新しいスーパーキャパシタ業界の詳細分析

Dr Peter Harrop
新しいスーパーキャパシタ業界の詳細分析
2010年の上位10社のスーパーキャパシタメーカーには中国企業は入っていませんでした。2020年では、スーパーキャパシタメーカーの40%が中国企業です。これは、世界最高レベルの研究開発、世界最大の市場の一つであること、強力な投資、政府の支援(保護貿易など)によって実現されました。しかし、最近米国で700万ドルの追加注文が発生したキャパシタ・スーパーキャパシタ・ハイブリッドの分野では、中国は首位の座を譲っています。IDTechExは、スーパーキャパシタの最新市場動向を網羅した調査レポート『スーパーキャパシタ 市場、技術ロードマップ、機会 2021-2041年』を、リリースしました。
 
IDTechEx のCEO Raghu Dasは、「スーパーキャパシタメーカーは、かつて、エレクトロニクス向けの小型のスーパーキャパシタを製造するメーカーと、典型的な2.7V 3000Fシリンダーのような電気工学製品向けの薄型または円筒型のスーパーキャパシタを製造するメーカーに分かれていました。しかし、今は違います。さらに大きなスーパーキャパシタの大規模市場が急速に登場しつつあります。大型スーパーキャパシタの最初の大きな成功例は、約20Whのボックスカー向けストップスターターで、500万個を超える製品が販売されました。このように、メンテナンスの必要がなく、より多くの電力を蓄えることができ、電力損失がより少ない新しい製品を求める自動車メーカーの数は、いまだに増え続けています。この論理の自然な流れは、ピークシェービングと加速向上を実現するためにより大型(30~100Wh)のスーパーキャパシタが新たに導入されることです。純電気自動車によってハイブリッドカー市場が破壊されない限り、まずはマイルドハイブリッドカーのバッテリーで導入が進み、次にフルハイブリッドカーで導入され、最終的にはリチウムイオンバッテリーが完全に置き換えられる」と予想しています。
 
大型の新しいスーパーキャパシタが登場しています。電車向けに1kWhのスーパーキャパシタが登場し、また、病院やデータセンターの無停電電源装置として1MWhのスーパーキャパシタが登場し、ピークシェービング能力が2倍になりました。通常、小型のスーパーキャパシタが標準化されて簡単に製造できるようになるには長い時間がかかり、それらのほとんどは1セント/ファラッド以下の価格で商品化されます。IDTechExの調査によれば、スーパーキャパシタメーカーの89%がそうした製品を製造しています。
 
特殊な商品として、150℃で機能する航空機/軍事用のバッテリ・スーパーキャパシタ・ハイブリッド(BSH)タイプの小型スーパーキャパシタや、リップル性能がタンタル電解コンデンサーよりも優れ、サイズと重量が1/5~1/10に小型化され、時計やスマートカードに組み込める特殊な形状の、キャパシタ・スーパーキャパシタ・ハイブリッドタイプの小型スーパーキャパシタがあります。-40℃~80℃の温度環境で機能し、1つのセルで3Vの電圧を取り出せるこれらの製品は、一般的ではありませんが、需要があります。
 
バッテリ・スーパーキャパシタ・ハイブリッド(BSH)は、ほぼすべてリチウムイオンキャパシタです。BSHは、純粋なスーパーキャパシタと比べ、エネルギー密度が高く、ライフサイクルは実質無限大で、電荷保持性能に優れています。そのエネルギー密度は、純粋なEDLCスーパーキャパシタの数倍にも達します。BSHは、ほとんどの場合、エレクトロニクス向けの小型ユニットに限られています。IDTechExの調査によれば、現在、スーパーキャパシタメーカーの24%がBSHの製品ラインナップを取り揃えており、BSHの32%が中国で製造されています。BSHについては、中国のスーパーキャパシタメーカーが商業的に最も成功を収めています。この分野では中国が世界をリードしていますが、中国企業が大型のBSHを大量に製造していることがその一因となっています。
 
いくつかの企業は、自社のスーパーキャパシタが「グラフェン」であることを誇らしげに公表しています。これは、このスーパーキャパシタが不燃性で、毒性が比較的低く、揮発性の高い有害な発がん性物質であるアセトニトリルが使用されておらず、直列抵抗が改善され、純粋なEDLCにおける電圧とエネルギー密度に優れていることを意味します。これらの優れた特性を考えると、価格が高いのも納得がいきます。
 
Raghu Dasは、さらに「IDTechExの調査によれば、10年前はグラフェン版の製品を提供するメーカーは一つもありませんでしたが、現在、スーパーキャパシタメーカーの8.75%がグラフェン版の製品を提供しています。グラフェンを使用しているメーカーの43%は中国の企業で、数の上では世界をリードしています。しかし、グラフェン製スーパーキャパシタの研究で世界をリードしているわけではありません。それらの企業の大部分は、リチウムイオンバッテリーや鉛蓄電池が過去最高のエネルギー密度(100Wh/kg以上)のスーパーキャパシタに置き換えられることによって新たに生まれる大規模市場を当てにしています。研究段階では、通常、疑似容量を増やすことでそのような高いエネルギー密度を実現しますが、新しい商用100Wh/kgリチウムイオンスーパーキャパシタ技術を完成させた例もいくつか存在します。スーパーキャパシタ材料の研究の33%はグラフェンが中心となっており、その次がカーボンナノチューブ、さらにその次が有機金属フレームワークとなっています」と、言っています。
 
大型のスーパーキャパシタは製造がさらに難しいですが、収益性は高く、2021年から2041年における実現可能な市場の大部分を占めると考えられています。大型のスーパーキャパシタは、小型のものとは異なり、通常、最適な安全動作を実現するための総合的なパワーエレクトロニクス、およびインテリジェントに応答するためのマイクロプロセッサーが付属しており、多くの場合、冷却システムが付属しています。これまで、大型のスーパーキャパシタを製造しているメーカーはごくわずかでしたが、現在、スーパーキャパシタメーカーの47.5%が大型のスーパーキャパシタを製造しているとうたっています。しかし、それらの多くは単に業界の中だけの話であり、ウェブ上ではウィッシュリストにとどまっています。そうした企業の34%は中国の企業です。しかし、この分野にいち早く参入したにもかかわらず、市場で優位に立っているわけではありません。これは、中国政府が電車やバスなどの部品をすべて中国国内で製造するよう要求しており、大型のスーパーキャパシタの需要が中国国内に偏っているという事実に裏付けられています。一方、IDTechExの調査レポート『スーパーキャパシタ材料およびフォーマット 2020-2040年』で取り上げたスーパーキャパシタ自動車やスマートスキンといった極めて急進的な先端技術の研究に関しては、中国は非常に後れを取っています。
 
Raghu Dasに次にようにコメントしています。「吸収合併は今後も続くと思われます。2045年までに、10億ドル規模のスーパーキャパシタ市場が登場するかもしれません。私たちが分析した実現可能な市場への参入が大きく進めば、そのような規模の市場はもっと早く登場するでしょう。過去の失望を考えると、現在予想されている市場の増加傾向が続けば2041年には市場規模が70億ドルに達すると予想されます」
 
 
IDTechExは、スーパーキャパシタ関連で2種類の調査レポートを発行しています。
また、多くのエナジーストレージ関連の調査レポート発行しています。
 
 
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