コストバランスを取りつつ、バッテリーエネルギー貯蔵の火災リスクを低減
2025年11月26日
Conrad Nichols
リチウムイオンBESSのコストバランスを取りながら、鍵となる材料と熱管理技術によりバッテリーエネルギー貯蔵の火災リスクを低減
リチウムイオン電池エネルギー貯蔵システム(BESS)の安全性に対する注目が高まる中、受動的材料と能動的技術の需要は、今後さらなる増加が見込まれています。IDTechExの市場調査レポート「BESSの熱管理、防火、防爆 2026-2036年:材料、技術、有力企業」では、世界のBESS熱管理・防火市場は2036年までに254億ドル規模に達すると予測しており、その多くは能動的な熱管理技術の導入に起因すると見込まれています。しかし、すでにEV市場に供給を行っている材料開発企業の多くには、BESS市場にも供給する機会が存在します。システムの安全性とシステム全体の適切なコストバランスが確保できるよう、BESS開発企業各社は異なる戦略を採用し始めています。
受動的防火と熱管理材料
受動的材料は、BESSでの熱暴走拡大を防ぐ上で重要な役割を担っています。マイカとセラミックは、コスト、耐久性、難燃性のバランスが優れていることから、BESS開発企業にとって引き続き主な選択肢になるでしょう。エアロゲルや相変化材料など他の先端材料についても、今後10年で一定の採用が見込まれています。エアロゲルは断熱性が非常に高く、熱拡散を防ぐ上で有効ですが、コストの高さが普及の妨げとなっているため、製造能力が拡大すれば見通しが改善される可能性があります。
相変化材料(PCM)は、セルの周囲に用いることで熱をモジュールから逃がし、その下の冷却板に伝えることを促進します。これを間接液冷と組み合わせることで、熱暴走リスク低減に役立ちます。一部の主要BESS開発企業は、既にいくつかのBESS設計にPCMを採用しようとしている可能性があります。熱管理目的での材料追加は、最終的にBESSの総コストとのバランスを考慮することが必要です。

BESSにおける熱管理・防火材料の利用。出典:IDTechEx
アクティブ冷却技術と主流となるBESSセクター
間接液冷戦略は、系統用BESS市場での主流冷却技術として浮上してきており、テスラ、CATL、BYD、フルエンス、サングロウなどの有力企業はいずれもこの技術を採用しています。間接液冷は効率に優れているため、セルを希望の動作温度から数度以内の温度に維持することが可能です。そのため、開発者はセルの寿命を最大化でき、リチウムイオンBESS全体の寿命が15年以上に達するケースも出てきています。
コストが最優先事項である用途や、バッテリー充放電サイクルが比較的少ない用途、チラー、配管、ポンプといった液冷部品を収める空間を確保できない場合など、一部用途では強制空冷が依然として現実的な選択肢となっています。空間を確保できない例は、特に住宅用BESS技術に当てはまり、必然的に安全性向上を受動的材料に頼ることになります。C&I(商業と産業)用BESS市場では、間接液冷技術と強制空冷技術が併用される可能性が高く、設備投資と安全性のどちらを優先するかは、顧客の判断が敏感に分かれそうです。
バッテリー貯蔵市場には液浸冷却も登場し始めており、シン・モビリティやエティカAGなどの企業が技術を開発しています。間接液冷ソリューションよりも高コストであるこれらの技術は、1kWh当たり100ドルを超える可能性があります。これは、誘電性液体のコストが高いことや、流路とシーリングの製造が複雑であることに加え、バッテリー筐体の漏れを完全に防止する必要があるためです。液浸冷却BESS技術の導入は、極端な気候条件下など、周囲温度が上昇すると熱暴走が発生するリスクが高まるようなニッチな用途で見られることになりそうです。
「BESSの熱管理、防火、防爆 2026-2036年:材料、技術、有力企業」では、受動的・能動的な熱管理と防火・防爆の材料と技術を分析しており、コスト、ベンチマーク評価、用途、リチウムイオンBESS市場での主要サプライヤーの情報もご覧いただけます。
展望・BESS開発企業の戦略
コンテナ型技術に関して、BESS開発企業が同一の安全戦略を採用しているわけではありません。コストを抑えるために受動的材料を意図的に採用せず、代わりに能動的な熱管理戦略に頼っているところもあれば、消火システムを意図的に省き、最悪の事態になった場合は消防署による人的介入を当てにしているところもあります。明らかなのは、事業規模を拡大する上でコストが最も重要な要素とされているBESS市場では、市場の停滞や顧客からの信頼を失う恐れがあることから、安全性を犠牲にはできないという点です。
結局のところ、BESSの安全性向上においてもBESS全体のコスト構造改善においても、今後10年はアクティブ冷却技術が大きな役割を果たすことになりそうです。チラーや冷却水のコストに対する圧力も高まる可能性がありますが、IDTechExのレポートが示すように、この市場には材料サプライヤーにも重要な機会が存在しており、BESS向け防火材料全体の需要は2036年までに70キロトンを超える規模になる見込みです。
BESSの主要な熱管理、防火、防爆ソリューションの技術や導入動向、主要サプライヤーおよび開発企業のプロファイル、BESSの安全対策用の受動材料と能動技術に関する詳細な10年市場予測については、IDTechExのレポート「BESSの熱管理、防火、防爆 2026-2036年:材料、技術、有力企業」でご確認ください。該当ページからサンプルページがダウンロードできます。IDTechExの最新調査レポートは、こちら でご覧いただけます。
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