車載用レーダー:4Dイメージングレーダーに向けた主な技術動向

車載用レーダー:4Dイメージングレーダーに向けた主な技術動向

Dr Khasha Ghaffarzadeh
車載用レーダー:4Dイメージングレーダーに向けた主な技術動向
レーダーは、ADAS(先進運転支援システム)や自律モビリティのセンサースイートにおける重要な要素となっています。この技術は、特に各種ADAS機能で既に商業利用されています。レーダーの使用は、短期的、長期的に増えていくはずです。短期的には、法律や自主的な安全への取り組みにより、採用がさらに広がっていくでしょう。長期的には、より高いレベルの自律性の登場によって車両一台当たりのレーダー搭載量が増加し、市場に相乗効果がもたらされます。
 
これはレーダー技術にとって刺激的な時代となり、多くの変化が訪れることになります。ここに紹介するキートレンドは、IDTechExの市場調査レポート 「車載用レーダー 2020-2040年:デバイス、素材、プロセス、AI、市場および有力企業」からの抜粋です。この調査レポートは詳細に技術を解析し、レーダー技術がどのように進化しているかを考察しています。本調査レポートでは、世界での周波数におけるドライバー(牽引役)とトレンドを調査し、半導体技術やリソグラフィノードの選択のトレンドについて評価を行っています。パッケージングのトレンドと、チップ(DSPなど)内への高度な機能の統合に向かうトレンドについても分析を行っています。本レポートでは、セラミック充填PTFE、PI/フルオロポリマー、LCP、LTCCやその他多数の材料を含む低挿入損失材料を調査し、批評的なベンチマークを行っています。
 
本調査レポートでは、レーダーの性能がどう向上しているか、特に方位角と仰角が向上した分解能に関しても考察を行っています。また、信号処理側の進展について分析しており、レーダーの点群がどのように高密度になったのか、そしてあらゆる気象・光条件下で3D空間内の多くの対象物をレーダーで検出、分類、追跡できる方法がどのようにして生まれたのかについて説明しています。これらの取り組みは初期段階にあります。そのため、手動または半自動で分類された大規模なトレーニングデータセットが利用可能になり融合技術が進化するにつれて、劇的に改善されることが期待できます。
 
最後に、本レポートでは主要な革新的スタートアップ企業と市場の新しい製品を特定し、その概要を紹介しているほか、ADASおよび自律モビリティ市場の詳細なレビューを掲載しています。具体的には、乗用車、ロボタクシー、トラックを1~5の自律性レベルで区分けし、台数ベースでの市場予測(2020~2040年)を掲載しています。次には、レーダーの販売ユニット数を予測しています。最後に、レーダーモジュールの2つのコストシナリオ(SRR/MRRとLRR)と、それに伴う2つの市場価値予測を作成しています。さらに詳しくは 「車載用レーダー 2020-2040年:デバイス、素材、プロセス、AI、市場および有力企業」をご覧ください。
 
[主要トレンド]
自動車用レーダーにおける半導体の選択肢は進化しています。第一世代製品ではGaAs(ガリウム砒素)が用いられました。最初は、ボード上に直接取り付けられ、ワイヤボンディングで接続されたベアダイとして使用されていました。次の世代はSiGe(シリコンゲルマニウム)ベースのものでした。これにより、機能のチップ上への統合が進みました。キャリア移動度が高く、大きなリソグラフィノード(130nmなど)でも高周波レーダーを使用できるようになりました。先進のパッケージも開発され、技術はCoBからFOWLP(ファンアウトウエハーレベルパッケージング)などへと進化しました。
 
多くの企業が現在、シリコンCMOS(およびSOI)技術を開発しています。その多くが、40nmテクノロジーノードを利用していますが、中には28nm以下まで引き下げている企業もあります。短くなったチャネルが、低いキャリア移動度でも高い周波数をサポートします。小さいノードは、CMOS技術と共に、より多くの機能のチップ内への統合を可能にします。現在、最新世代は、トランシーバーとチャープ発生部だけでなく、チップ自体の中にマイクロコントローラーとデジタル信号処理(DSP)ユニットも統合しています。これはシングルチップレーダーソリューションへの方向性を示しています。シリコン技術へ切り替えることで、特に生産量が増えるにつれて、コスト削減がしやすくなります。
 
 
Showing the evolution of semiconductor technology in automotive radars. The transition towards silicon-based technologies together with the advent of smaller lithographic nodes will mean that more capability can be on chip integrated, paving the way towards single-chip solutions able to support MIMO antennas.
 
パッケージングとボードの技術も進化しました。第一世代のデバイスは、ボードに直接取り付けられ(CoB)、ワイヤボンディングで接続された複数のダイで構成されていました。これらのレーダーモジュールには、2枚の独立したボード(RF用とデジタル機能用)も搭載されていました。パッケージングは進化しており、現在では様々な形式のウエハーレベルパッキングが用いられています。ボードも進化しており、セラミック充填PTFEなどの特殊な低挿入損失材料で構成される上部RF層を組み入れています。小型のアンテナアレイで十分な場合、アンテナインパッケージ(AiP)設計は既に実現可能であり、短距離で使う自動車用途に適しているものもあります。
 
低挿入損失材料の選択は非常に重要で興味深いものとなっています。これらの材料は、損失正接が低くなければなりません。重要なのは、温度と周波数が変動しても、比誘電率と損失正接が安定している必要があるということです。さらには、吸湿性を低くする必要があり、材料は簡単またはよく知られた変更を加えて加工可能なもの(銅スティックの作り方など)である必要があります。この調査では、セラミック充填PTFE、LCP、PI/フルオロポリマー、LTCCやAlNのようなセラミック、ガラスなどの市場に出ている幅広い材料の包括的なベンチマークを提供しています。さらに詳しくは、「車載用レーダー 2020-2040年:デバイス、素材、プロセス、AI、市場および有力企業」をご覧ください。
 
Benchmarking the loss tangent of various laminate and build-up materials. To learn more including about benchmarking of stability of loss tangent and the radar market size please visit www.idtechex.com/ja/research-report/automotive-radar-2020-2040-devices-materials-processing-ai-markets-and-players/696}
 
[4Dイメージングレーダーに向けて]
レーダー技術の性能は急速に発展していきます。まず最初に、アンテナアレイが大型化します。一部のスタートアップ企業は、6500の仮想チャネルをサポート可能なレーダーチップを設計・実証しています。このようなレーダーの分解能は、方位角1度、仰角2度に達する可能性があります。このトレンドにより、フレームごとに豊富な4Dデータ点を取得して、速度、範囲、方位角、仰角に関する正確な情報を得ることができるようになります。したがって、このようなレーダーは、現在ライダーが占めている領域に侵入することになりますが、角度分解能と対象物分類についてはおそらくライダーが優位を保つでしょう。データレートが高くなれば、レーダーモジュールからデータを送信する前にどれだけの前処理が必要になるのかという興味深い疑問が生じます。2番目の融合アーキテクチャによっては、車両内に超高速(Gbps)リンクが必要になる可能性があります。
 
さらには、このような配置により点群の高密度化が可能となります。データの点群が散在していると高度な信号処理が妨げられ、データ融合技術が複雑になるため、この点が重要となります。このような制限があるために、レーダーの用途は対象物の存在や速度の検出に限定されてきました。レーダーはまた、静止している対象物とゆっくり動いている対象物を区別するのが難しい場合があります。
 
高密度かつ高解像度の点群により、レーダーデータに基づいた対象物の検出、分類、追跡の開発が可能になります。これを達成するために、ディープラーニング技術が開発されていますが、大きな課題は、広範な分類済みのトレーニングレーダーデータがないことです。手作業での分類プロセスには専門家による入力が必要であるため、費用と時間がかかります。そこで現在、企業はカメラ、ライダー、その他データと同期してレーダーデータをキャプチャするための企業グループを立ち上げており、カメラ、ライダー、レーダー間のデータを後の段階で融合したものを利用する半自動分類技術を開発しています。このような取り組みと技術により、トレーニングデータセットの開発が加速されます。現在のところ、このような技術は他の手段ほど正確なものではありませんが、急速に進化していくために目が離せない領域となっています。
 
全体的に見れば、これは最も熱いトレンドの1つです。今後、レーダー技術がより小さなノードに移行するにつれて、機能統合が進みパッケージ化された単一のソリューションが登場します。アンテナアレイのサイズが大幅に拡大することで、方位角と仰角の分解能が向上し、点群の密度が高くなります。ディープラーニングベースのアルゴリズムも同時に進化するので、レーダーは対象物の検出、分類、追跡を3Dで行えるようになります。そのような場合、レーダーは、天候や光のレベルでの優位性を保ちながら、一部のライダー技術との境界線を曖昧にし始めていきます。
 
前述のように、レーダーにとって刺激的な時代となります。穏やかな価格下落シナリオでは、2030年までに自動車用レーダーが120億ドル規模の市場になると予測しています。その時間軸においては、主にADASが市場を牽引します。より長期的(2030~2040年)には、自律モビリティ(レベル3、4、5)が市場の牽引役になります。レーダー搭載量の増加は、自律モビリティの台頭から生じると予測されるピークカーの到来に対抗します。
 
さらに詳しくは、「車載用レーダー 2020-2040年:デバイス、素材、プロセス、AI、市場および有力企業」をご覧ください。本調査レポートは包括的な市場および技術開発動向を提供しています。包括的な技術ロードマップを作成し、材料、半導体技術、パッケージング技術、アンテナアレイ、信号処理のレベルで技術の検証を行っています。レーダー技術がどう進化し、対象物の検出、分類、追跡を可能にする高密度の4D点群を提供できる4Dイメージングレーダーへと変わるのかを実証しています。本レポートでは、最新製品のイノベーションを調査しています。世界中の有望なスタートアップ企業を特定し、レビューを行っています。また、2019年から2040年までの期間を対象とする短期・長期の予測モデルを作成しています。市場(台数ベースと金額ベース)を、自律性のレベル別、乗用車、シェアードカー、トラック別にセグメント分けしています。最初の10年ではADAS(レベル1および2)が、次の10年では自動運転車が主要なマーケットドライバーとなります。
 
These radar charts compare the status of today's radar with that which is emerging. To learn more about the technology trends that underpin this transformation please visit "Radars 2020-2030: Technologies, Future Trends, Forecasts".
 
 
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