シリコンフォトニクスの新たな用途

Leo Charlton
いわゆるチップは、単に「チップ」と呼ばれるもの、やや紛らわしい「マイクロチップ」、技術的に堅牢な「半導体集積回路」、技術的な堅牢性でやや劣る「集積回路」などさまざまなものがあり、携帯電話、テレビ、自動車、ディスプレイ装置、電気製品など、実に多くの用途で使われています。チップは比較的高級な製品には不可欠なものです。今日使用されているチップのほとんどは電気的性質を利用していますが、他に選択肢となる物理システムがないわけではありません。IDTechExの調査レポート「半導体フォトニック集積回路 2023-2033年」では、チップスケールのフォトニックシステム(主な伝送信号として電気ではなく光を使用するもの)に注目し、その技術的能力や、フォトニック集積回路(PIC)の設計、製造に携わる主な有力企業、獲得可能市場について考察しています。これらの市場の中で筆頭に挙げられるのが通信業界であり、現時点では、同市場で創出される収益額は、他の市場をすべて合計した額よりも大きくなっています。通信業界がチップスケールのフォトニックシステムの継続的な開発を牽引していることは間違いありませんが、シリコンフォトニクス製品のビジネス面での将来性が大きいのは他の市場であるとIDTechExでは見ています。
 
各市場におけるPICの導入見通しついて by IDTechEx「半導体フォトニック集積回路 2023-2033年」. Source: IDTechEx
 
車載LiDAR向けシリコンフォトニクス
 
LiDAR(Light Detection And Ranging、光による検知と測距)が登場したのは随分前になりますが(最初の試作品は1960年代に製作)、シリコンフォトニクスが車載LiDARシステム向けの魅力的なプラットフォームであると認識され始めたのはごく最近のことです。LiDARシステムを差別化する方法の1つに、LiDARシステムで利用するビームステアリング技術があります。ビームステアリング技術には機械式やMEMS(微小電気機械システム)、フラッシュ、光フェーズドアレイ(OPA)、そのほか複数の方式を組み合わせたもの(例えばシリコンフォトニクスにMEMSを組み込んだもの)など、さまざまな方式があります。光フェーズドアレイ方式のLiDARは、世界中で開発されている最も一般的なソリッドステートスキャン技術であり、クアナジー(最も有名なプレーヤー)では近赤外(NIR)レーザー光源とToF測定プロセスを使用しています。短波赤外(SWIR)イメージセンサやFMCW(周波数変調連続波)検出方式によって性能とセンシング能力が向上したため、これらの技術を導入してLiDARシステムの開発に取り組もうとする企業が増えています。なかでもFMCW検出方式が特に重要です。というのも、この検出方法(出射光線の周波数が時間に対して変化する「チャーピング」という手法)を用いると、ドップラー偏移によって障害物の速度を正確に解析できるようになるためです。LiDARによって可能になる典型的な3Dセンシング(ToF測定によって障害物の空間的位置を判定)に加え、FMCW検出方式では、自動運転車に欠かせない効果的な4Dマッピングも可能となります。これに加えそのようなLiDARシステムをチップサイズにまでスケールダウンできることを考慮すると、PICは車載LiDAR市場で足掛かりを得るうえで独自の立ち位置にあります。IDTechExの調査レポートでは、これらを定量的に示し、2025年から2033年の車載PIC LiDARの年平均成長率(CAGR)の予測値は同期間の通信業界向けPICのそれを上回ると予測しています。
 
ポイントオブケア向けPIC
 
光の送受信と解析を1個のモジュラーシステム内に組み込んでいる小型デバイスは、診療所や病院でのポイントオブケア診断に特に役立つ可能性があり、IDTechExでは、同分野では今後10年でPICが著しく普及することが見込まれると見ています。1個のチップで導波路ごとに異なるバイオマーカーに対応できるよう多重化が可能なため、作業台スペースの大幅な節約につながるほか、カートリッジや持続血糖測定器などの従来の手法と比べて多機能化による使い勝手の向上が期待できます。しかしながら、PICの普及には従来の技術と価格面で対抗できるかなど、大きな課題があります。
 
「半導体フォトニック集積回路 2023-2033年」がカバーするエリア
 
自動車・生物医学市場セグメントにおけるPICの用途に関して、IDTechExの調査レポート「半導体フォトニック集積回路 2023-2033年」の中でより詳しく取り上げていますが、同レポートでは、LiDARやウェアラブルセンサー、運動感覚ハプティクス、ポイントオブケア診断の詳細な考察と、従来の各種技術との対比でのPICの普及予測も行っています。
 
世界のPIC市場の6つの異なる用途分野をカバーし、PICシステムの市場規模の観点から、2033年までの向こう10年間の分野別予測を提示しています。また、PICの設計・製造で使用される材料の評価のほか、システムとアーキテクチャの両面から性能・コストなどの重要数値指標の改善に大企業とスタートアップ企業がこぞって争っている開発の現状、市場の主要プレーヤーの製品の評価についても取り上げています。
 
フォトニック集積回路に関する動向をさらに詳しく理解するために、IDTechExの調査レポート「半導体フォトニック集積回路 2023-2033年」をご活用ください。
 
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