材料の危機的状況におけるモーターメーカーのあり方

材料の危機的状況におけるモーターメーカーのあり方

材料の危機的状況におけるモーターメーカーのあり方
この2年間、多くの業界は生産ラインの停止や半導体不足、サプライチェーンに関わる数々の問題に見舞われてきました。動揺の中で電気自動車(EV)は明るい光となっています。2021年世界のEV販売台数は2020年と比較して約80%増加(2020年は2019年から44%増)しました。マイナス要因が見られる中でもEV用部品の需要は大きく伸びているのです。多くのニュースでバッテリーパックが注目されています(そうなるのも当然です)が、電動モーターもEVの動作にとって同様に重要なものです。EV用モーターは希土類、銅、アルミニウム、鋼鉄など多数の材料から構成されています。いずれの材料もこの2年間に価格が急騰しており、モーターメーカーの利益率に影響を及ぼしています。モーターの種類の変更はこの問題にどう役立つのでしょうか。また、どのような方法がすでに採られているのでしょうか。
 
IDTechExは電気自動車用の電気モーター市場を綿密にフォローしており『電気自動車用電気モーター 2022年-2032年』などの調査レポートや未来のモビリティ プラットフォームを通じて業界のモーターメーカーへの継続的なインタビューやプロジェクトを提供しています。

モーター材料の値上げ

EVで広く使用されているモーターは永久磁石(PM)モーター、誘導モーター、巻線型モーターに大きく分類できます。いずれのモーターの場合もステーター(固定子)に銅線を巻き付けるのが一般的ですが、ローター(回転子)に違いがあります。PMモーターでは希土類磁石を、誘導モーターでは銅製やアルミニウム製のかごまたは巻線を、巻線型モーターでは銅の巻線を使用しています。種類ごとにそれぞれ長所と短所がありますが、材料のコスト面では相当な差があります。過去2年間の材料価格の変動を見ると、この差はさらに大きくなります。2022年1月時点で、ネオジム(主な磁石用希土類)の価格は2019年と比較して200%以上、銅は59%、アルミニウムは62%、鋼鉄は24%上昇しています。
 
2021年に材料価格が劇的に高騰. Data source: IDTechEx, Trading Economics
 
このような価格変動はモーターメーカーや自動車メーカーにとって深刻な問題となる可能性があります。実際、モーターメーカーの日本電産は2021年の第4四半期に営業利益の減少を発表しており、その原因の1つとして銅価格の上昇を挙げています。EV用モーターには一般的に5~10kgの銅が使用されており、BOM(部品表)の大部分を占めています。使用量はモーターの種類によって異なりますが最も多いのは巻線型モーターです。PMモーターにおいて価格問題はより顕著に現れます。PMモーターには1~2kgの磁石が使用されており、ネオジムの価格は銅の平均13倍もする上に、200%もの大幅な価格上昇により、問題はさらに悪化しています。EV用モーターに使用する材料の選定はBOMにとって極めて重要であり、結果として得られる利益にとっても重要な事項となります。性能を少し落としてまで材料の利用方法を変更する価値はあるのでしょうか。

モーターの種類の移行

2021年においてはEV用電動モーターの83%がPMモーターであり、2020年から6%増加しています。一般的にPMモーターは出力密度と出力効率が最も高く、希土類の価格も過去10年間(2020年、2021年まで)かなり安定しています。PMモーターがシェアを伸ばしている大きな理由は、テスラがModel 3以降のモデルで誘導モーターに代えてPMモーターを採用していることです。しかしながら2011~2012年の希土類の高価格と激しい価格変動のために、一部のメーカーは代替品を採用しています。アウディのe-tronではローターにアルミニウムを使用した誘導モーターが採用されています。またルノーは巻線型モーターを使用しています。さらに最近ではBMWが第5世代のドライブシステムでローターに銅線を巻き付けた巻線型モーターを採用しています。
 
現在のEV市場の主流は永久磁石モーター。 Source: IDTechEx - 『電気自動車用電気モーター 2022年-2032年』
 
巻線型モーターと誘導モーターでは高価な希土類の使用量が減少していますが、同じく価格が高騰している銅の使用量が増加する可能性があります。一部では銅の代わりにアルミニウムを使用することでコストをさらに削減できないかという議論が起こっています。アルミニウムは銅よりも軽量で安価ですが、導電性が低いため使用量を増やさざるを得ません。つまりアルミニウムの巻線を使用すると重量とコストを削減できるものの、容積出力密度が犠牲になります。にもかかわらず一部の企業では今でもこのアプローチが選択されています。たとえば英国を拠点とするメーカーAdvanced Electric Machineでは、希土類や銅の巻線を使用せずアルミニウム製巻線を圧縮成形することで、占積率を犠牲にしない方法を採用しています。

まとめ

一般的に電動モーターは成熟した技術であり、コストの大部分はBOMにより決まっています。EV市場が成長するにつれ、そして材料価格の変動が続く場合、近い将来に磁石を使用しないモーターを採用するメーカーやティア1が増えても不思議ではないでしょう。現在、中国が希土類を輸出規制の対象としていることもあり、そうした企業の多くは依然としてPMモーターを使用することになりそうです。したがって世界市場の大半がその技術を使い続けることになります。他の領域においては電動モーターの市場と種類がどう進化するのかが興味深いところです。
 
IDTechExの調査レポート 『電気自動車用電気モーター 2022年-2032年』で、電気自動車用モーター市場におけるOEMの戦略、トレンド、新技術について詳しく解説しています。2015年から2020年の間に販売された250モデル以上ものEVを収録した膨大なモデルデータベースは、モーターの種類、性能、熱管理、市場シェアの詳細な市場分析を行うのに役立ちます。自動車、二輪車、小型商用車(バン)、トラック、バスを対象に、ユースケースやベンチマークを用いながら、技術と市場の考察を行っています。アキシャルフラックスモーターやインホイールモーターといった先進技術に関する2032年までの市場予測も掲載しています。
 
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