量子ドット: 進化し続けるアプリケーション

Quantum dots of perovskite nanocrystals, luminescent with all colors of the rainbow under ultraviolet radiation
量子ドット(QD)は、サイズ調整可能な特性を持つ、2~10ナノメートル(原子10~50個)の半導体ナノ結晶です。ナノスケールの粒子であるため、量子閉じ込め効果を示し、優れた光学的・電気的特性をもたらします。量子ドットの特性は、粒子径、物質、組成によって調整できます。Cd系QD、In系QD、PbS QD、ペロブスカイトQDや、先進のCuInS2 QD、InAs QD、ZnTeSe QDといったQD材料は、バンドギャップが多様なため、吸収スペクトルと発光スペクトルもさまざまです。このように微調整が可能なため、特にディスプレイ、イメージセンサー、太陽電池、照明をはじめとする多様なユースケースにおいて、量子ドットを応用できる可能性が大きく広がっています。
 
量子ドットの動作形態。 Source: IDTechEx
 
1980年に初めて発見されて以来、QDはディスプレイ、イメージセンサー、太陽光発電、照明、温室効果フィルム技術を商業製品に転換する上で計り知れない可能性を示してきました。
 
IDTechExの新しい調査レポート 『量子ドット材料と技術 2024-2034年: トレンド、市場、用途』は、様々な用途における技術構成が時間とともにどのように変化するかを考慮したIDTechExの技術ロードマップを提供しています。
 
ディスプレイ: 成功したアプリケーション?
 
ディスプレイ技術において、QDは発色を鮮やかにする素子として広く使用されており、従来の 液晶ディスプレイ(LCD)と比較して色域の拡大、色精度、輝度の向上を可能にしています。QDは、励起時に特定の波長の光を発する特有のフォトルミネセンス特性により、LEDから出る青色光を純粋な赤色と緑色に変換することができるため、より幅広く精度の高いカラーパレットを実現します。
 
IDTechExの調査レポートでは、ディスプレイにおけるQDの組み込み方法の進化について考察しており、中でも旧式のエッジオプティックに対してフィルムタイプが優勢であることに焦点を当てて解説しています。とはいえ、OLED用およびマイクロLED(μLED)用のQDカラーフィルターやオンチップタイプといった新たなアプローチが、材料の進歩や製造技術の向上によって勢いを増しつつあり、最終的にフィルムタイプを上回る可能性があります。また、この分析では、QDをディスプレイ用の究極の発光材料でトラッキング効率、寿命の向上を実現するものと位置づけるとともに、性能、寿命、成膜/パターニング、デバイス設計に関する根強い課題を掘り下げています。
 
Various QD adoption in displays. Source: IDTechEx
 
新たな優位性: イメージセンサーに量子ドット?
 
硫化鉛QDは、幅広い波長スペクトルにわたる波長可変性があるため、近赤外線(NIR)・短波赤外線(SWIR)センシング用途に適しています。QDをシリコン読み出し集積回路(ROIC)と組み合わせることで、QD-SiハイブリッドNIR/SWIRイメージセンサー開発が可能となります。この革新的な融合は、高解像度で小画素のシリコン系NIR/SWIRセンサーの実現への潜在的な道筋を示しており、実現すれば、InGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)センサーとSi ROICの異種混成が必要なくなります。低価なハイブリッドQD系イメージセンサーは、InGaAs SWIRイメージセンサーに取って代わるだけでなく、新たな用途を実現するうえでも役立つ可能性があります。
 
すでに第一世代の製品が市場に出ており、大手企業もこの分野に参入していることから、この技術は将来有望です。本レポートでは、高解像度、小ピクセルピッチ、グローバルシャッターを同時に実現し、低コスト化が可能なQD-Siハイブリッドイメージセンサーを取り上げています。また、技術解析とプレーヤーについてもIDTechExレポートで解説しています。
 
量子ドット:照明の未来を照らす?
 
既存の市販製品はQDのフォトルミネセンス特性を基にしたものであり、照明技術において素晴らしい可能性を示してきました。QDは、カラーコンバーターとしてLED照明装置に組み込むことができ、調整可能な高品質の白色光の生成を可能にしています。QDベースのLEDは優れた演色評価数(CRI)と色温度を実現できるため、室内照明や車載照明をはじめとする各種照明用途に適しています。また、QDは発光スペクトルが狭いため、複雑なフィルタリングの必要性が低下し、エネルギー効率の向上や光害の低減につながります。
 
太陽光発電における量子ドット: Yes or No?
 
QDが太陽光発電(PV)装置に組み込まれることで、第3世代の太陽電池の登場へとつながるかもしれません。量子ドットのバンドギャップを太陽光スペクトルの特定の領域と一致するように設計することで、これらの電池は、より幅広い光波長を効率的に捕捉できるだけでなく、「多重励起子生成(MEG)」効果を実現し、集光性、変換効率の向上や低照度時のパフォーマンス向上を可能にします。また、フレキシブルで透明な太陽電池用途の可能性ももたらします。本レポートでは、各種PV技術のベンチマーク評価を行い、克服すべき商業的・技術的課題を探求しています。
QD PV efficiency records. Data sourced from NREL Solar PV Efficiency Chart, plotted by IDTechEx
 
量子ドット:用途の変化と拡大?
 
QDは、フォトルミネセンスとエレクトロルミネセンスの両方の特性により、さまざまな用途において既存技術に付加価値をもたらす可能性があります。状況に応じてサプライチェーンが再編される可能性があることも、関連プレーヤーにとっては新たな機会となります。
 
調査レポート 『量子ドット材料と技術 2024-2034年: トレンド、市場、用途』は、QDに関する詳細な技術調査と分析により、QDに関する長年の調査の蓄積から得られたデータ主導の評価と分析を提供しています。このロードマップでは、様々な用途におけるQDの統合を包括的に検証し、見通しを提示しています。毒性の懸念、長期安定性、大規模製造技術やコストなどの課題に対処する必要があります。研究者たちは、これらのハードルを克服するため、無毒でより安定した材料を積極的に探求しています。さらに、QDの合成技術や製造プロセスの進歩は、製造コストを引き下げ、商業用途への普及を促進すると思われます。また、LCDテレビ、miniLEDバックライトディスプレイ、QD-OLEDテレビ、QD-μLEDテレビ、オンチップタイプ、発光型QLEDディスプレイ、フォトディテクター、照明、農業用フィルム、研究用など11の応用分野について、面積(平方メートル)、重量(トン)、金額、材料レベルでの10年間の市場予測も行っています。この予測は、IDTechEx の技術分析に基づくもので、様々な技術がいつ、どのように商業的に実現可能になるかについて、既存企業と比較しながら現実的かつ専門的な見解を示しており、また、詳細なインタビュー、深い市場洞察、綿密なトレンド追跡にも基づいています。
 
IDTechEx forecast of global QD materials market. Source: IDTechEx
 
IDTechExは2013年から量子ドットの技術と市場を分析し、インタビュー、企業・学会訪問を通じて、最新の研究・市場動向に極めて密接な関係を保ってきました。さらに、多くのクライアントと密接に関わり、クライアントが技術と市場の状況をよりよく理解し、イノベーションと商業化戦略を設定するのを支援しています。量子ドットの分析において、IDTechExは先端電子材料とデバイスの分析における豊富な専門知識を駆使しています。
 
量子ドットの最新動向、技術詳細を理解をふかめるために、IDTechExの調査レポート『量子ドット材料と技術 2024-2034年: トレンド、市場、用途』をご活用ください。
 
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