カーボンナノチューブの非エネルギー貯蔵用途 : バッテリーの先へ

カーボンナノチューブの非エネルギー貯蔵用途 : バッテリーの先へ
価格低下と生産量増加は、カーボンナノチューブ(CNT)にエネルギー貯蔵以外のコスト重視の用途での機会をもたらしている。
 
車両電動化の加速が追い風となり、CNTはリチウムイオン電池(LiB)の正極での重要な導電性添加剤として、急速に注目を集めています。エネルギー分野のサプライチェーンで主導権を握ろうと企業が競争を繰り広げる中、この機運に乗じてCNTの生産規模は世界全体で急拡大していますが、CNTの可能性はバッテリーをはるかに超える域にまで広がっています。
 
本記事では、生産能力拡大が業界の状況をどのように再構築し、LiB市場以外のさまざまな応用分野でのCNT採用に新たな可能性をもたらしているかをIDTechExが探ります。
 
IDTechExの調査レポート「カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業」では、CNTの市場状況を詳細に分析し、主な応用分野、業界の主要プレーヤー、用途別に分類されたCNTの需要(tpa)、市場価値(USドル)に関する10年間の詳細予測を提供しています。CNTは導電性添加剤として、リチウムイオン電池における革新的な材料としての地位を確立しており、市場成長がリチウムイオン電池産業の急速な拡大と密接に連動するとIDTechExは予測しています。
 
需要急増に伴う、生産能力の拡大
 
技術進歩と市場需要の変化を背景に、CNTの世界全体の生産能力は、過去20年間で劇的に拡大しています(年平均成長率は22%)。2000年代初めのCNTは、大部分がラボスケールの生産で、生産能力は初期需要を上回っていました。CVD(化学気相成長法)などの合成法の成熟化と普及に伴い、商業生産能力は拡大から安定化の段階へと入りました。エンドユーザーが材料を認定し、さまざまな用途に付加価値を見出したこともその背景にあります。
 
CNTがリチウムイオン電池の導電性添加剤として急速に普及したことを契機に、世界全体の生産能力は、年間数万トンに急増するなど、飛躍的に拡大しました。パートナーシップや垂直型サプライチェーンを通じてエネルギー貯蔵市場に供給を行う大手メーカーも登場してきています。
 
MWCNTの過去と将来の世界的な生産能力概要。出典:カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業 - IDTechEx
 
近年、大手企業が生産能力を拡大しています。韓国のLG化学がその代表的な例で、2023年半ばには年間1,700 tpaだった生産能力を、2024年末までに6,200 tpaへ増強しました。
 
計画・発表されている拡張を考慮すると、世界全体の生産能力は今後数年で2025年比で1.7倍に拡大する見通しです。次の拡張の波を牽引するのは、シーナノなどのマーケットリーダーや、材料供給の規模を急速に拡大してきた豊富な実績を持つハンツマンなどCNT市場への新規参入企業です。
 
MWCNTはどのような用途で使用されるのか?
 
CNTがリチウムイオン電池の導電性添加剤として採用されたことは、量産への大きな可能性を秘めており、CNT市場の構造をすでに変えつつあります。計画されている生産能力の急増に加え、業界再編が進んでいることにも変革の兆候が表れています。特に、大手企業は戦略的買収を通じて基盤を拡大しています。例えば、キャボットは2021年にSUSNを買収し、カーボンブラックなど隣接市場から得た専門知識を活用しています。
 
最も直接的で測定可能な影響のひとつが、材料コストの下落圧力であり、これによりCNTのコモディティ化が進み、利益率の低下が進むと見られます。この流れは、これまで利益率が1ドル/kgを下回ってきたカーボンブラック業界に酷似しており、現在のCNT分野での課題や競争の動きを浮き彫りにしています。材料コスト下落と生産能力拡大が重なることで、リチウムイオン電池以外の市場にCNTが普及する新たな機会が開かれようとしています。
 
想定されるさまざまな用途において、CNTはカーボンブラックやグラフェンなど既存のナノカーボンと競合することになります。多くの業界では、高性能添加剤への上乗せコストを受け入れにくいため、コストも依然として決め手となる要因です。鉄筋コンクリートやアスファルトはその最たる例です。使用量が多く、利益率も低いため、価格上昇に対してあまり寛容ではありません。
 
タイヤセクターでは、この課題が大きな規模で浮き彫りになっています。CNTによってナノ粒子の排出削減に寄与するという有望な研究成果があるものの、低コストで信頼性があり、生産・流通を支えるグローバルインフラを備えていることから、カーボンブラックが支配的な地位を維持する状況が続いています。
 
そのため、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の採用機会は、特殊な性能上の利点が求められる用途に左右されます。IDTechExの本レポートでは、CNTが高い機械的強度と優れた熱伝導率の両方を実現することから、強化複合材料を特に有望なユースケースとして挙げています。こうした特性により、除氷機能を組み込んだ高分子複合材料などの先進的なソリューションを実現します。風力タービンブレード、航空宇宙構造物や、その他の先進エンジニアリング部品などが応用先として想定されます。このような用途では、CNTの性能上利点がコスト面の課題を上回り、既存材料との差別化を実現する手段となります。
 
 
MWCNTとSWCNTの多様な応用分野での市場成熟度レベルの評価。出典:カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業 - IDTechEx
 
SWCNTの未来
 
革新的で期待の高いCNT用途の中には、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の特性から特に恩恵を受けるものもあります。SWCNTは多層系に比べて感度と選択性が極めて高く、調整性の高いガスセンサーから量子コンピューティングシステムの部品まで、画期的な技術を実現するものとして有望視されています。
 
このような高度な特性から、SWCNTは次世代の電子用途やセンシング用途の鍵を握る材料と位置付けられています。要求される性能が現在主流のCNT製品で実現できるレベルをはるかに超える分、コストとしては割高になります。
 
しかし現時点では、急速に拡大しているリチウムイオン電池セクターへの供給を目的として、世界の生産能力の大半は依然として多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に集中しています。シーナノをはじめとする大手メーカーがSWCNT生産への戦略的進出を発表し、オクシアルなど既存のマーケットリーダーも事業拡大を続けるなど、その流れは変わり始めています。IDTechExのレポートでは、サプライヤーについて詳細な分析を提供しており、製造プロセス、用途の重点分野、市場全体での材料性能のベンチマーク評価をご覧いただけます。
 
さらに詳しくはIDTechExの最新調査レポート「カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業」 でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExのその他レポートは、こちら でご覧いただけます。

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