電気自動車のリチウムイオン電池の行く手を示す数多くのトレンド

電気自動車のリチウムイオン電池の行く手を示す数多くのトレンド

電気自動車のリチウムイオン電池の行く手を示す数多くのトレンド
全体として、2020年の世界の電気自動車の販売台数は予想以上に好調でした。さらに、電気自動車とリチウムイオン電池への投資資金の流入が続く中、欧州では、2020年の計画生産量に対して200GWhが上積みされたことが発表されました。生産量は2021年も一定のペースで増加し続けています。またこの一年では、テスラ、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズ、SKイノベーション、LG化学の全社が、自社の車両の電動化とバッテリー技術戦略を説明する投資家説明会やプレゼンテーションを実施するなど、電気自動車市場の成長モメンタムに一段の弾みがついています。これに伴い、電気自動車の動力源であるリチウムイオン電池や、設計上の多様な選択肢、導入トレンドなどを理解することが一層重要になります。

正極材のケミストリー

特に関心が寄せられている領域は、バッテリーメーカーや自動車メーカーが採用する正極材とバッテリーケミストリーです。当然ながら、IDTechExのデータでも、過去数年間でニッケル含有量の高いNMCバッテリーへの移行が進んだことを示しています。SVoltは報道によるとNMXセルの連続生産を開始し、 ルノーがMC正極材に重点を置く戦略を発表したほか、SKイノベーションは、ニッケル含有量が90%のNMCセルを2021年に商業生産する意向を発表しています。同社はまた、ニッケル含有量が94%のNMCを2025年までに開発する計画も表明していますが、そのことによって、NMCの位置付けが変わらないだけでなく、ニッケル含有量がこれまで以上に高いNMCや、コバルト含有量がさらに低いNMCへの移行が困難なことも明らかになりました。
 
しかしながら、2020年にはLFP電池の巻き返しもあり、ケミストリーの重要性が増していることは確かです。自動車メーカーは、コストの低減と安全性の向上の観点から、このケミストリーを使用する計画を進めています。さらには、LFP電池に関連する特許の有効期限がまもなく切れるため、LFP電池の製造と中国国外への輸出が容易になります。それでもなおIDTechExは、NMCやNCAといった層状酸化物材料の採用による航続距離延長の可能性を考慮した場合、車両電動化の成功の鍵は依然として層状酸化物材料にあると考えています。自動車以外でも、さまざまなケミストリーがメーカーによって利用・提供されており、用途で求められる要件や地域的な嗜好に応じて選択されています。
 
BEVおよびその他の車両区分における電池化学のトレンドの詳細については、IDTechExの調査レポート「電気自動車用リチウムイオンバッテリー 2021-2031年」で、取り上げています。
 
図 1. 高ニッケルNMCはBEVにおいて市場シェアを獲得。 Source: IDTechEx

バッテリーデザイン

バッテリーパックの設計についても変更の動きがあります。たとえば800Vアーキテクチャは、急速充電と動作の効率化が約束されることから、多くのメーカーに採用されています。しかしながら、これを十分に活用するには必要な充電インフラも整える必要があります。また、急速充電によって増加した電力をバッテリー自体で処理できるようにする必要があります。バッテリーパックの電気的絶縁を確保するにはさらなる注意が必要となります。その上、必要となるSiインバータからSiCインバータへの移行には独自のコストが伴います。
 
セル・ツー・パック(CTP)設計についても模索されています。この設計においては、パッケージング効率を高めることがLFP電池で生じるエネルギー密度の低下を克服するのに役立ち、BYD、CATL、テスラ、ステランティスの全社が、CTPバッテリー設計と組み合わせてLFP正極材(おそらくステランティスはLMFP)を使用する意向を発表しています。しかしながら、電気自動車以外ではモジュール性が依然として重要であり、欧州と北米のパックメーカーのほとんどがモジュール形式で提供しています。冗長性と修理の容易性が加わることにより、商業セクターでの重要性がさらに高まります。さらに、モジュール設計により、パックメーカーはさまざまな車両セグメントにより簡単に対応できるようにもなります。
 
当然ながら、正極材ケミストリーとバッテリー構造は、パズルの一部にすぎません。バッテリー設計のエコシステムは、セルの設計やフォームファクタ、固体電解質、負極材の選択、熱伝導材料、バッテリー管理システムなどから構成されており、バッテリーとEVの性能、コスト、安全性を改善するには多くの手段があります。
 
 
図 2.  リチウムイオン電池の性能とコスト改善には数多くの選択肢が存在。Source: IDTechEx
 
バッテリーと電気自動車の分野には、多くの技術的可能性とさまざまな設計の選択肢が広がっています。 バッテリーと電気自動車の技術と市場動向の分析については、IDTechExの調査レポート「電気自動車用リチウムイオンバッテリー 2021-2031年」を、ぜひご活用ください。
 
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