電気自動車- 課題が山積する中、記録的な成長を遂げる

Luke Gear
かつてイーロン・マスクは、宇宙ロケットを除くあらゆる輸送形態が電動化すると予測していました。2021年に電動の乗用車、トラック、バス、ボート、二輪車、エアタクシーの市場が新たな高みに辿り着いたように、この予測は現実のものになろうとしています。
 
IDTechExの電気自動車(EV)に関する最新マスターレポート「EV: 電気自動車、船舶、航空機 2022-2042年」では、8つの輸送市場を、バッテリー式電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド車の販売台数、バッテリー需要(GWh)、市場収益(10億ドル単位)など、90以上の予測項目に分けて取り上げています。
 
電気乗用車は今日最大の市場であり、2021年には販売台数が2倍以上増えて640万台を超えました。IDTechExでは乗用車がEV市場の売上収益の79%、バッテリー需要の83%を占めていることを踏まえ、この状況が20年後も続いているだろうと予測しています。その理由は規模の問題です。乗用車はその普及率と路上走行時の排出量に占める割合の高さから、長い間政府の政策の焦点となってきました。2021年の世界における乗用車販売台数が約8,100万台であったのに対し、中型および大型トラックは330万台、バスは20万台でした。
 
記録的な成長にもかかわらず、パンデミックによる非常に困難で予測不可能な2年間に加え、ウクライナでの悲惨な戦争が自動車および電気自動車市場に新たな課題をもたらしています。
 
新型コロナの制限を経て経済活動が再開され、ロシアに対する制裁で石油とガスの供給が制約される中、電力価格とガソリン価格が上昇しました。そのような中、自動車メーカーは電気自動車市場を前面に打ち出しています。しかい長引くチップ不足、中国での新たなロックダウン、原材料価格の上昇、ワイヤーハーネスなどのウクライナ製自動車部品の不足などの対処へも取り組んでいます。
 
多くの電気自動車メーカーでは、自動車価格の値上げや生産の後ろ倒し、生産調整により対応を始めています。値上げはわずかな額ではありません。テスラの場合、2020年にはモデル3のベースグレードが39,990ドルでしたが、2022年には46,990ドルになっています。3月には、リビアンが同社のモデルの価格を最大14,500ドル(R1T)引き上げると発表し、顧客と投資家から反発の声が上がりました。スタートアップ企業以外では、自動車大手のVWが、米国とヨーロッパにおける2022年分の電気自動車を事実上完売したと発表しています。
 
バッテリーは依然として車両の中で一番大きなコスト要素であり、その上昇の背後にある要因の1つがバッテリー原料、特にリチウムとニッケルの価格上昇です。この原因は原料不足や中国における新たなロックダウンだけでなく、ロシア・ウクライナ戦争にもあります。というのも、世界のリチウムのほとんどが中国で加工されており、世界におけるクラス1のニッケル供給量の5分の1近くをロシアが占めているからです。原料不足が続き、電気自動車用部品の供給を自動車セクターが使い尽くしていくと、同じ技術を使用する自動車以外のセクターにも影響が出るでしょう。
 
その一例として挙げられるのが、2042年までにバッテリー需要が2番目の規模になるとIDTechExが予測している電動トラック市場です(詳しくは「EV: 電気自動車、船舶、航空機 2022-2042年」を参照)。テスラのセミはクラス8のバッテリー式電動長距離トラックであり、当初は2020年に生産される予定でしたが、現在の目標は2023年になっています。セミには新しい大型セルの「4680」が必要ですが、バッテリーの生産量には限りがあるため、kWh当たりの利益率が高く需要の大きい乗用車向けが優先されています。この遅れにより、ボルボやダイムラー、パッカーなどのメーカーがテスラに追いつき、今ではBEVトラックの新型モデルの連続生産に入る準備が整っています。しかし、そうしたメーカー各社も同様の問題に直面する可能性があります。
 
もう1つの例が電動レジャーボートです。オフィスを離れて仕事をする時間が増えたことで、2020年と2021年に売り上げが急増しました。これには自動車用バッテリーセルがよく使用されています。たとえばBMWは、電動船外機メーカーであるトルキードや、商用船舶向けバッテリーパックのサプライヤーであるCorvus Energyに供給を行っており、主に自動車グレードのNMCパウチセルを使用しています。原料不足が続いた場合、業界各社は新たなサプライヤーとの取引を検討する必要に迫られることになるでしょう。
 
自動車以外のセクターのバッテリー需要はそれほど大きくはないものの、需要自体はあります。単にバッテリー開発に注力するのではなく、EVパワートレイン全体の効率の向上を図ることが鍵となります。これは、SiCパワーエレクトロニクス、モーターの効率向上、800Vプラットフォーム、ソーラーパネル搭載車体、配線の削減などを意味します。
 
IDTechExにとって明らかなことは、増え続ける課題にもかかわらず、電気自動車には依然として消費者からも政府からも非常に強い需要があるということです。課題が増える中においても、電気自動車への移行は続きます。
 
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