LiDARは終焉か?カメラの市場規模は2033年までに76%から79%に

LiDARは終焉か?カメラの市場規模は2033年までに76%から79%に

LiDARは終焉か?カメラの市場規模は2033年までに76%から79%に
自律型モビリティは多くのロボットにとって重要な価値提案です。これはテスラやジョンディアなどの商用車に搭載された自動運転システムの成功のおかげです。自動運転はロボット業界全体で勢いを増しています。ロボットの自動運転は何も新しいことではなく、自律型モビリティはこれまでそのシンプルさと使いやすさからLiDARに大きく依存してきました。しかしながらLiDARは、初期コストが高い、解像度が低い、物体認識能力が不足しているなど、多くの欠点を抱えています。最近になってテスラとジョンディアのカメラのみを使用した自動運転車が成功したことで潮目は変わりかけており、カメラが優位になりつつあります。
IDTechExの最新調査レポート『ロボット用センサー 2023-2043年: 技術、市場、予測』によると、下図のようにロボット産業におけるLiDARの市場シェアは24%から21%に減少する一方、カメラの市場シェアは今後10年間で3%の増加が見込まれています。
 
Market Share of LiDAR Units and Camera Units 2022 Versus 2032. 出典: IDTechEx - 『ロボット用センサー 2023-2043年: 技術、市場、予測』
 
この記事では、カメラがモバイルロボットの選択肢としてより一般的になっている理由、LiDARと比較した場合の利点、そして採用の妨げとなっている制限について紹介します。
 
  • 屋内用移動式ロボットに3D LiDARは不要 LiDARの利点の1つは、カメラに比べて悪天候や視界不良の影響を受けにくいことです。予測不能な天候の中で作業を行う屋外用ロボットにとっては大きな利点となりますが、屋内用移動式ロボットは基本的に安定した人工照明の下、管理の行き届いた環境で作業するように設計されているため、それほどの利点にはなり得ません。また、3D点群を提供するLiDARとは異なり、カメラは3D情報と色情報の両方を取得することが可能なため、ロボットに色と質感を基に物体を認識・識別させることができます。3D情報を取得する機能により、カメラがLiDARに取って代わる道を切り拓くことが可能です。
 
  • エンドユーザーは高価なLiDAR機器に代わる技術を導入 LiDARからの移行を左右する大きな要因の1つがコストです。LiDARセンサーの価格幅は数百ドルから数千ドルまであり、高額になる場合があります。カメラの方が価格面で手頃で、多くの企業にとって受け入れやすい選択肢となります。結果として、カメラを利用したシステムの導入が増えています。小規模企業やスタートアップ企業が多いロボットメーカーにとってカメラを利用したシステムの方が費用対効果が高くなるのです。それでもなお、カメラ用機器(イメージセンサー)が安価であるにもかかわらず、GPUや画像処理ソフトウェアシステムなどのソフトウェア、画像処理ユニットの価格を加えるとカメラの総所有コストが大幅に高くなる可能性があります。
 
  • サイズと重量 カメラはLiDARと比べるとフォームファクタも小さく、移動式ロボットに搭載するのが極めて容易です。そのため、狭い空間や出入り口を走行しなくてはならないロボットにとって重要な小型化と軽量化が可能になります。また、ロボットには複数のカメラを取り付けられるため、視野が広くなり、ナビゲーションの精度も向上します。
 
  • 保守カメラはLiDARと比較して、キャリブレーションも保守も容易です。LiDARでは3D点群の精度を確保するために慎重な位置合わせが必要があり、精度を長期間維持することが難しい場合があります。一方で、カメラの場合はプラグアンドプレイ方式が一般的であり、使いやすく保守も簡単です。
 
上記のような優位性があるものの、カメラの導入に立ちはだかる障壁が存在しており、IDTechExの最新調査レポート『ロボット用センサー 2023-2043年: 技術、市場、予測』で、その点について解説しています。
 
  • 高価なソフトウェアや画像処理ユニット イメージセンサーはLiDARよりもかなり安価ではあるものの、画像処理ユニット(ソフトウェアおよびGPU)の価格を加えたカメラの総所有コストで見ると、数千ドルにもなる可能性があります。そのうえ、カメラに堅牢な機能性を求める場合、頑強なマシンビジョンシステムが必要になります。テスラやジョンディアとは異なり、ロボットメーカーの多くはキャッシュフローに限りがあるため、マシンビジョンソフトウェアの開発に資金を投じ過ぎないよう慎重にならざるを得ません。こうした企業は、従来のLiDAR技術を使用する傾向にあります。
 
  • データプライバシー 倉庫所有者の多くは、データプライバシーの懸念から、カメラを搭載した移動式ロボットを倉庫に導入することに抵抗を感じています。この点に関するエンドユーザーの関心が低いこともあり、ロボットへのカメラの搭載は進んでいません。さらに、データプライバシーの観点から、倉庫で撮影したすべての画像やデータを利用できる訳ではないことも、ロボットメーカーが堅牢なマシンビジョンシステムを開発するのを難しくしています。
 
結論として、屋内移動ロボットのカメラベースシステムへの移行は、この分野の優先順位の変化を反映しています。コストが下がり、技術が向上するにつれ、カメラは屋内ナビゲーションとマッピングのためのより身近で効果的なソリューションになりつつあります。LiDARはまだ一部のアプリケーションで使用される可能性があり、カメラには短期的には独自の問題がありますが、カメラが今後数年間で屋内移動ロボットの主要なセンサーとなることは明らかです。
さらに詳しくは、IDTechExの最新調査レポート『ロボット用センサー 2023-2043年: 技術、市場、予測』で、ご確認ください。