IDTechEx技術ハイライト2020: プリンテッド・フレキシブルエレクトロニクス
2020年11月25日
プリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスは、広範囲にその技術が進化し続けています。各技術革新は、先端技術材料から新しい製造方法にまで及び、OLEDディスプレイからウェアラブルヘルスケアパッチに至るまでのさまざまな用途へと広がっています。IDTechExは、この調査記事の中で、2020年最もエキサイティングな技術的ハイライトを3つ紹介し、また新型コロナウイルスによる、業界への影響についてもまとめました。
フレキシブルシリコン
特に技術的に大きな進展があったのは、完全にフレキシブルな薄膜シリコン集積回路(IC)です。これにより、これまではICパッケージに搭載していたBluetoothなどの機能を、フレキシブル基板や曲面基板の上に実装できるため、さまざまな新しいフォームファクタが可能になります。フレキシブルICは、従来のシリコンダイを3umの薄さまで削ってからポリイミドの中に封入することによって製造され、曲げ半径を1mmまで小さくすることができます。
フレキシブルな実装部品は、「フレキシブル・ハイブリッドエレクトロニクス」(FHE)として知られる製造の新しいトレンドにおける重要な要素となっています。FHEは、実装部品(フレキシブルICなど)を、フレキシブル基板上のプリント導電配線と組み合わせることにより、プリンテッドエレクトロニクスに付いて回る妥協をなくそうとするものです。ウェアラブル電子機器とスマートパッケージングが最も有望な用途になると予測されてはいますが、FHEは多くの分野に応用することができます。
フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクスの詳細は、IDTechEx調査レポート「フレキシブル・ハイブリッドエレクトロニクス 2020-2030年:用途、課題、イノベーションおよび見通し」をご覧ください。
FHEの各種用途での採用見込みに関する市場予測(収益別)。これらの予測は、20を超えるサブカテゴリーについての詳細な分析、それぞれのカテゴリーでFHEが提供するメリット、用途別のコンポーネントと組立法に関する価格予測を基にしています。 出展: IDTechEx
OLED材料の進歩
OLED材料に目を向けてみると、その技術トレンドの中心は、コスト低減、高効率、色域の拡大を約束する新しいクラスの材料が登場したことです。熱活性化遅延蛍光(TADF)材料として知られるOLED材料は、すべての流入電荷が発光に利用されるようにする全く新しいアプローチです。日本のKyulux社が開発した材料を使用しているオレンジ色のエミッタは、小型ディスプレイ向けに既に商品化されており、2021年には他の色も続く予定です。
また、今年は、ホスト材料に対する新しいアプローチが特に印象的でした。ホスト材料は、発光材料と比べて調査の対象となることがあまりありません。アーリーステージの米国企業MOLECULAR GLASSES社によって開発されたこの革新的なホスト材料は、ドーパント分子が蛍光やリン光であろうとTADFであろうと、電荷輸送能力を維持しながら、それらの溶解性を高めます。
これは、異性体混合物として知られる、微妙に異なるさまざまな化学構造からホスト材料を作成することによって実現されるものです。そうすることでホスト材料の結晶化が防がれ、発光ドーパント分子がより均等に分散されるため、凝集が回避されます。これにより、発光する前の電荷と励起子の間の相互作用が減少し、発光効率が向上します。
OLED材料の詳細は、IDTechEx調査レポート「プリンテッド/フレキシブル エレクトロニクス材料 2021-2031年: 技術、用途、市場見通し」をご覧ください。
粒子ベース導電性インクの代替品
もう1つの刺激的な革新的な技術も、材料に基づくものであり、それは伸縮性のある導電性インクに代わるものです。アーリーステージの企業Liquid Wire社は、銀フレークをエラストマー結合剤と組み合わせるのではなく、室温では液体のガリウム・インジウム合金をベースにした金属ゲルを使用しています。そのため、この伸縮性を持つ導体は、繰り返し伸縮させても疲労しません。さらにゲルであるため、熱的、機械的特性が異なる剛性のコンポーネントを、伸縮性のある高分子基板に取り付ける際の難しさもありません。回路は、TPUを型板で刷り出して積み重ねたシートの中に金属ゲルを埋め込むことによって作られます。
Liquid Wire社の金属ゲルとその関連コンポーネントの取り付け技術は、体内の電気信号のモニタリングなど、ウェアラブル用途を最初のターゲットとしています。ウェアラブル電子機器は急速に成長している分野であり、ヘルスケア、治療、フィットネスに用いられています。
ウェアラブル電子機器のヘルスケアへの応用については、IDTechEx調査レポート「ヘルスケアにおけるフレキシブル・エレクトロニクス 2020-2030年」をご覧ください。
新型コロナウイルスのプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスへの影響
2020年に一部の企業は、新型コロナウイルスの大流行に対応するソリューションの提供に向けて方向転換を行いました。例えば、ウェアラブル電子機器では、電子皮膚パッチを含む遠隔患者モニタリングが、患者の体温を遠隔でモニタリングするための手段として強い関心を集めています。その利点は、医療従事者がウイルスの感染リスクにさらされずに、非接触で患者の体温を測定できることです。さらに導電性インクは、COVID-19などの感染を検知するシステムの一部としてセンサーテストシステムで使用されています。
他の分野では、抗ウイルス効果を持つ材料(ナノ銅など)の開発が進められており、機器メーカーなどがドアの取っ手などの表面にこうした材料の3Dプリントを行っています。小売店では、プリントされた力覚センサーをマットの中に組み込んで、買い物客同士の立ち位置が近づきすぎたときにアラートを発生させることができます。
全体として2020年は、プリンテッドエレクトロニクスにとって刺激的な年でした。製造業者、そして最終的には消費者に真の価値提案を提供する、フレキシブル・ハイブリッドエレクトロニクスなどに注力する動きが見られました。 IDTechExは、今後数年の間に、スマートパッケージ、ウェアラブル、自動車内装、消費財などのアプリケーションで、プリンテッド・フレキシブル・ハイブリッドエレクトロニクスがますます採用されると予想しています。
IDTechExは、長年に渡り、プリンテッド・フレキシブルエレクトロニクス業界の先進技術調査を続けています。本ハイライトで紹介した技術動向は、関連調査レポートで詳しく解説しています。
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