カーボンナノチューブの成功の鍵を握る分散性
2025年7月15日
Dr Conor O'Brien
カーボンナノチューブ(CNT)が、エネルギー貯蔵や高分子複合材料(ポリマーコンポジット)などの用途で商業的成功を収めるには、CNTの分散性を効果的に高めることが不可欠です。CNTは高いアスペクト比と強いファンデルワールス力によって凝集するため、適切に管理しなければ性能低下を免れません。CNTの電気的、機械的、熱などの特性を最大限に活かし、なおかつ添加剤の使用量を減らして加工を容易にするには、分散の均一性と安定性が極めて重要です。市場の発展に伴い、分散性は単なる技術的課題ではなく、製品性能やスケーラビリティの鍵となる要素として認識されるようになっています。
IDTechExの調査レポート「カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業」 は、CNT市場の包括的な概要を提供しており、主要な用途分野、主要企業の詳細な分析、用途別に分類されたCNT需要(年間トン数)および市場価値(ドル)の詳細な10年間予測を掲載しています。10年以上にわたってナノカーボン分野を調査してきたIDTechExは、この進化し続ける市場に関して、貴重な分析と独立した第三者の評価を提供しています。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)はさまざまな用途で利用されていますが、その中でも特に影響力が大きいのが、エネルギー貯蔵や高分子系分野での添加剤としての役割です。電動化への需要が高まる中、CNT市場は急拡大しています。リチウムイオン電池においては、MWCNTの使用によって導電性と機械的強度が高まることで、エネルギーの高密度化、電極の厚膜化、動作条件の拡大が可能になります。本レポートでは、分散方法、バインダー適合性、添加剤の相互作用を詳細に分析するとともに、スーパーキャパシタ用途での最新動向についても解説しています。

分散性の主な用途
高分子母材単体に使用する場合でも、繊維強化複合材料に使用する場合でも、層間強度や静電放電性能の向上など、CNTは添加剤として数多くの有用な利点をもたらします。CNTは燃料系統や電子部品実装などの用途ですでに定評がありますが、さらに今後10年間で、エネルギー貯蔵分野での需要増加やコスト低下により新たな市場での採用が拡大すると期待されています。
ナノカーボンを高分子複合材料中で分散させるのには、多機能特性を付与するという目的があり、その中でも最も重視されているのが機械的特性です。破壊靭性は亀裂の偏向や架橋などのメカニズムによって高められます。一方、応力や歪みは界面接触を通じて母材からナノカーボン強化剤へと伝わります。その他には、耐衝撃性、層間せん断強度、圧縮強度などの機械的特性の向上も期待できます。機械的特性以外では、パーコレーション閾値以上の少ない充填量(3wt%未満)によって導電性の付与が可能です。多機能導電性を備えることにより、電撃保護、除氷、熱管理などの用途にも採用の可能性を見出せます。
技術的課題
CNTの主な課題は、派手に宣伝されている卓越した性質を、どのように有形製品に組み込んでマクロスケールに変換するかということです。CNTは、引張強度、熱伝導性、電気抵抗性、電荷輸送能力など、優れた特性を数多く備えていますが、複合材料中に充填するだけで性能の向上を実現できるような魔法の粉では決してありません。CNTをポリマーに充填するにはマスターバッチが必要になる場合がありますが、エネルギー貯蔵用途では、CNTやカーボンブラックなどの炭素材料から構成される導電性スラリーを使用することが一般的です。
CNTの分散性については数多くの課題が存在します。高分子母材を通じてナノカーボンの均質な分散を実現するのは、特にプラスチック部品の成形(フォーミング、モールディング)においては、単純な作業ではありません。ナノカーボン添加剤を加えると、押出成形用複合材料の流量と粘度に影響が出る可能性があります。また、複数プロセスにわたる繊維積層工程では、新たな添加剤が入ることを考慮して硬化時間の調整が必要になる場合もあります。
2023年にカーボンブラック大手プレーヤーのビルラに買収されて以来、ナノシルは導電性ポリマー向けにカーボンブラックとCNTを合わせたハイブリッド材料の開発に取り組んできました。このハイブリッド材料は2つの材料の隙間を埋めるものですが、特に分散性に関しては問題がいくつか残っています。CNTは高いせん断力を受けると分散しますが、カーボンブラックは低いせん断力で分散します。エンドユーザーにおける分散性の問題を解消するため、マスターバッチがPP、PC、HIPSで提供されており、どれにも合計30wt%のハイブリッドナノカーボンが充填されています。
ナノカーボン複合材料は万能だと誤解されがちです。1つの材料によってあらゆる特性をあらゆる母材で強化できると思われているのです。CNTのグレードや添加剤の使用量は用途によってさまざまに異なります。一般的に0.1~1wt%程度またはそれ以下の添加量でも最適な機械的特性の向上が見られますが、導電性に関して言えば、多くの場合はそれ以上の充填量が必要とされます。このように、機械的特性や導電特性などのさまざまな数値指標にわたって多機能性を最適化するのは困難ですが、熱伝導性と導電性については相補的に機能することがよく見られます。
商業的成功
CNTを活用する上での主な課題は、均質で凝集のない分散を実現することです。これは性能を最大限に高めつつ、充填量を少量に抑える上で極めて重要です。多くの企業が自社では効果的な分散を実現できると主張している一方で、この工程を第三者である専門業者に委託する流れが加速しています。専門業者として台頭してきているのがトーヨーカラーやナノリアルなどです。後者については、CATLやネオ・バッテリー・マテリアルズなどとの協業を進めています。
内部能力や自社開発による能力も見過ごすことはできません。CNTプレーヤー数社は下流工程にも進出し、バリューチェーンの獲得に努めているからです。LG化学は、エネルギー貯蔵分野向けに導電性スラリー用CNTの供給に向け、広範にわたる垂直型サプライチェーンを構築に成功しています。シーナノは製造能力で世界をリードしており、CNTの粉末とペーストの両方を市場に供給しています。IDTechExの分析によれば、同社の2018年から2024年の年間売上のうち、ペーストの売上が95%以上を占めており、CNTサプライヤーにとって下流工程への進出が重要であることが伺えます。
「カーボンナノチューブ 2025-2035年:市場、技術、有力企業」 は、CNT市場に関する包括的な分析を提供しています。IDTechExのナノカーボン分野における豊富な経験をもとに、技術的な洞察とインタビューに基づくアプローチを組み合わせ、客観的な市場予測、徹底したベンチマーキング評価、そして急速に進化する業界での主要企業の詳細な評価を掲載しています。
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