2023年以降に注目すべき5Gの主要トレンドを探る
2022年10月25日
Dr Yu-Han Chang

2019年の商用化開始から3年、5Gの現状はどうでしょうか?まずは周波数帯から見ていきましょう。ご存じのとおり、5Gでカバーされる周波数帯のうち、2つの帯域、サブ6GHz(3.5~7GHz)とミリ波(24GHz~)が新たに加わりました。ミリ波は喧伝されているほどではなく、IDTechExのレポート 『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』によると、5G商用サービスおよびプレサービスの53%が実際にはサブ6GHzをベースにしたものであり、ミリ波は市場の10%にも満たないとのことです。サブ6GHz帯は、高いデータ伝送容量とリーズナブルな料金とのバランスが取れているため、人気のある選択肢となっています。一方、ミリ波は、電波伝搬距離が短く、見通し外(NLOS)環境での通信に課題(より多くの基地局が必要)があるため、大規模導入にはコストがかかり過ぎます。

5Gの商用サービスおよびプレサービスにおける周波数の内訳(2022年) Source: IDTechEx - 『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』
1ミリ秒の遅延のような5Gの特性の多くはミリ波での運用を必要とするため、前述の課題を克服するには、新材料の開発、新しいデバイスの設計、新しいネットワーク展開戦略が必要となります。例えば、ミリ波デバイスで著しい伝送損失が生じるのを防ぐには、誘電率と誘電正接の小さい低損失材料が必要です。伝送損失の低減に関しては、RFコンポーネントとアンテナを緊密に一体化する新たなパッケージ技術も開発されています。しかしながら、デバイスの小型化が進むにつれ、電力と熱の管理がより一層重要になります。デバイス設計に加え、ネットワーク展開戦略も、見通し外(NLOS)環境における通信と消費電力の課題に対応するうえで重要な研究分野です。例えば、再構成可能なインテリジェントサーフェス(RIS)やリピータといった幅広い技術を利用しながら、異種材接合によるスマート電磁(EM)環境を構築する方法が研究されています。IDTechExのレポート『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』では、5Gの材料・設計に関する隙間市場、技術トレンド、異種材接合電磁(EM)環境の技術についても幅広く解説しています。
5GオープンRAN(オープン無線アクセスネットワーク)が勢いを増しつつあります。オープンRANとは、分離型RANコンポーネントを標準化し、相互運用を可能にするネットワークを構築するための新たな手段であり、ノンプロプライエタリなホワイトボックスのハードウェア、異なるベンダーのオープンソースソフトウェア、オープンインターフェースの使用も可能にするものです。2022年9月現在、NTTドコモが先行して5GオープンRANネットワークを構築していますが、さらに多くの通信事業者が、オープンRAN機器を使用した5Gネットワークを近い将来に展開するべく、ロードマップを策定しています。オープンRANはどのように5Gインフラ市場に破壊的革新をもたらし、サプライチェーン全体の勢力図にどう影響するのでしょうか?オープンRAN分野のプレイヤーにはどのような企業があるのでしょうか?オープンRANの潜在的ビジネスモデルはどのようなものでしょうか?オープンRANはレガシーシステムよりも安価なのでしょうか?レガシーシステムのベンダー(ファーウェイ、エリクソン、ノキア)のオープンRANに対する姿勢と戦略はどのようなものでしょうか?オープンRANの課題は他にどのようなものがあるのでしょうか?IDTechExの市場調査レポート『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』では、企業が5Gインフラストラクチャ市場の将来動向を理解するのに役立つこれらの質問について解説しています。
高速・大容量で超低遅延の5Gは、3次元ロボット制御、デジタルツイン、遠隔医療管理など、これまでのモバイル通信技術では不可能であったさまざまな高付加価値分野に進出し、まったく新しい市場の可能性を切り拓くことを可能にします。昨年は、さまざまな用途で5Gの機能が活用され、それらがAR・VRと組み合わさることで、ゲーム業界、教育業界、製造業界で多様な活用例が生まれました。また、5G C-V2X(Vehicle to Everything「車両とあらゆるものをつなぐ」)も急速に発展しており、複数の国が将来の自動運転を見据えてC-V2Xを主要な規格に据えると発表しています。

5Gモバイルサービスの市場収益は2033年までに8,420億ドルに到達する見込み。 Source: IDTechEx『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』
5G市場がその可能性を十分に発揮するようになるまでには、検討すべき機会がまだ多くあります。IDTechExでは、消費者向けモバイルサービスによる売上が2033年末までに約8,400億ドルになると予測しています。IDTechExの予測レポートは、一次データと二次データを徹底分析するだけでなく、市場の推進要因、制約、主要プレイヤーの動きも十分に考慮しています。本レポートでは、5つの地域(米国、中国、韓国・日本、欧州、その他)別に5Gモバイルの収益、サブスクリプション、インフラ、5Gモバイルのグローバル出荷台数、5G固定無線アクセスのグローバル収益と5G顧客構内設備(CPE)のグローバル出荷台数、パワーアンプをはじめとする5G用重要部品など、各種分野に関する10年間(2022年~2033年)の見通しを提示しています。
5G市場に関するさらに深い理解のために、IDTechExの調査レポート 『5G市場 2023-2033年 : 技術、トレンド、予測、有力企業』を、ご活用ください。
問合せ先
アイディーテックエックス株式会社
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル21階
担当:村越美和子 m.murakoshi@idtechex.com
電話 : 03-3216-7209
IDTechExは、調査、コンサルタント、サブスクリプションを通して、戦略的なビジネス上の意思決定をサポートし、先進技術からの収益を支援しています。IDTechExの調査およびコンサルティングの詳細については、IDTechExの日本法人、アイディーテックエックス株式会社まで、お問い合わせください。