IDTechExがPIC用先進材料を探る
2024年8月12日
Dr Yu-Han Chang
フォトニック集積回路(PIC)とは、シリカ(またはガラス)としても知られる二酸化ケイ素などの光を通す半導体材料の上に形成される光回路です。この光回路は、回路を通る光を操作するための素子を搭載しており、小型規格においてデータの伝送、センシング、処理などの機能を実現します。PICは光信号の扱い方や活用方法を根本的に変容し、多数の業界にわたる発展の礎を築こうとしています。IDTechExの調査レポート『シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2024-2034年:市場、技術、予測』では、市場の有力企業や、TFLNやBTOなどの先端材料、AIなどの新用途について考察した上でPIC市場の今後の成長を予測しています。
その基本的特性により、PICにはEIC(電子集積回路)に対する大きな優位性があります。光は電気に比べて通信速度が約3倍であるため格段に高い効率でデータを伝送できます。窒化ケイ素やリン化インジウムなどの材料では、光が特定の周波数(1550nmなど)になると電気信号と比べて伝搬損失が大きく低下します。こうした特性から、光導波路では、電子的伝送路と比較し、データ転送効率の向上(最大10倍)、帯域幅の拡大(100倍)、遅延の大幅な短縮(0.3倍)が実現できます。また、PIC技術の一部であるシリコンフォトニクスは、データ伝送時のエネルギー消費を抑える上で不可欠であり、このことは、TSMC会長、シーシー・ウェイ氏も指摘しています。加えて、PICは最新のCMOSプロセスに組み込むことができ、既存の電子装置と組み合わせることも比較的容易です。こうした点は、データ通信技術の発展におけるPICの汎用性と有効性を向上させています。
その利点から、PICはさまざまな分野で応用されています。電気通信においては、高速データ転送を可能にし、急増するインターネットや通信ネットワークへの需要を支えています。PICが本領を発揮するもう1つの分野は環境センシングです。空気中のさまざまな化合物や分子を検出する人工鼻などへの応用が可能です。一方、医療分野においては、診断ツールや医療機器の改良を通じてPIC技術の恩恵を受けています。IDTechExの調査レポート『シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2024-2034年:市場、技術、予測』では、AI向けPICトランシーバーがPIC最大の需要源になることを取り上げています。AI用途における高速で効率的なデータ処理に対するニーズの高まりが、この成長を後押ししています。また、プログラマブルフォトニクス、光量子コンピューター、CPOなどの先進技術により、PICの機能と用途が再定義され、コンピューティング、通信、センシングの各技術において新たな可能性が開かれようとしています。
こうした利点があるものの、PIC市場はいくつかの課題に直面しています。PICの設計・製造には多額の初期投資が必要なため、コスト管理も重要課題となっています。コストを相殺するには大量の需要が必要です。また、生産リードタイムが数か月に及ぶことで市場への対応も複雑になる可能性があります。
材料の制約は、PICの開発と性能をいっそう複雑なものにしています。現行のPICにおいて一般的でありシリコンとシリカは、光源や光検出器の材料としては最も効率的とはいえません。光源や光検出器に使用する場合、シリコンをIII-V族材料と組み合わせる必要がありますが、そうすると集積の複雑さという別の課題が生じます。異なる材料や素子を組み合わせて1個のPICにする場合、複雑な工学・製造プロセスを用いて、各種材料の互換性を確保し、一貫した性能を確保する必要があります。
PIC技術を発展させ、その利用をさまざまな用途に拡大する上で材料の課題への取り組みは不可欠です。従ってPICの未来は、制約を解消する新材料の模索と採用にかかっています。依然として主流はシリコンですが、いくつか支持を集めている先進材料があります。薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)は、適度なポッケルス効果と少ない材料ロスで、量子システムや将来の高性能トランシーバーなど、高性能変調器用途に最適です。モノリシックInP(リン化インジウム)は、光の検出・放出が可能なことから依然として重要視されていますが、損失とコストの高さに関連する課題に直面しています。優れた変調性能で知られるチタン酸バリウム(BTO)は、変調効率が最優先事項である量子フォトニクスシステムでの利用が期待されています。窒化ケイ素(SiN)は他の材料と比べて損失は少ないものの、屈折率が低く高コストで、素子のサイズも大きいため、今のところ普及には至っていません。IDTechExの分析では、PIC市場においてはシリコンが主流の材料であり続ける見込みです。とはいえ、長期的にはモノリシックInP(リン化インジウム)や薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)が市場シェアを拡大すると予測されています。

PICの材料別市場シェア。 Source: IDTechEx
結論として、PICはさまざまな分野において大きな発展を後押ししています。集積の複雑さ、コスト管理、生産リードタイム、材料の制約に関する課題があるとはいえ、新材料や先進技術が今も模索されていることから、PICには明るい未来が期待できます。
IDTechExの調査レポート『シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路 2024-2034年:市場、技術、予測』では、シリコンフォトニクスとフォトニック集積回路(PIC)市場の成長を予測するために、主要市場プレーヤー、TFLNやBTOなどの新しい材料、AIなどの新しいアプリケーションについて取り上げています。また、プログラマブルフォトニクス、フォトニック量子コンピュータ、コ・パッケージド・オプティクスなどの新技術についても調査しています。ぜひ、ご活用ください。
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