インキャビンセンサーの進歩:レーダーか3Dカメラか
2025年5月20日
自動車業界では、安全性の向上や法規制の遵守、パーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを求める声が追い風となり、インキャビンセンシング技術によってその勢力図が塗り替えられつつあります。2025年、テスラ、シーイングマシーンズ、LGエレクトロニクスなどのプレーヤーは、レーダー、3Dカメラ、AIを活用したインキャビンセンシング技術を通し、車室内の再定義につながる革新的な新技術を導入しました。本記事では、テスラのキャビンレーダー有効化、シーイングマシーンズの3Dカメラ技術、LGのAI活用ソリューションについて解説しています。また、業界予測を裏付けとし、それらの技術が安全性やコスト、市場動向にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げています。レーダー、3Dカメラ、AIなどの関連技術の詳細は、IDTechExの調査レポート「インキャビンセンシング 2025-2035年:技術、機会、市場」でご覧いただけます。
テスラのキャビンレーダー有効化
テスラは2025年2月、モデルYのキャビンレーダーを作動させるソフトウェアの更新版(バージョン2025.2.6)をリリースし、このレーダーとしてテキサス・インスツルメンツ製チップAWR6843を搭載した60~64GHzのミリ波レーダーを導入しています。このレーダーはルームライトの上に装備されており、車室内最前列のセンシング強化を目的として導入されたもので、乗員の体格や位置、動きを検知することで乗員の識別機能を高めています。これによりダイナミックなエアバッグ展開や正確なシートベルト非着用警告が可能になり、キャビンレーダーが信頼性の劣る着座センサーに取って代わる機能となり得ます。また、キャビンレーダーは心拍数や呼吸などのバイタルセンシングも可能なため、テスラが2025年第3四半期にリリースを予定している「子ども置き去り検知」機能(子どもを検知すると車両の操作制限、エアコンユニット起動、オーナーや緊急サービスへの通知を行う)を支える技術としても利用されています。
2022年からモデルYに装備されている既存の機器に手を加えるテスラのこの戦略は、新たに部品を装備する必要がないため、コストの効率化を図るのにも一役買っています。また、この未使用のハードウェア機能をOTAアップデートによって利用可能にするということは、テスラの広範なSDV構想に沿うものであると言えます。キャビンレーダー機器の具体的なコストについては公表されていませんが、IDTechExではモジュール1個当たり30~40ドル程度であると推定しており、さらに普及が進むことにより、20ドルまで下がるだろうと見ています。レーダーモジュールの詳細なコスト内訳は、IDTechExの調査レポート「インキャビンセンシング 2025-2035年:技術、機会、市場」に掲載されています。
シーイングマシーンズの3Dカメラ技術革新
2025年4月シーイングマシーンズは、Airy3Dとの協業により、500万画素のRGB-IR 2D画像と3Dセンシングを1つのモジュールに統合したインキャビンモニタリング向け3Dカメラ技術を開発したと発表しました。Airy3DのDepthIQ™という技術を利用しているこのシステムは、2Dセンサー上に回折光学素子を採用し、コスト効率の高い3Dビジョンを実現しています。このカメラシステムにより、高精度なアイトラッキングと車室内全体にわたる乗員モニタリングが可能となるため、エアバッグやシートベルトなどのパッシブセーフティシステムとの統合も図れるようになります。またこの技術は、子どもの置き去り検知に3Dセンシングを奨励するユーロNCAPが2025年に新たに加える基準など、今後の安全基準にも対応できると考えられています。これまで3Dカメラの普及を妨げてきた障壁の1つにコストが挙げられますが、この新たな技術の登場で高級車以外でも3Dセンシングが利用できるようになり、中価格帯の車種にも採用が広がる可能性があります。ただし、カメラ技術をベースにしたシステムはプライバシーという課題に直面しており、顔のぼかし加工や車載環境での映像処理などの堅牢な対策が求められます。そのうえ、複雑なアルゴリズムに依存していることから膨大な計算リソースが必要となるため、小規模な自動車メーカーがシステムを統合するには困難が伴います。
IDTechExでは、ユーロNCAPの2025年プロトコルなどの規制要件に対応するためだけでなく、主要プレーヤーが自社の車室内機器や機能を活用して他社との差別化を図りたいと考えていることもあり、AI、レーダー、3Dカメラの統合化は今後さらに加速していくと予測しています。テスラのレーダー採用、シーイングマシーンズのコスト効率に優れた3Dカメラの他、多くのプレーヤー(LGなど)による同様の戦略は、この流れに沿ったものではありますが、それぞれが異なる壁にぶつかっています。技術的・商業的障壁の詳細については、IDTechExの調査レポート「インキャビンセンシング 2025-2035年:技術、機会、市場」で取り上げています。

3D ToFカメラとレーダーの比較。出典:IDTechExの調査レポート「インキャビンセンシング 2025-2035年:技術、機会、市場」
結論
テスラとシーイングマシーンズはインキャビンセンシングの新境地を開くべく、それぞれが安全性、コスト、ユーザーエクスペリエンスにおいて独自の角度から取り組みを進めています。テスラのレーダー有効化はコスト効率の優れたイノベーションの代表例である一方、シーイングマシーンズの3Dカメラは高度センシングを広く普及させる役目を果たします。インキャビンセンサーの年間市場規模は2035年には約60億ドルに迫ると見られており、IDTechExは、今後も続くであろうこのトレンドが、収益化につながる大きな機会を自動車メーカーと部品サプライヤーにもたらすだろうと考えています。レーダー、3Dビジョン、AIの相乗効果により、次世代のインテリジェントカーが定義され、より安全でパーソナライズ化の進んだドライビングエクスペリエンスが実現することになりそうです。
インキャビンセンシングに関する詳しい情報はIDTechExの調査レポート「インキャビンセンシング 2025-2035年:技術、機会、市場」でご覧いただけます。
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