導電性インク: 自動車業界に大きな成長機会あり

導電性インク: 自動車業界に大きな成長機会あり

Dr Khasha Ghaffarzadeh
導電性インク: 自動車業界に大きな成長機会あり
自動車業界が、導電性のペーストや類似の材料の大きな市場機会として注目されています。また太陽電池市場も有力です。世界的な主要ペースト供給業者のほとんどは自社組織や製品ポートフォリオを再編成し、このトレンドをつかもうとしています。
 
この記事では機能性ペーストの供給ビジネスに影響を与えている、または与えるであろう自動車業界における様々なトレンド・用途について考察します。さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート 『導電性インクマーケット 2019年-2029年:フォーキャスト、技術、プレイヤー』をご覧ください。 この調査レポートは導電性インク及びペースト市場についての最も包括的で、最も信頼できる展望を提供し、アプリケーション別及び材料・インクの種類別の今後10年の詳細な市場予測を提示します。市場予測はインクレベルのトン数と売上高で示します。
 
いくつかの大きなトレンドが、これまでにはなかったような形で自動車業界を変えようとしています。自動車はますます電化が進んでおり、このことがパワートレインやエネルギー源の変化につながっています。特にインバーターやDC-DCコンバーター、車載充電などのパワーエレクトロニクスデバイスの数や機能レベルを高めることになります。
 
同時に自動車は自動化が進み、より安全性が向上しています。実際、完全自動運転という長期的なゴールに向かう途上で多くの高レベルなADASを実装することが必要になります。このトレンドはセンサーと制御ユニットの両面で1台の車両に搭載される電子機器の増加を確実にもたらします。車両のコネクティビティの向上もこのトレンドを更に加速させるでしょう。
 
快適機能やデザイン性の改善も今後継続していきます。シームレスに統合されたヒューマンマシンインターフェース(HMI)やシートに内蔵したヒーター、より効率的な曇り止め、デザイナー照明などはそのトレンドを証左する一例です。

電化(Electrification)

IDTechEx リサーチでは、2029年には電気自動車が約4,000万台に達すると予測しています。これには48Vのマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッド、完全なハイブリッド、完全な電気自動車など、様々なレベルの電気自動車が含まれます。これらの車両ではバッテリーを充電したり、高電圧のバッテリー出力を低電圧の補助エレクトロニクスの入力に変換したり、電気モーターの駆動やモーターからの電力回生などに使用するためのパワーコンディショニング(パワーエレクトロニクス)ユニットが必要になります。
 
それぞれのパワーコンディショニングユニットは一連の異なる要件を満足しなくてはなりません。そのため扱うパワーレベルに加え、動作温度や熱衝撃なども異なります。このような条件の多様性は半導体材料(Si、SiC、GaN)やデバイス構造(MOSFET、IGBT)、パワーモジュール/パッケージング材料など多くの技術的な選択肢を必要とします。
 
導電性ペーストはパッケージング材料、特にダイの接着のほか、基板の接着に使用される可能性もあります。現在の主流はSACはんだでこれは鉛フリーで低コストです。また試作やテストを経て様々な構成のものが利用できるようになっています。しかしながら、いくつかの重要なケースでは性能の要件が機能を上回っています。性能のトレンドは高い動作温度と繰り返し寿命に向かっています。より高い温度耐性はダイの数や面積の削減とモジュールやパッケージサイズの小型化をもたらします。
 
焼結金属ペーストはこのような厳しい性能要件に対応して開発されました。7年を超える開発期間を経て実用化されるに至りました。このように長い開発期間を要したのは、自動車業界が高い責任リスクを負っているため拙速な導入はできないこと、モジュールや半導体メーカーを含めたバリューチェーンの調整が必要であったことが理由です。この技術はより高度(つまり、高性能、高コスト)なものとして位置づけられています。コストが高くなるのは材料コストのほか、焼結プロセス/設備の変更や電極が必要になるためです。
 
それでもユースケースが今後も広がると考えられるため、市場はまだ成長の早期段階にあるといえます。この技術そのものも現在、進歩を続けています。この技術の進化はフィラー(銀、銅、ナノマテリアル、マイクロマテリアル、ハイブリッドマテリアル)や焼結条件(高速、低速、常圧)、ペースト以外の形状(ドライのトランスファーフィルム、ディップなど)の選択に加え、低コスト化、より高い接着力やより大型のダイへの対応などです。これは注目しておくべき分野です。供給業者の数は増加しておりビジネスは変化しています。
 
焼結金属ペーストについて、さらに詳しくは『導電性インクマーケット 2019年-2029年:フォーキャスト、技術、プレイヤー』をご覧ください。 本レポートでは25を超えるアプリケーション分野を詳細に評価しています。市場のニーズや要求事項を分析し、ビジネスダイナミクス、市場リーダーと技術変革の傾向、競合ソリューション、最新の製品/プロトタイプのローンチ、主要プレーヤー、市場予測(量と金額)について考察します。
 
Examples of automotive parts in use or in development using conductive pastes. Source: IDTechEx. To learn more please visit Conductive Ink Markets 2019-2029: Forecasts, Technologies, Players

高い安全性と自動化

ペーストは乗員センサーや曇り止めなどの簡単な安全機能では既に利用されています。このうち乗員センサーはスクリーン印刷された製品で乗員の存在や重量を計測してエアバックの展開システムの動作を適切に制御するもので広く利用されています。導電性ペーストは自動車業界でしばしば安全や監視機能用に使用されているLTCCベースの基板でも利用されています。高い信頼性や耐熱性、耐湿性、耐振性からこのようなセラミック基板が選ばれています。
 
このトレンドは今後も加速していく可能性が高く、基板の数も増加するでしょう。今日、個別に独立した電気システムが多数存在しますが、将来的にはあらゆるデータを扱い、処理するための集中制御の構成になっていく可能性があります。全ての基板がLTCCを使用している(あるいは、するであろう)わけではありませんが、LTCCや類似の材料はこの大きくなりつつあるトレンドのメリットを享受すると考えるのが適切です。
 
車両で利用されるセンサーの種類も多様になります。多くのセンサーの技術はデバイス技術が確立されていなかったり、または主流の技術、あるいはアーキテクチャーや材料が定まっていない、といった流動的な状態にあります。実際そのようなセンサー技術の多くでは、高度で急速なテクノロジーのディスラプションによる進化が期待されています。ここではペーストの供給業者にもパッケージング材料や、ダイの接着ペーストとして、特にレーザーや通信のハイパワーのパッシベーションなど、高温が関係する用途では参入の機会が残されています。
 
一般的に自動車センサーと電気業界の不確実さや頻繁に変化する状況を考慮すると、ペーストメーカーは常に情報を収集し、継続するエコシステムとの関係を発展させていかなくてはなりません。また、評価技術のオプションや顧客の課題を理解することにコストをかけ、自社の強みを製品に生かしていかなくてはなりません。当社のチームがサポートいたしますので、ご質問等がございましたら遠慮なくお問い合わせください。

快適性や設計、デザイン性、そして省エネの改善

導電性ペーストは既に快適性や設計、デザイン性を改善していく長期的なトレンドの一部となっています。シートヒーターに使用されているペーストはその一例です。大面積のシートヒーターは全体が印刷で作られています。導電性ペーストは省エネやデザイン性を演出する照明として使用される高パワーLEDのダイの接着にも利用できる可能性があります。
 
新たなHMIへのペーストの応用は興味深いトレンドの一つです。この用途では特別な導電性ペーストによリインモールドエレクトロニクス(IME)を実現し、メカニカルスイッチを構造的に一体化した電子式に置き換えることができます。これにより、場所や重量を削減したエレガントなHMIとなります。この技術は実装が単純ではなく、長期の改善や開発時間を要します。しかしながら、このトレンドは長年にわたり積み上げられてきました。実際、過去の失敗を経て、LEDランプの曲面のプラスチックカバーに埋め込まれたヒーター(曇り止め)として既に実用化されています。車両のインテリアをターゲットとした実用間近の試作品も数多くあります。
 
自動車業界を変えつつある世界的なトレンドは、一般的に導電性ペーストの用途を広げる有利な材料となっています。PVなどのような目立った市場とは異なり、自動車用途は大変多様です。したがって、様々な導電性ペーストの配合を開発して、それぞれ異なるカスタマーベースにアプローチする必要があります。例えば、ペーストが焼結金属として振る舞ってダイとセラミックの接着や熱伝導、信頼性を改善したり、スクリーン印刷のほかマルチレイヤ―セラミックや厚膜基板のレーザートリミングされた金属ペーストとして使用される場合もあります。その他の事例ではPETや類似のフレキシブル基板の上にスクリーン印刷し低温で硬化したり、更には多層材料の一部として、熱成形プロセスにより非可逆的な延伸性や携帯性を示す必要があるかもしれません。用途の成熟度もそれぞれ大きく異なります。市場が確立され、性能改善が進んでいる用途もあれば、新たに出てきた、または技術的に流動的で明確な性能目標や性能の評価法すら確立していない用途もあります。
 
このことはペーストメーカーが汎用的な製品や、少しずつ改善してきただけの一つの強力な製品に労力を結集するのではなく、ソリューションをカスタマイズする技術力で裏付けられた広範な製品ポートフォリオを活用し、様々な用途をカバーすることが必要になることを意味しています。多様な用途やバリューチェーンを認識し、セグメント化し、考察し、それに積極的に取り組み、強力なサポート体制を世界中に構築できる組織力が求められているのです。
 
さらに詳しくは、IDTechExの調査レポート 『導電性インクマーケット 2019年-2029年:フォーキャスト、技術、プレイヤー』をご覧ください。 この調査レポートは導電性インク及びペースト市場についての最も包括的で、最も信頼できる情報を提供します。その大部分はインタビュー、企業訪問、カンファレンスや展示会、個人的なコミュニケーション等を通じて入手した情報に基づく知見です。さらに向こう10年間のセグメント、アプリケーション別及び材料別の詳細な市場予測を提示し、130社を超える企業を取り上げます。
 
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