PHEVブームも、将来はピュアEVへ
2024年12月18日
Mika Takahashi
2024年は電気自動車市場にとって厳しい年になりました。二桁成長を続けてきた電動化は、特にヨーロッパで困難な局面を迎えています。EV需要の低迷、貿易関税の脅威増大、不透明な政治・規制情勢により、多くの人々が電気自動車移行の先行きを疑問視しています。しかし、すべての電気自動車が同じように作られている訳ではありません。バッテリー式電気自動車(BEV)はいくつかの主要市場で苦戦していますが、プラグインハイブリッド車(PHEV)は好調です。IDTechExの調査レポート「プラグインハイブリッドと電気自動車 2025-2045年:技術、市場、有力企業、予測」では、PHEVが2024年には2023年比で約75%成長し、700万台を超えると予測しています。
本調査レポートでは、成長の背景にある地域ごとのトレンドを明らかにし、中国のNEV市場がPHEVの世界的成長をどのように牽引しているかを探ります。また、トレンドの根底にある主な政府・市場的要因も解説しています。走行時の排出がゼロでありながら、航続距離の不安を和らげる高価なリチウムイオン電池やICEの予備動力にもそれほど依存していないという点で、表面上PHEVは理想的妥協策のように思われます。では、BEVの時代は終わってしまったのでしょうか? また、これからはハイブリッドの時代になるのでしょうか?

ドライブトレイン別 2015年から2024年までのEV世界販売台数(予想販売台数)。2023年から2024年にかけての成長の大部分はプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数増加によるもの。出典: IDTechEx - 「プラグインハイブリッドと電気自動車 2025-2045年:技術、市場、有力企業、予測」
IDTechExの最新調査によると、2045年にはBEVが自動車市場の75%を占める見込みであるのに対し、PHEVはわずか5%強であることから、その答えは「ノー」となります。とはいえ、数字がすべてではありません。IDTechExでは、新車販売におけるPHEVのシェアが2028年までにピークに達し、短・中期的にPHEVのドライブトレインが大きな成功を収めることになると予測しています。IDTechExの調査レポートでは、PHEVが現在成功している理由や、市場を長期的にBEVへと移行させる主な市場・政策的要因を明らかにしています。
コストと距離の問題
EV最大の部品コストは、ほとんどの場合、リチウムイオン電池です。スケールメリットやより低コストの新しい正極材料により、ここ10年間でバッテリー価格は大きく下落しましたが、より安価な自動車を実現する上でその価格は大きな障害となっています。PHEVは設計上、通常のEVよりもはるかに小さなバッテリーを搭載しています。IDTechExのEV販売に関する世界規模の膨大なデータベースによると、2024年のBEVバッテリー容量(加重平均値)は約70kWhでした。車種はさまざまですが、一般的なPHEV容量は5~25kWh程度です。バッテリーが大幅に小型化し、車両価格も大きく抑えられ、航続距離を犠牲にしているわけでもありません。むしろ、その逆です。PHEVは内燃エンジンも搭載しているため(整備されたガソリン給油インフラの恩恵)、実際には航続距離の不安が軽減するという意見も多くなっています。より低価格で、高価なリチウムイオン電池への依存度も低く、航続距離の不安も少ないというわけです。もしこれが本当であるなら、PHEVの欠点は何でしょうか?
実際の環境面での利点は、ひいき目に見ても疑わしく、最悪の場合存在しない
PHEVの中核的問題は、同等のディーゼル/ガソリンICE車と比較し、排出量の継続的かつ大幅な削減を実現できない点です。IDTechExの本調査レポートでは、車載排出監視装置を使用してPHEV排出量の実際の数値とWLTP値を比較した欧州委員会の報告書など、PHEVと排出量に関する最新の調査結果を評価しています。その調査結果で、PHEVの実際の排出量が試験の数値よりも平均で267%高いことが判明していますが、このような数値になるのは、運転者がPHEVを十分な頻度で充電せず、EVモードではなくICEモードで走行する場合がほとんどです。これらの調査結果は政策変更に拍車をかけており、このままいけば、PHEVが自動車メーカー各社のフリート平均CO2排出量にマイナスに影響するようになります(フリート平均の算出方法と想定される罰金についても本調査レポートで詳しく取り上げています)。ヨーロッパでは、2035年までに新車販売のすべてを100%ゼロエミッションにする必要がありますが、PHEVはその対象から除外されています。
中には政策が中核的な推進要因でない地域もあり、中国では、政府の補助金・助成金においてPHEVとBEV(合わせて新エネルギー車(NEV)市場の大半を占める)を同じ条件で扱っています。BYDをはじめとする大手メーカー各社は、PHEVの車種ラインナップを大幅に増やしており、多くの人気車種でピュアEVとハイブリッドの両方を選ぶことができます。2024年のPHEVの売り上げは絶好調で、上半期は新車販売台数の22%近く(2023年は10.7%)がPHEVとなっています。PHEVよりもBEVを選択させる規制上の圧力が非常に弱い中、中国でのBEV普及を促進する要因は何でしょうか? IDTechExの調査では、リチウムイオン電池価格の下落により、今後10年間でBEVへの上乗せ額(BEVがPHEVよりも高額である分の差額)が下がり、同等に近い水準になると予想しています。価格が同等になれば、運用コストがはるかに低いことが支配的な要因(電気はガソリンと比べてはるかに安価)になってきますが、それほど厳しくない規制環境(米国や中国など)では、PHEVの需要がより持続的になるとIDTechExは予想しています。IDTechExの調査レポート「プラグインハイブリッドと電気自動車 2025-2045年:技術、市場、有力企業、予測」では、ドライブトレイン別・地域別の20年間販売予測を、販売台数、バッテリー需要、市場価値とともに分析し、全体の詳細分析と解説を基にEV車市場の詳細な評価を提供しています。
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