将来は車全体がレーダーアンテナに : IDTechEx予測

Dr James Jeffs
レーダーの小型化は重要なトレンドの1つです。これに寄与する要因はいくつかあり、アンテナを小型化する24GHzから77GHzへの移行などが挙げられます。もしくはSiGe-BiCMOSベースのトランシーバからSi-CMOSトランシーバに移行することで、コンピュータ計算に用いるディスクリート部品点数の削減と回路基板の小型化が図れます。「では、小型化が進み続ける場合、どこまで小さくできるのか」というのがIDTechExの問いです。

積層型レーダー

従来のレーダーでは複数の部品層が積み重ねられ、各層がそれぞれの役割を担っています。レドームは外側の保護面であり、電波がシームレスに透過できるようにする必要があります。アンテナアレイは電気信号と放出された電波の変換を行うだけでなく、電波エコーを読み取って電気信号に変換し直します。シールドはアンテナアレイとレーダー回路基板を分離し、レーダー回路基板はトランシーバやプロセッサなどの重要部品を保持します。
 
従来の自動車用レーダーアセンブリ。 Source: IDTechEx
 
このようなレーダーはまだ存在しますが、実装面積が広くとれるためできるだけ多くの性能を搭載する傾向があります。たとえば、調査レポート『車載用レーダー 2022- 2042年』で特集したコンチネンタル、Arbeなどが手掛ける新しい高性能レーダーは、実装面積がまだ相当に広くなっています。これらのレーダーは通常、高い解像度と長い有効距離が必要な車のフロント側で使用されていますが、車両の他の部分では有効距離が短くなる可能性があり、検出した対象物の正確な測位は視野や近接度の測定ほど重要ではありません。このような要求基準の変化によりレーダーを小型化できるようになり、パッケージサイズをさらに縮小できる可能性が広がります。

基板の一体化

ボッシュ、コンチネンタル、インフィニオン、NXPといったレーダーサプライヤーの現在のトレンドは、レーダー回路基板とアンテナを一体化することです。一体化することでシールド層と別個のアンテナアレイ基板が不要になり、パッケージが小型化します。この進歩をもたらしたのは、24GHzから77GHzに移行して波長が短くなり、アンテナアレイの小型化が可能になったことです。2つ目は高集積チップへの移行です。レーダー回路基板上に複数のディスクリートチップを搭載する代わりに、Si-CMOS技術を用いることで、信号処理や物体認知といったレーダーに必要なほぼすべてのタスクをトランシーバが実行できるようになります。これによりレーダー基板上のスペースが空き、アンテナ用のスペースとして使用できます。とはいえ、すべてのサプライヤーがSi-CMOSに向かって突き進んでいるというわけではありません。このことは、IDTechExの調査レポート『車載用レーダー 2022- 2042年』でも解説しています。

アンテナ・オン・パッケージ (AoP)

テキサス・インスツルメンツなど一部のイノベーターやサプライヤーは一歩先を行き、トランシーバチップ自体の上にアンテナを搭載しています。これはレーダー全体を各方向においてわずか数十ミリメートルまで小型化できることを意味します。これはレーダー技術の最先端であり、レーダーをこれ以上に小型化する方法は他には容易には見当たりません。

車載アンテナ

レーダーを小型化する際に妥協せざるを得ない点が性能の低下です。アンテナアレイを小型化すると有効距離が短く解像度が低いものになる可能性があります。では高いレベルの統合性を維持しながら、大型アンテナアレイが持つすべての利点を得る方法はあるのでしょうか?
 
解決策の一つとして考えられるのが、車両の外面にアンテナを埋め込むという方法です。これはすでに研究で提案されています。たとえばフラウンホーファー研究機構では、ヘッドライトをレーダーに変えるRadarGlassの研究を行っています。IDTechExではこれをボディパネルにも応用できる可能性がると考えています。アンテナをプラスチックに埋め込むことで、巨大な汎用性の高いパワフルなアレイを作るというものです。さらにアンテナを本来の位置から移動させることで、多数のアレイを1台のコントローラーで操作できるかもしれません。大型アンテナアレイが一体となって機能すれば、性能向上を図れるようになる可能性があります。
 
未来のレーダー設計。アンテナを車両パネルに埋め込む。 Source: IDTechEx
 
さまざまな積層型電子回路製造工程を利用してレーダーアンテナを車体パネル内やパネル表面に組み込むことが可能です。最も開発が進んでいる方法の一つがレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)です。これはレーザーを使用し、射出成形されたプラスチック部品内の添加剤を選択的に活性化してから、無電解めっきを施すという方法です。この方法はすでにさまざまな家電機器のアンテナの製造に使用されています。開発の初期段階にある方法としてはインモールドエレクトロニクス(IME)があります。この方法は熱成形してから射出成形を行う前に導電配線を蒸着させるもので、金属パターンを印刷した機能性フィルムを貼り付け、立体表面に導電パターンを印刷するだけで完成します。IDTechExの調査レポート『3Dエレクトロニクス 2020-2030年: 技術、見通し、有力企業』では、電子回路を3D構造の内部や表面に組み込む方法に関して詳細に解説しています。
 
とはいえ、このような一体化が実際に既存のバリューチェーンにどう適合するかについては疑問があるでしょう。この方法によるレーダー製造はメーカーがサプライヤーから調達して取り付けるよりもはるかに複雑だからです。たとえばどの工程のメーカーがボディパネルを作るのでしょうか。BMWやメルセデスがボッシュにドアを設計してもらいたいと考える可能性は低いですが、ではどうしたらボッシュのようなサプライヤーがBMWやメルセデスが提供するドアのバリエーションの一つ一つに合わせてレーダーアンテナを設計できるのでしょうか。このコンセプトは垂直統合型生産体制を敷いているテスラのようなメーカーにとっては興味深いかもしれませんが、テスラはレーダーから脱却しつつあるようです。この種の技術は実用化までにもう少し時間がかかることになりそうです。
・アイディーテックエックス株式会社 (IDTechEx日本法人) が販売。
・IDTechExからの直接販売により、お客様へ各種メリットを提供。
・ご希望の方に、サンプルページ 送付。
・オンラインでの試読については、ご相談ください。
・その他、調査レポートに関する、質問、購入に関する問い合わせは、
 下記担当まで。見積書、請求書も発行します。
 
IDTechExの調査レポートを購入すると、30分のアナリストタイムが提供されます。直接アナリストにレポートに関する質問が可能です。詳しくは、下記担当までお問い合わせください。
 
問合せ先
アイディーテックエックス株式会社
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル21階
担当:村越美和子  m.murakoshi@idtechex.com
電話 : 03-3216-7209
 
IDTechExは、調査、コンサルタント、イベントを通して、戦略的なビジネス上の意思決定をサポートし、先進技術からの収益を支援しています。IDTechExの調査およびコンサルティングの詳細については、IDTechExの日本法人、アイディーテックエックス株式会社まで、お問い合わせください。