラプレートは、PEM燃料電池の主要部材であり、構造的な支持を担うとともに、発電を行う電気化学反応で重要な役割を果たします。本記事では、バイポーラプレートの原材料となり得る金属やグラファイト/グラファイト系複合材料について解説します。
 
バイポーラプレートは、PEM燃料電池において極めて重要な構成要素であり、反応ガスの流路制御、水の管理、セル間の電気伝導といった機能を担っています。また、スタック全体のコストと価値において大きな割合を占める部品です。IDTechExは、PEM燃料電池用バイポーラプレート市場が、2036年までに5億ドルを超える規模に達すると予測しており、それに伴い材料選定の戦略的重要性はますます高まっています。現在、グラファイト製プレートと金属製プレートの間で熾烈な材料競争が繰り広げられています。グラファイトは優れた耐食性と熱伝導性を有する一方、金属はプレートの薄型化と機械的強度の向上を可能にします。この競争は、燃料電池の性能と製造プロセスの方向性に引き続き影響を与えています。
 
燃料電池の導入がモビリティ分野と定置型分野の双方で拡大するにつれ、PEM燃料電池に使用される材料と部品の需要も連動して増加する見通しです。IDTechEx の新しい調査レポート「PEM燃料電池材料 2026-2036年:技術、市場、有力企業」 では、用途別に分類した詳細な10年間予測を提供し、主要部品についてユニット需要と市場価値の両面から分析しています。また、一次調査に基づく競合技術のベンチマーキング評価やトレンド分析も掲載しており、発展しつつあるこの市場を形作る機会と課題について明確な洞察を提供しています。
 
バイポーラプレート(BPP)は、構造部材、集電体、水素と酸素の流路を分離するセパレーターとして、燃料電池内で複数の重要な機能を果たしています。適切な材料を選定するには、機械的耐久性、耐食性、電気伝導性と熱伝導性、さらに総コストといった複数の要因を総合的に考慮する必要があります。IDTechExのレポートでは、主要な材料選択肢であるグラファイトと金属について比較を行い、主要サプライヤー、製造方法、完成車メーカーとのサプライチェーン上のパートナーシップを含めた詳細な評価を提供しています。
 
 
複数パラメータにわたるバイポーラプレート用材料のベンチマーク評価。出典:IDTechEx「PEM燃料電池材料 2026-2036年:技術、市場、有力企業」
 
BPPの材料要件
 
BPPは、片面は酸化性、もう片面は還元性とそれぞれ異なる環境にさらされるため、耐食性が重要な鍵となり、さらに過酷かつ相反する特性が求められます。電気伝導性の高さは、セル内で発生した電流を効率的に集電する上で不可欠であるのに対し、熱伝導性は燃料電池スタックの冷却性能向上に寄与します。また、選定する材料には高い機械的強度も必要とされます。BPPは、膜電極接合体(MEA)に構造的完全性を支える役割を果たしています。さらに、燃料電池スタック全体の軽量化を実現するため、燃料電池質量の最大80%を占めるプレートをできる限り薄肉化する動きが見られます。
 
グラファイト製BPPと金属製BPPの比較
 
BPP材料の物理的特性を評価することで、PEM燃料電池の特定用途でのユースケースについて一定の示唆が得られます。グラファイト製プレートは金属製プレートと比べて密度が低いため、軽量化が重要となる用途に適しています。一方で、グラファイト製プレートは脆性を有する傾向があり、特に複雑な流路構造が形成されている場合、製造プロセスで問題が生じる可能性があります。ただし、フェノール樹脂などのバインダー材料を使用することで、こうした課題は一般的に克服可能です。
 
金属製プレートの大きな利点は、機械的強度を活かしてプレートの薄肉化が可能となる点であり、それにより燃料電池の出力密度を高めることができます。また、セル内で不要なガス混合を防ぐため、プレートには水素バリア性も求められます。グラファイト製プレートでも 10 mol/(cm s bar) 未満と低い水素透過率を示しますが、金属製プレートでは 1x10-9 mol/(cm s bar) 程度の水素透過率を示し、さらに優れた性能を示します。
 
BPPの伝導性を検討する際には、電気伝導性と熱伝導性の両方を評価する必要があります。バイポーラプレートに一般的に使用されるアルミニウム、鋼、チタンなどの金属は高い電気伝導性を有しており、その値はしばしば1MS/mを超えます。一方、グラファイト製やグラファイト系複合材製のプレートでは、一般的に1~5KS/m程度です。熱伝導性については状況が逆転し、グラファイト製プレートが金属製プレートを上回る性能を示すことが多くなっています。金属製プレートでは、耐食性を確保するために必要となるコーティングが熱伝導効率を低下させる要因となる場合があるからです。
 
PEM燃料電池におけるBPPの見通し
 
BPPの主な特性として最後に取り上げるのが、プレート1枚当たりのコストです。IDTechExは、一次調査やプレートメーカーへの直接インタビューを基に市場分析を行い、今後10年間のプレート価格の詳細な見通しを提示しています。それによると、金属製プレートの価格は、グラファイト製プレートのおよそ2倍になると予測されています。このコスト面での優位性は、セル形状や出力密度が最優先事項とならない用途で、グラファイト製プレートの採用を後押しする主要な要因となり得ます。グラファイト製プレートは、トラック、船舶、定置型燃料電池などの高負荷用途で最も一般的使用されています。一方で、出力密度が最重要視される用途、例えば燃料電池乗用車では、金属製プレートの大幅な採用拡大が見込まれています。
 
PEM燃料電池向けバイポーラプレートの需要、材料トレンド、予想価格帯の詳細については、IDTechExの市場調査レポート「PEM燃料電池材料 2026-2036年:技術、市場、有力企業」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの最新調査レポートは、こちら でご覧いただけます。

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