エアロゲル市場は今後10年でどう進化するか
2025年3月13日
Dr Shababa Selim

エアロゲルは、熱伝導率が非常に低く、密度も低い上に疎水性、難燃性、防音性を備えていることから、LNG、産業、エネルギーインフラをはじめとするさまざまな市場で着実に成長を遂げています。 しかし、2020年以降に電気自動車(EV)バッテリーの防火材料としてエアロゲルが登場したことで、エアロゲル市場に新たに急成長の機会がもたらされています。IDTechExの調査レポート「エアロゲル 2025-2035年:技術、市場、予測」では、EV断熱層の採用が後押しとなり、エアロゲル市場は2025年には10億ドルを超える規模になると予測しています。

エアロゲル市場の10年間成長予測(IDTechEx調べ、用途別)出典:IDTechEx
EVバッテリーは今後エアロゲルの主要用途に
エアロゲルは、電気自動車(EV)用途において前年比で大幅な成長を遂げており、市場シェアは2021年から2024年にかけて約20倍に拡大しています。例えば、エアロゲル市場の大手企業であるアスペン・エアロジェルズの最近の発表では、2024年度は前年比90%の増収を達成し、EV断熱層部門については2023年から2.8倍に成長しているとのことです。
また、広く使用されているシリカ系エアロゲルの代替品であるポリマーエアロゲルも、機械的耐久性を必要とする超軽量用途にも進出し始めています。開発の多くは初期段階にあり、この分野への参入企業のうち製造規模拡大に向けた取り組みを進めているのは、ブルーシフト、エアロゲル・テクノロジーズなど、ほんの一握りに過ぎません。しかし、技術の成熟が進むにつれて、これら材料は将来の航空宇宙や航空機(eVTOLなど)の分野に機会を見出せる可能性があります。
規格の変更とEV市場の継続的な成長の中、熱暴走伝播と発火の防止、搭乗者のより長い脱出時間の確保に焦点が当てられるようになります。IDTechExでは、中国でBYDやCATLなどのプレーヤーによって大規模な採用が進み、世界的にもGM、トヨタ、アウディなどが採用することで、これが予測期間にエアロゲルの主流用途になると予測しています。本調査レポートでは、エアロゲルを他のEVバッテリー用防火材料と比較し、プレーヤーやパートナーシップを分析しています。その他のEVバッテリー用防火材料の包括的な分析については、IDTechExのレポート「EVバッテリー用防火材料 2025-2035年:市場、トレンド、予測」でご覧いただけます。
需要増対応のための世界的な生産能力拡大
IDTechExは2015年以降、全世界・地域別のエアロゲル生産能力の拡大に注目してきました。その理由は、EV以外にも、産業、LNG・エネルギーをはじめとする主要セクターでの需要が伸びていることにあります。この分野では中国がますます優勢になっており、ここ数年間で数多くのプレーヤーが生産の急拡大を図っています。IDTechExの推定では、現在の世界の生産能力のうち約97%を中国が占めており、大規模な拡張計画も複数あります。
IDTechExの調査レポート「エアロゲル 2025-2035年:技術、市場、予測」では、アスペン・エアロジェルズ、キャボット、IBIH、ナノテック、アーマセル、LG化学などの主要エアロゲルメーカーの包括的な評価も掲載しており、生産能力、製品、生産工程、拡張計画などを取り上げています。
エアロゲルの市場展望
IDTechExは、業界の詳細な評価を読者に提供するため、専門テクノロジーアナリストが広範な一次インタビューを実施し、長年にわたってエアロゲル業界を調査してきました。
エアロゲルは既存の断熱材と比較して高コストであるため、これまであまり普及が進んでいませんでした。IDTechExでは、世界全体の生産能力の拡大に伴い、EV、産業、LNG、エネルギーなどの分野での用途において高性能断熱材の採用が増加すると予測しています。ただし、生産コストを大幅に削減できない限り、コスト効率を優先する用途や利益率の低い用途において、エアロゲルは他の断熱材との競争に苦戦するかもしれません。
IDTechExの調査レポート「エアロゲル 2025-2035年:技術、市場、予測」では、業界がプロセス革新と代替製造方法を通じて製造コスト削減の課題にどのように取り組んでいるかを掘り下げています。本調査レポートは、世界のエアロゲル市場を包括的かつ独自に分析し、シリカ系、ポリマー系エアロゲルを含む用途別・材料種類別の詳細な10年間の市場予測を提供しています。本調査レポートでは、EVバッテリー、石油・ガス、建築・建設などの分野でのいくつかの用途にわたり、断熱層などの市販エアロゲルのベンチマーク評価も行っており、エネルギー貯蔵、家電製品、採光システム・窓など多数の市場を対象としたエアロゲルの用途の評価もご覧いただけます。IDTechExは、エアロゲル市場が2025年から2035年にかけて年平均成長率12.2%で3.2倍の規模に成長すると予測しています。
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