CO2&廃棄物由来バイオプラスチック:サステナブル・マニュファクチャリングの開拓

James Kennedy
Hand holding a recycling garbage bin with lots of waste packaging
世界が従来型プラスチックの環境問題に取り組む中、有望な解決策とされているのが、二酸化炭素(CO2)と廃棄物を原料とするバイオプラスチックです。この新たなサステナブル市場は、温室効果ガス排出削減と廃棄物管理という重要な地球規模の課題に取り組もうとしており、科学者や企業は、CO2と廃棄物を有用なバイオプラスチックに変換し、プラスチックの生産・消費方法に革命をもたらす技術を開拓しています。
 
バイオプラスチック市場についてまとめたIDTechExの最新調査レポート「バイオプラスチック 2025-2035年:技術、市場、有力企業、予測」では、バイオベース原料由来のプラスチック・非生分解性プラスチックの全領域を調査しています。
 
課題認識:プラスチック・CO2・廃棄物
 
従来型プラスチックは、主に石油や天然ガスなどの化石燃料を原料としています。このプラスチック生産はエネルギー集約型であり、温室効果ガス排出の大きな要因となっています。世界経済フォーラムによると、プラスチック産業は世界石油消費量の約8%を占めており、現在の傾向が続けば、2050年までに20%に増加すると予測されています。
 
さらに、プラスチック廃棄物は深刻な環境問題となっています。毎年800万トン以上のプラスチックが海に流れ込み、海洋生物や生態系に悪影響を与えています。世界でリサイクルされているプラスチックはわずか9%程度で、残りは埋立地や環境中に埋め立てられています。廃棄物管理とCO2排出量削減という2つの課題から、CO2や廃棄物を原料とするバイオプラスチック開発など、別の解決策が模索されています。
 
バイオプラスチックの生産能力は2035年には世界のプラスチック生産の1.7%を占める見込み。出典: IDTechEx
 
CO2由来バイオプラスチック
 
CO2 をバイオプラスチックに変換するには、産業廃棄物から排出される二酸化炭素や大気中から直接回収した二酸化炭素を原料にポリマーを生産する必要があります。この手法は、大気中へのCO2 放出量削減を目的としており、プラスチック生産の豊富な原料供給源創出にもつながります。
 
この技術の一例が、ニューライトテクノロジーズが進めている事業です。カリフォルニアを拠点とする同社は、大気中から回収した二酸化炭素と農業廃棄物から発生するメタンを合成させてエアカーボン(AirCarbon)というバイオプラスチックを生産するプロセスを開発しました。エアカーボンは熱可塑性物質であり、包装資材から家具まで、さまざまな用途に使用されています。ニューライトによれば、エアカーボンを1kg生産するごとに88kg分のCO2を分離回収でき、炭素汚染を有用な資源へと変換する効果的な方法であるということです。
 
同様にドイツの材料科学企業であるコベストロも、CO2 を原料にした、ウレタンプラスチックの主成分であるポリオール類の生産に取り組んでいます。cardyon®という同社の製品は原料の最大20%にCO2 を使用しています。この取り組みは、どうすればCO2 を不要な産物から有用な資源に変換できるかを示す好例であり、同時に循環型経済に貢献できることを例証しています。
 
廃棄物由来バイオプラスチック
 
このほか、バイオプラスチック業界では新たに廃材のバイオプラスチックへの変換という別のアプローチも浮上しています。この取り組みは、持続可能なプラスチックに対する需要や廃棄物処理のフローを活用したいというニーズに対応するという狙いがあります。
 
多くの市場参入企業がこのアプローチを利用してバイオプラスチックの生産を目指しています。例えば、カリフォルニアを拠点とする企業のマンゴー・マテリアルズは、埋立地や下水処理場などの排出源から放出される温室効果ガスのメタンから生分解性バイオプラスチックを生産しています。メタンから生分解性バイオプラスチックであるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を合成しているのです。ほかには、ビオファセのような、アボカドの廃棄物からプラスチックを製造している企業もあります。オランダのPAQUESの一部門であるPAQUES biomaterialsは、廃水や有機残渣を生分解性プラスチック(主にPHA)に変換することに注力しています。一方、AgroRenewでは、ミクロンサイズに細かく粉砕した農業廃棄物をバイオポリマーに変換するプロセスを用いて、スイカ、カボチャ、カンタロープメロンの残渣などの農業廃棄物を完全生分解性プラスチックへと変換しています。
 
廃材からバイオプラスチックを生産するというコンセプトは、プラスチック生産と廃棄物処理の双方に対する持続可能な解決策であるように思えますが、課題や潜在的欠点がないわけではありません。廃棄物をバイオプラスチックに変換するプロセスは大量のエネルギーと水を必要とする資源消費型産業になる可能性があり、環境面での利点が打ち消されてしまうのではないかという批判の声が上がっています。また、多様な廃棄物の収集、加工、精製に必要なインフラは高コストで非効率である可能性もあり、これら技術の全体的なスケーラビリティや採算性が疑問視されています。
 
サステナビリティとスケーラビリティ
 
CO2からプラスチックを、廃棄物からバイオプラスチックを作ることは、CO2や廃棄物が原料となるためプラスチックの環境への影響を軽減する手段となり、同時に化石燃料への依存度を下げ、温室効果ガス排出を削減することができます。しかしながら、これら技術のスケーラビリティは、依然として重要な課題の1つとなっています。これらのプロセスが実現可能であることはニューライトテクノロジーズやコベストロなどの企業が実証済みですが、世界全体の需要に対応できるようなスケーラビリティにまで拡大するには、相当の投資とイノベーションが必要になります。CO2や廃棄物からバイオプラスチックを生産するのに必要なコストは、現時点では従来のプラスチックの生産コストよりも高く、短期的に見ると導入を阻む大きな要因となります。また、CO2回収や廃棄物からのバイオプラスチック製造のためのインフラを整備し、既存製造システムに組み入れる必要もあります。最大の課題となるのは、スケーラビリティ拡大の制約をあまり受けない、価格競争力の高いバイオプラスチックとの競合が発生することです。
 
スケーラビリティとコストの課題を解消するには、政府、業界、研究機関の相互協力が不可欠となります。カーボンプライシングや持続可能な材料への補助金などの奨励制度がバイオプラスチック導入を加速させる可能性があり、これらプロセスの効率性やスケーラビリティを向上させるには、研究開発への投資が続いていくことが極めて重要です。
 
結論として、 CO2由来や廃棄物由来のバイオプラスチックは、温室効果ガスの排出削減と廃棄物の処理という、現代における最も差し迫った2つの環境問題に対する有望な解決策となる可能性があります。乗り越えなければならない大きなハードルはあるものの、その潜在的な利点から、これら技術はサステナブル・マニュファクチャリングの未来に向けて注力すべき重要な領域となっています。企業がこれらプロセスのイノベーションとスケーラビリティの拡大を続ける中、こういった資源からできるバイオプラスチックは、より持続可能性と循環性の高い経済を築く上で重要な役割を担うに違いありません。
 
バイオプラスチック市場予測
 
IDTechExのバイオプラスチックに関する最新市場調査レポート「バイオプラスチック 2025-2035年:技術、市場、有力企業、予測」では、技術開発とトレンド、工場キャパシティ、業界情報、企業活動、市場情報、提携情報、セグメント化されたポリマー生産予測などの独自分析を含め、バイオプラスチック市場情報を深く掘り下げ、規制による影響などを分析しています。

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