パワートレインの効率:原材料不足の時代にEVの成長を支える

Luke Gear
2022年は、電気自動車メーカーにとって引き続き大きな挑戦の年となります。中国ではパンデミックの影響で工場が閉鎖され、生産に支障をきたしました(ノルウェーより電気自動車の販売台数が多い上海では、4月に販売がゼロとなりました)。ウクライナ戦争の影響でワイヤーハーネスが不足し、バッテリー原材料価格が上昇、チップ不足が続き、OEMは電気自動車価格を大幅に引き上げました。
自動車サプライチェーンチャレンジ。 Source: IDTechEx
IDTechExの電気自動車のマスターレポート 『EV: 電気自動車、船舶、航空機 2022-2042年』は、8つの輸送市場(自動車、バン、バス、トラック、海上、エアタクシー、建設、二輪車)を90以上の市場見通しに分け、バッテリー電気自動車、燃料電池、ハイブリッド車の販売台数、バッテリー需要(GWh)、市場収益(億米ドル)などを対象に調査しており、電気自動車産業の全体像を把握するのに役立ちます。
 
課題はあるものの、EV市場は2022年も成長を続けています。例えば、EV市場については、上半期の販売台数が既に350万台(バッテリー式電気自動車とプラグインハイブリッド車)に達していることから、2021年の販売台数約640万台を超えるとIDTechExは予測しています。
 
しかしながら、原材料不足の時代において、ディスラプション(破壊的イノベーション)は不可欠です。IDTechExでは、走行サイクルの効率向上、車両設計の改良、バッテリー容量や1台当たりに必要な材料を最小限に抑えることに真っ先に取り組む必要があると考えています。

800Vを超えるプラットフォームへの移行

今日の電気自動車のほとんどは、約400Vの電圧でプラットフォームが動作しています。これは過去の名残であり、初期の電気自動車とハイブリッド車のモデルがこの電圧を使用していたため、業界が徐々にこの標準に合わせるようになったのです。現在では、一般的に400Vを超えるとカスタム設計が必要となり、初期費用が増加します。
 
しかしそうした中で、800V(あるいは、それ以上)のプラットフォームへと向かう新たなトレンドが見られます。GM、ヒョンデ、VWは、ルシード・モータースなどのスタートアップ企業の後を追う形で移行を進めています。
 
800Vの一番の利点は、ジュール損失を抑え、高電圧ケーブルの小型化(軽量化)を可能にすることで効率が向上することです。一方短所は、新しい電圧に対応可能な電動モーターの設計最適化や、より高価なSiC MOSFETインバータへの移行など、システムの大幅な変更が必要になることです。
 
全体として、800Vには説得力のある価値提案があります。50kWhバッテリーを搭載した自動車で、燃費基準が「WLTPモードで200マイル」の場合は、走行サイクルの効率が10%向上(800Vプラットフォーム、SiCインバータへの移行、システム内電流低減を反映)し、性能はkWh当たり約4.4マイルまで向上します。結果として、元の航続距離200マイルを達成しながら、バッテリー容量を4~5kWh削減できる可能性があるのです。現在の平均価格で考えた場合、これにより、バッテリーパックの価格(分解調査企業によるとテスラのSiCインバータの総コストとほぼ同額)を500~600ドル程抑えられることになります。
 
このシナリオをEV5000万台に当てはめると、バッテリーのサプライチェーンが背負っている225GWh以上の発電量というプレッシャーから逃れられることになる訳です。これは、2043年までに陸運以外のEVセクター(建設、船舶、エアタクシー)から生じるとIDTechExが予想しているバッテリーの総需要を上回る数値です。詳しくは、IDTechExの調査レポート 『EV: 電気自動車、船舶、航空機 2022-2042年』をご覧ください。

高電圧ケーブルの最適化

電気自動車の軽量化とそれに伴う航続距離の伸長を実現するための最も簡単な方法の1つは、高電圧ケーブルを最適化することです。BMW i3とテスラの初代モデルSでは、いずれも約20mの高電圧ケーブルを使用していたのに対し、最新のテスラのモデル3で使用されているのは10m未満であるとIDTechExでは推定しています。つまり、大きな技術的進歩がなくても設計を最適化できる可能性があるのです。
 
もう1つのアプローチは、導電部の芯を銅からより軽い材料に変更することです。アルミニウムはその選択肢の1つであり、密度と導電率はそれぞれ銅の3分の1と60%となっています。同じ電流を流した場合、アルミニウムの芯部分はわずかに増加(例:50mm2の銅線に対して約70mm2のアルミニウム線)するものの、正味重量は約45%削減され、コスト(電流容量が同じであればアルミニウムの方が安価で軽量)も下がります。
 
一番の例はテスラであり、2017年に3000kmのアルミニウムケーブルをGebauer & Grillerに発注したと報じられています。直近の中国の分解調査レポートによると、テスラはモデル3のOBC(車載充電器)と外部プラグの間の部分に約3mのアルミニウムケーブルを使用しているとのことです。
 
しかしながら、課題もあります。例えば、アルミニウムは温度に反応して膨張しやすいため、時間が経つにつれて断線しやすくなるのです。また、絶縁性の酸化アルミニウム皮膜が生成されやすくなります。最近は、最新の製造・接続工程を使用してこれらの問題を軽減しようという動きがあります。アルミニウムケーブルは可能性を秘めているものの、特効薬ではなく、今後20年間にわたって標準的技法として採用されるかどうかは不明です。

太陽電池一体型車体

太陽電池(「ソーラー」)を電気自動車の車体に組み込んで日中を通してエネルギーを採取することは、バッテリーへの依存度を下げるもう1つの新たなトレンドです。マーケットリーダーの1社がソノモーターズで、サイオン(Sion)という、いわゆる最初の「ソーラー電気自動車」を4年かけて開発した企業です。
 
サイオンのフレキシブルなポリマー一体型太陽電池搭載車体は、248枚のパネルで構成されており、ドイツの平均的な日照時間に基づくと、1日当たり最大21.7マイル分を追加で生み出します。これで、800Vへの移行と同じように、 バッテリー容量を約4~5kWh削減できるようになります。
 
しかしながら、他の例と同様にこれにも課題と短所があります。例えば、曇天の多い国や、軽い衝突でも修理費用が発生する可能性があることです。ですが、ソノが約31,000ドルという価格でサイオンを生産できることを示したという事実には期待が持てます。

IDTechExリサーチ

さらに詳しくは、『EV: 電気自動車、船舶、航空機 2022-2042年』で、ご確認ください。
 
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