IDTechEx「車載用レーダー市場調査レポート」からの3つの重要ポイント

Dr James Jeffs
A car approaching a T-junction preparing to turn left. In the new road there is a pedestrian on a pedestrian crossing. The car's radar sensors can see the pedestrian and can engage the vehicle's brakes if necessary.
25年前から自動車業界で使用されているレーダーは、最高級車に搭載される贅沢な機能から、ほぼすべての新車に搭載される基本的な安全機能へと変貌を遂げました。IDTechExの調査レポート「車載用レーダー市場 2025-2045年:ロボタクシーと自動運転車」では、既存市場やティア1サプライヤー製品から、ここ数年で設立された最先端のスタートアップ企業まで、レーダーに関するあらゆる事項を取り上げています。本記事では、調査レポートの中から特に重要な3つのポイントを解説します。まず最初に、短距離用途で使用される側方レーダーが牽引する大きな成長についてです。
 
車載用レーダー市場の重要な成長源となる交差点歩行者自動緊急ブレーキを可能にするフロント搭載型短距離側方レーダー。出典: IDTechEx
 
側方レーダーが牽引する新たなレーダー需要
 
世界の前方レーダー市場は、ほぼ飽和状態です。IDTechExの調査では、2023年には新車の71%が前方レーダーを搭載して出荷され、アメリカに至っては、自動車安全要件の規制整備が進んでいることもあり、その割合は90%に上ります。そのため、前方レーダーだけではレーダー市場に成長の余地はほとんどありません。しかし、側方レーダーは今なお急成長を遂げており、短距離レーダーで動作するブラインドスポットディテクションシステムを搭載して出荷される新車は40%にすぎません。
 
ブラインドスポットディテクション用途が短距離レーダー市場需要の中心となっていますが、興味深い成長分野となるのが、交差点自動緊急ブレーキなどの前方短距離レーダー用途です。この用途では、車両のフロントコーナーに短距離レーダーを2個搭載する必要があります。このレーダーは、運転者よりも曲がり角の先をよく見渡すことができるため、歩行者が横断している脇道に車が曲がる場合にブレーキを作動させることが可能です。各安全性評価機関はこれらの機能を数ある試験の中にすでに盛り込み始めており、将来的には、すべての新車が従わなければならない型式認証の安全要件が更新され、これらの機能が義務付けられる可能性があります。
 
自動運転も側方レーダーの推進要因となるでしょう。レベル2+は市場の中でも急成長を遂げている分野であり、この技術を搭載する車では、運転者は道路を注視しながらではあるものの、ハンドルから手を離すことができます。これらの車には通常、360度対応の検知と保護を実現する4個の側方レーダーと組み合わせた前方レーダーが必要となります。
 
高解像度4Dレーダーの需要拡大
 
前方レーダー市場が飽和状態に近づいているとはいえ、興味深いことが起きていないわけではありません。旧世代よりもはるかに高い解像度と性能を備える次世代のレーダーが車両に搭載され始めています。主な変更点はレーダーの仮想チャンネル数の増加です。仮想チャンネル数はカメラの画素数と同様に、一般的に多ければ多いほど良いとされています。
 
長い間、業界は12個以下の仮想チャンネルで間に合わせてきましたが、近年では、192個の仮想チャンネルを備えるレーダーをティア1サプライヤーが提供するようになってきており、モービルアイやアルベといった新規参入企業も、それぞれ1536個と2304個の仮想チャンネルで市場に参入しようとしています。このような非常に強力な新しいレーダーは、レベル2+、レベル3、さらにはレベル4の自動運転車がより確実に動作するために必要な性能を実現します。
 
これは単なるベーパーウェアでも、実現可能性を示すためのコンセプトでもありません。現在こうしたレーダーが、新車に搭載され始めています。IDTechExがインタビューした業界関係者によると、完成車メーカーからの高チャンネル数システムに関する見積依頼が増加しているとのことです。今後10年間で、チャンネル数の多いレーダーが当たり前になるとIDTechExは予測しています。
 
さらなる改良には大きな変化が必要
 
とはいえ、チャンネル数の多いレーダーには今なお性能の限界があります。基本的に、チャンネルを増やし続けるのであれば、アンテナボードも大きくする必要がありますが、チャンネル数の多い最新のレーダーはすでにかなり大きくなっているため、これ以上大きくなると、完成車メーカーが組み込む際に大きな課題を抱えることになります。
 
レーダーの性能を向上させ続けるための選択肢は2つあります。1つは、より高い周波数に変更することです。これは2つの点で役立ちます。まず、レーダーのサイズは動作周波数と結びついているため、周波数を高くするほど、小型化が可能です。次に、イメージングの基礎物理に基づけば、周波数を上げることで、高い解像度が可能です。2つ目の選択肢は、分散型アンテナを使用することです。分散型アンテナは、多数の小型レーダーを車体全体に配置して使用することで、1つの筐体でまとめるものよりもはるかに大きな仮想アンテナアレイを作り出すものです。これにより、レーダーの性能向上に伴ういくつかの基本的問題は解消されますが、より多くのレーダーヘッドやより複雑なシステムが必要になり、完成車メーカーは組み込みに関してさまざまな悩みを抱えることになります。とはいえ、これらの技術を使用した角分解能が0.01°の分散型レーダーシステムの案をIDTechExでも確認しており、これはLiDARと同等の水準となっています。
 
車載用レーダーの歴史は古く、現在出荷されているほぼすべての新車がレーダーを少なくとも1個は搭載しており、多くの車が3個、中にはそれ以上搭載しているものもあります。そのような状況でも、レーダー業界では今も多くの変化と成長が起きています。側方レーダーが市場のさらなる成長を牽引しており、安全性と自動運転への需要から、より高性能なレーダーが業界に普及することになるでしょう。また、物理学の限界により、斬新で新しいレーダー技術の採用が進むことになるかもしれません。

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