燃料電池: 航続距離の長いゼロエミッション車の必要性

燃料電池: 航続距離の長いゼロエミッション車の必要性

fuel cell car van and truck parked in front of solar panels and a hydrogen fuelling pump with wind turbines in the backdground
自動車業界の主要なプレーヤーは、ゼロエミッション車の開発と展開を競っています。パワートレイン技術は激動の真っただ中にあります。IDTechExの最新調査レポート『燃料電池自動車 2022年-2042年』では、オンロード車両における燃料電池の役割について解説しています。燃料電池システムは道路輸送用途に活用できるテクノロジーとしての可能性を秘めています。この用途ではゼロエミッションであることが必須ですが、バッテリーだけで駆動するパワートレインでは日々の需要にうまく対応できません。
 
道路輸送はすべての国の温室効果ガス排出量の主要な原因となっています。たとえば乗用車、小型商用車、トラック、バスは合計するとEU加盟国内における輸送関連の温室効果ガス排出量の約93%を占めています。同様に米国内でも輸送関連排出量の約85%が道路車両から発生しています。このような比率の高さにより、このセクターは政策立案者の確固たる標的となっています。
 
パリ協定の一環として設定された2050年の気候目標を各国が達成するには、道路輸送のほぼ完全な脱炭素化が不可欠であることが広く認識されています。また同様に重要なのが交通関連の排出によって現地の大気質や市街地の住民の健康に生じる影響への認知が高まりつつあることです。主要都市では内燃機関自動車の都心部への進入を禁止もしくは課税する動きが増えており、公共交通機関、配送車両、タクシーだけでなく自家用車の技術選択も影響を受けています。ゼロエミッションのソリューションはすべての道路車両セグメントに必要であり、その技術はこうした用途における日々の負荷サイクルに対応できる必要がありますが、そう簡単にはいきません。
 
バッテリーから電力を供給するソリューションはゼロエミッションパワートレインへの移行をリードしています。一方、現在の自動車用リチウムイオン電池のエネルギー密度ではバッテリー電気自動車(BEV)の1日の航続距離が積載できるバッテリーの最大重量とバッテリー搭載に利用できる車両内スペースの両方によって制限されています。
 
燃料電池システム(水素燃料電池を電気自動車のアーキテクチャに組み込んだもの)は水素燃料(車両内のタンクに高圧状態で貯蔵)と浄化された吸気の化学反応により車両を動かす電力を発生させます。燃料電池システムはバッテリーのみのパワートレインよりも優れたエネルギー密度を実現できるため、重量が同じ場合は航続距離が長くなります。この利点に大型のリチウムイオン電池の充電にかかる時間よりもかなり速く補給できる水素の可能性を合わせると、燃料電池自動車(FCEV)を運用する際の柔軟性はBEVよりも現在の内燃機関自動車に近いものとなります。一部の用途においてFCEVが現実的な唯一のゼロエミッションパワートレインのソリューションとなる可能性があります。
 
トヨタ、フォード、ホンダ、GM、現代自動車、フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMWなどの大手メーカーは、過去30年にわたり多額の投資をして燃料電池技術を進化させており、トヨタがFCEV「Mirai」の量産を開始した2014年からはその技術が実用化されています。
しかし乗用車の場合、これらの努力の集大成として2021年にFCEV車を生産しているのはトヨタと現代自動車の大手OEM2社のみであり、2020年に販売されたFCEVは1万台にも満たないという現実があります。それに比べてFCEVと同時期に開発が本格化したバッテリーEVは2020年に300万台以上を販売しています。燃料電池を使用する乗用車はこのセグメントのBEV技術が急速に向上しているため、捕捉するのが難しい動く標的を追いかけている状態です。BEVのパワートレインは車両の稼働寿命内にバッテリーを交換する必要があるという懸念があり、バッテリー火災に関連する車両のリコールも何件かありますが、FCEVについても燃料電池システムの技術が成熟するにつれ、同様の問題に直面することになりそうです。現代自動車は今年8月、異音問題に対応するため1万5000台のネッソ(2021年6月以前に販売されたネッソ全台)をリコールすると発表しました。同社はまた、走行距離25万キロメートル未満の燃料電池スタックの交換が必要なネッソの「買い戻し」プログラムも発表しています。ネッソがFCEVの全世界売上の半分近くを占めることを考えると現代自動車による品質欠陥はFCEVの支持者にとっての痛手となります。
 
FCEV車メーカー上位3社の市場シェア20. 出展: IDTechEx 最新調査レポート『燃料電池自動車 2022年-2042年』
 
FCEVの航続距離と燃料補給時の利点を考慮すると長距離トラックや低燃費バスの運行といったバッテリーのみのアーキテクチャを使用することで超大容量のバッテリーが必要となる負荷の高い用途で、燃料電池技術は大きな機会が近い将来に生まれることになりそうです。IDTechExのレポートはこれらのセクターにおける燃料電池自動車の配備状況を調査し、現在の進捗を考察しています。たとえば現代自動車はスイスで46台のFCEVトラックを使用して商用実験を実施しており、2025年までに1600台まで増やすことも計画しています。同社はまた米国での今後のFCEVトラック計画や、中国でのFCEVトラック4000台の受注についても発表しています。FCEVはまたバス市場にもある程度浸透しており、欧州では150台以上、米国では65台、中国においては3000台以上の燃料電池バスが運行しています。FCEVバスの発注が増えてと少なくともパイロット規模の実験が行われる程度まで需要が伸びていることを示唆しています。
 
燃料電池自動車は気候変動の目標を達成する役割を担う可能性があります。ただし、低排出の燃料電池自動車が商業的に採算の取れるものになるには、乗り越えるべき大きな障害が残っています。特に挙げられるのが再生可能なグリーン水素を低コストで生産する必要性です。これはFCEVを採算の合うものにするのと、この技術を推進する根拠となっている低排出性能を実際に証明するのに不可欠です。
 
グリーン水素を生産するコストが高く、その生産量も相対的に少ないことは現時点では輸送用燃料として採算が取れないことを意味します。今日生産される水素の95%は化石燃料から作られたものです。これは安価ではあるものの道路車両のカーボンフットプリントを大幅に改善するものではありません。水素ステーションの建設が必要なことはインフラに対して相当規模の財政支援に取り組む用意がある国々にとって、FCEVの配備を制限する障壁にもなっています。またグリーン水素を輸送用燃料として使用するにあたっては、固有の非効率性があります。再生可能電力を加圧水素燃料に変換してから、車両の動力となる電力に戻す際の効率損失で再生可能電力はバッテリー電気自動車に利用した方が排出量削減の効果は大きくなりそうです。
 
IDTechExの調査レポート「『燃料電池自動車 2022年-2042年』は、乗用車、小型商用車、トラック、市バス向けの燃料電池車開発の現状を詳しく解説しています。また燃料電池技術、水素生成、炭素回収・貯蔵の概要も説明しています。IDTechExはさまざまなオンロード輸送アプリケーションの燃料電池開発の技術的および経済的な課題を分析し、オンロード用燃料電池車の将来について販売台数、燃料電池需要、市場価値などの独自の20年予測を提示しています。
 
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