EV充電モジュールのトレンド
2024年12月23日
DC急速充電器のパワーモジュールは、電力網のAC電力を高電圧DC電力に変換してEVバッテリーを効率的に充電する重要な部品であり、整流器、インバータ、制御システムを一体化することで、エネルギー効率を最適化し、熱損失を最小限に抑えながら正確に電力が供給されるようにしています。パワーモジュールは急速充電の実現や高出力用途のサポートに不可欠であり、EV普及拡大による需要に対応します。IDTechExの最新調査レポート「電気自動車とEVフリートの充電インフラ 2025-2035年:市場、技術、予測」では、性能向上を実現するSiC(炭化ケイ素)技術への移行、スケーラビリティを考慮したコンパクト設計、信頼性向上と運用コスト削減に向けた熱管理のイノベーションを明らかにしています。
出力電力シフト
容量が100kWを超える充電器は、メンテナンスのしやすさやシステムの柔軟性を考慮したホットスワップ対応設計を特徴とする積層型パワーモジュールを用いたモジュール方式で作られていることが一般的です。これらのモジュール容量はそれぞれ20~50kW(旧来の充電器は15kWのモジュールを使用していることが多い)に達しており、将来の設計ではこれを上回る容量になる見通しです。
とはいえ、モジュールの出力は必ずしも高いほど良いとは限りません。市場の観点から見ると、40kWのモジュールが主流の選択肢となっており、この出力設定は、シングルポートにおける各種充電需要のニーズに対応すると同時に、充電ステーションの全体的な充電容量を最適化するものとなっています。
モジュールを小さくすると並列接続を増やす必要があるため、充電ステーションの重量が増加するのに対し、モジュールが大きすぎると配電の問題が生じる可能性があります。充電開始~中盤に高い出力が必要になりますが、バッテリー容量が80%に達すると、出力を下げて充電する必要があります。過度に強力なモジュールを1台で運用していると、80%の時点で配電が困難になり、設備リソースの無駄が生じます。
なぜ SiC?
SiC(炭化ケイ素)パワーモジュールはDC急速充電器の大幅な効率向上を実現するものであり、シリコン(Si)系ソリューションと比較し、システム全体の効率を最大2%向上することが可能となります。SiCが実現する出力密度の向上により、設計の小型化・軽量化が可能になります。これによって、充電器の小型化が進むと同時に、同じスペースからの出力が最大化し、EVの充電速度が向上します。そのため、30~50kWという新しい区分のウォールボックス型低出力DC充電器の導入も可能となっています。
従来のSiモジュールと比べて発熱量が少ないこともあり、SiC技術では冷却要件が下がっています。そのため、アクティブ冷却システムへの依存度が下がり、機械部品の点数削減や信頼性の向上につながります。また、冷却の必要性低下は動作時の静粛性向上にもつながるため、SiCを用いた急速充電器は住宅地や都市環境により適したものとなっています。
SiCモジュールの効率向上はエネルギーコストの節減や環境面の利点にも直結します。一般的に効率が2%向上すると、充電出力100kWごとに約2kWのエネルギーが節約されるため、光熱費が下がり、充電器1台当たりのCO₂排出量も削減されます。
SiC(炭化ケイ素)は将来のEV充電技術の発展に不可欠であり、V2Xのような双方向エネルギーシステムを可能にし、大型車向けに電圧(最大1250V)と電流(最大3000A)を上げたメガワット充電を支えます。また、SiCはワイヤレス給電(WPT)の進歩も牽引しており、出力3.7~500kWでの効率的な固定型給電や走行中給電を可能にします。
こうした機能から、超急速EV充電の要求を満たすオールインワン急速充電器にSiCが最適であることもIDTechExのベンチマーク評価で明らかになっており、400~500kWという最大出力を発揮する能力を維持しながら、より小型で一体性のある設計が可能になります。本調査レポートでは、最先端のオールインワンユニットにおいて、システム全体の効率が全負荷時の93%から95%以上に推移していることも明らかにしています。

出力と最大電流に基づく、大手メーカー数社のオールインワンユニットの最高出力設定ベンチマーク評価。出典: IDTechEx
コストの最適化、サプライチェーンの回復力確保、優れた性能と差別化を実現するカスタマイズ設計の作成を目的に、パワーモジュールを社内で開発する企業が増えてきています。しかし、そのためには研究、開発、製造能力への多額の投資が不可欠です。競争が激しく、急速な発展を遂げているEV充電業界においては、これこそが明暗を分ける要因なのかもしれません。
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