持続可能性とAI:Data Centre World 2025からの分析
2025年3月26日
Eve Pope
3月中旬にイギリスのロンドンで2025年のData Centre Worldが開催され、データセンターの主要企業が集結しました。このイベントは、Cloud & AI Infrastructure、DevOps Live、Cloud & Cyber Security Expo、Big Data & AI Worldなどが併催され、1万人以上の来場者と300社以上の出展者が集まりました。プレゼンターや出展者は、IDTechExの調査レポート「データセンターの持続可能性 2025-2035年:グリーン技術、市場予測、有力企業」や「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」に多く関連するテーマに触れていました。この記事では、Data Centre WorldからのIDTechExの分析を紹介します。
エネルギー効率が設計上の最優先事項
最も成功した持続可能なデータセンター技術は、経済的実現可能性も向上させます。例えば、エネルギー効率が向上すると運用コストが下がり、同時にエネルギー使用量を基に算定されるスコープ2のCO2排出量も削減されます。バーティブのアレッサンドロ・ツェルベット氏はData Centre Worldの講演で、「エネルギー効率は、バーティブにとって、設計段階における最優先事項です」と語っています。

スコープ2排出量(電力を基に算定)とスコープ3排出量(サプライチェーン)がデータセンター二酸化炭素排出量の上位を占める。IDTechExの調査レポート「データセンターの持続可能性 2025-2035年:グリーン技術、市場予測、有力企業」では、これらの排出量削減の技術を取り上げている。出典: IDTechEx
データセンター業界で空冷から液冷への移行が進む中、データセンター冷却技術のイノベーションは、特にエネルギー消費量削減に大きな影響を与えてきました。2025年現在、ハイエンドGPU熱管理市場では単相式D2C(ダイレクト・ツー・チップ)冷却が主流となっていますが、TDP(熱設計電力)の増加に伴い、二相式D2C冷却の需要も伸び続ける見通しです。
持続可能なデータセンターはPUEだけでは測れない
現在、データセンターの脱炭素化を推進できる制度はあまり存在していません。制度が導入されている場合、一般的には明確なPUE(電力使用効率)の制限値が定められています。適切なPUE値を実現しているということは、エネルギーの大半がデータセンター内のIT設備で消費され、冷却システムや補助システムで「浪費」されていないことを意味します。
しかし、ババク・ファルサフィ氏(スイスデータセンターエネルギー効率協会会長)がData Centre Worldのプレゼンテーションで指摘しているように、PUEはエネルギー配分を測定するものであり、IT機器自体がデータセンター内でどれだけ効率的に使用されているかを測定するものではありません。適切なPUE値を実現しているデータセンターでも、非効率なサーバーや十分に活用されていないサーバーを抱えていることがあります。また、PUE値には熱再利用やオンサイトでの再生可能エネルギーの生成が反映されてはいない上、データセンターへの供給電力の炭素集約度も考慮されていません。持続可能なデータセンター技術の開発では、PUE以外にも目を向ける必要があるのは明らかです。ファルサフィ氏が述べているように、「PUEが答えであるならば、これ以上データセンターの持続可能性について話し合う必要はない」のです。
AIへの投資関心が変化
ここ数年、AIによるLLM(大規模言語モデル)の研究に巨額の資金が投入されてきました。2025年現在、AIモデルのトレーニングには数十億ドルかかることもあります。しかし、Data Centre Worldでのプレゼンテーションによると、AIのROI(投資利益率)がどこから生み出されるのかは依然として明らかではなく、業界関係者の中には2000年代初頭のITバブルとの類似点を指摘する人もいます。
そのため、投資の関心はLLMに継続的に資金をつぎ込むことからAIのユースケースを見つけることへと移りつつあります。ディープシークにより、トレーニングコストを大きく引き下げ、電力需要を抑えながら高水準の性能を実現できることが証明されたことで、この流れはさらに加速する一方となっています。AIのキラーアプリケーションが特定されれば、ROIははるかに明確化できるはずです。
より大局的な観点
データセンターのエネルギー効率を改善し、同時に運用コストを削減できる持続可能な技術は、すでに成功を収めています。一方で、持続可能なデータセンターにはさまざまな側面があります。PUE以外にも目を向け、電力網の炭素集約度(電力網に電力を供給する再生可能エネルギープロジェクトの数によって決まる)についても考える必要があります。また、データセンターによるスコープ3のサプライチェーンからの排出量にも取り組まなければなりませんが、トランプ関税やサプライチェーンの先行き不透明感の高まりを背景にさらに困難になる可能性があります。
データセンターの急速な規模拡大は、持続可能性以外の壁にもぶつかることになります。多くの場所で電力供給網が逼迫しており、新規データセンターへの電力確保は長い時間をかけて取り組む必要があり、容易なことではありません。また、AIのROIが不安定であることから、投資家の信頼が揺らぐかもしれません。
IDTechExの調査レポート「データセンターの持続可能性 2025-2035年:グリーン技術、市場予測、有力企業」や「データセンターの熱管理 2025-2035年:技術、市場、機会」は、データセンター分野の主要技術や市場に関する情報を掲載しています。
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